LORANの日記
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2004年08月10日(火) ブラック・アフリカ

「特に西アフリカや中央アフリカの人間たちは、イギリス人や日本人には思いもつかないことをやる。そうやって生きている。どんなに厳しい環境の中でも生き抜いてゆく強さと柔軟さがあるんだ。アフリカの人たちは、いつも死ぬことを意識している。明日、死ぬかも知れないと思っている。だからこそ、今日一日を一生懸命生きようとするんだ。こういう感覚って、ぼくたちはいつも忘れているでしょ?明日も同じ日が来ると信じているでしょ?でも、彼らはそうは思っていない。だから、日々輝こうとするんだ。僕はそこにハマったんだよ。」

通称:アンディ(33歳)はイギリスの冒険旅行会社「ゲルバ」のトラックドライバーとして、アフリカの陸路を幾度となく走り、旅の中で日本人女性と恋に落ち、荒くれ仕事から足を洗った男だった。私の今回のツアーのドライバー兼ガイドとして、スペインのマドリッドから南下し、南アフリカ連邦のケープタウンまでの100日、20,000kmのアフリカ大陸縦断の旅の終わりに言った言葉である。

西アフリカのマリ共和国の内陸部、今も古来からのライフスタイルを守っていることで知られる農耕民、ドゴンの村では、今でもマラリアやその他の風土病で子供たちが死んでゆく。村長などは、三人の妻に産ませた三十八人の子供の内の三十人を死なせている。

国連エイズ計画とWHOの調査では、約4000万人の感染者のうち、その70%がサハラ砂漠以南に集中している。エイズ孤児の数も多い。これを貧困と無知のせいにしていいのだろうか?彼らは昔ながらのゲームのような、少し親密な挨拶のようなセックスをする。それは、彼らが自分たちで育んできた性モラルと死生観のせいかも知れない。

人間は誰も、何かの理由によって必ず死ぬ。しかもブラック・アフリカではマラリアや他の風土病のせいで人はバタバタ死に、平均寿命は50歳前後である。(国によっては25歳位のところもある。)ならば、最大の関心事は、短い一生をどう楽しく、輝いて生きるかということに誰だってなるだろう。生きている喜びが実感でき、挨拶のように日常生活の一部になっているセックスを我慢してまで長生きしてどうすると彼らに訊かれたら、私たちに答える言葉はあるだろうか?

死を意識するから今日輝く、という生き方がある。頭も体も動かない老人になるまでだらだらと生きるつもりはない、という生の選択もある。いずれにせよ、人生の価値は長短で決まるわけではない。女の気を惹こうと目一杯のお洒落をして草原を行くマサイのモラン(戦士)たちは、「余計なお節介をするな」と言いたいのかも知れない。

----今日を必死に生きているか?
----明日死んでも後悔しないか?

アフリカの大地は、最も根源的な問いを突きつけてくる。


「52歳、駆け抜けたアフリカ」     戸井十月 著     新潮社


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