non-fiction.
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halu



2009年02月08日(日)
誰の幸福を祈るか。

「明日は家でゆっくりしたいから」

きっかけは、ほんのひとことだった。
此処は恋人にとっての、帰る家ではない。
私は家族ではない。
忙しいのに時間を作って会いに来てくれる。
それは「愛情」という行為にほかならないはずなのに、
私はそれに対して罪悪感を得る。
本当は家でゆっくりしていたほうがよかったんじゃないのか、と。
どうしても気を遣ってしまう私のそばにいるよりも。
気を遣わない家族の元に居たほうがいいんじゃないだろうか。

たくさん顔を殴った。
止められた。けど私は止めなかった。
涙は出なかった。
何も考えられなくて、なんにもことばが出なかった。

恋人は苦しんでいた。
呻いてもがいて、
最後には、ただ言葉にならない声を発しながら涙を流した。
私の声も届かないで。
ただ私をじっと見た。
怖かった。逸らしたかったけれど、逸らしてはいけないと思った。
怖かったけれど視線に視線を返した。

光のない涙に濡れた目は、
ことばはなく、わたしを責めているようだった。

ああ、
壊してしまう、
思った。

恋人は私の辛いところを背負いたいと言った。
そばで支えたいと言った。
けれど、彼の心はとても繊細で、決して丈夫でない。
私の問いかけには、いつも「大丈夫」と返す。
私が差し出す手を、取ろうとはしない。

壊してしまうのなら。
離れてしまったほうが良い、と思った。
壊れて欲しくない。
笑っていて欲しい。
倖せであって欲しい。

極論しか考えられないのは、もはやどうにもならないのか。
私のなかで「結論」が主張する。
でもそんなのは嫌だと、
「結論」以外の私は言う。
今日、外で少しだけ恋人の顔を見た。
何を話したわけではないけれど、なんだか安心した。
やっぱりそばに居たいんだと思った。
けれど、
どうしても、
私は傷つけたり苦しめたりすることしか出来ない。
はじめて、左の頬に赤あざが出来た。
輪郭がいびつで、それを髪の毛で隠す。

私自身の幸福を思うなら、
そばに居続ければいい。それに迷いはない。
けれど、彼の幸福を思うなら。
私は消えたほうがいいのかもしれない。



からっぽで、
痛くて、
淋しくて、
そわそわして、
なんだか、
哀しい。

これで最後なのに。
最後なのに、
やっぱり私は、
ちゃんと人を愛せない。
貰った愛情を対等に愛情で返せない。


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