* 世界一ついてない日常
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2005年04月03日(日) コーヒーと私

コーヒーが飲めない。

嫌いなわけではない。むしろ好きである。
コーヒーメーカーから立ち上る香ばしい匂い。
それだけで心はときめく。

だが如何せん、にがい。にがすぎる。
こんなものストレートで飲む人はすごいと思う。

じゃぶじゃぶ牛乳入れてがばがば砂糖入れて、ようやく飲む。

うまい。
この世にこんなうまいものがあるのかと思う。
ココアよりは大人の味のような気がする。

もともと調整がなされている、いわゆるコーヒー牛乳も飲む。

ただ飲むのではない。

コーヒー牛乳:牛乳 を 2:1 の割合で割る。

これはぜひやってほしいのだが、
クリーミーさとまろやかさがプラスされ、コクがでる。

うまい。
世の中で一番うまい飲み物だと思う。
ただ飲むよりは手作り感がある気がする。

あと、ボトルコーヒーというやつがある。
1ℓペットボトルのやつだ。

無糖は買わない。にがいからだ。
カロリーオフも買わない。
カロリーを気にするなら最初からウーロン茶を買っている。

ふつうのがいい。
にんげん、ふつうがいちばんだと偉い人も言っている。
増糖があればもっといいと思う。

大きめのグラスにみっしりと氷を入れ、
冷たく冷やしたそれを3分の1まで注ぎ、
さらに牛乳を加える。子供さん向けには砂糖を足してもよい。

完成したら、3回くらい混ぜ、30秒以内に飲む。
時間を置くと氷がとけて水っぽくなるからだ。
まったく味わう暇がない。

それならなぜ大きめグラスを薦めるのか、疑問に思う向きもあるだろう。
が、このドリンク最重要ポイントは「喉ごし」なのだ。
ぐびぐびと飲んでいただきたいのだ。
スキッと爽快クーリッシュなのだ。
少なくとも博多ラーメンよりは爽快クーリッシュなのだ。

このように、コーヒーはうまいのである。
人生になくてはならぬものである。

しかしふと気づく。
コーヒーを飲む際には私はその倍、牛乳と砂糖を飲んでいる。

これでコーヒー好きといえるのかどうか。
本当は牛乳と砂糖が好きなのに、
コーヒーが好きだと誤って認識されているのではないか。

討議は深夜まで続いた。

肯定の論拠は私がミルクティーも好きということであり、
マンデリンとマンドリルの違いどころか、
ブルマンを何かすけべえなブルセラ的用語と思っていた点に集約される。
さらに動機の面からも追求され、
「本当は牛乳に砂糖を入れて飲みたいが、
 それをすればただの超甘党である」という心理的葛藤から、
「コーヒーだから砂糖を入れてもよい」として
均衡を図ったのではないか、との意見も出された。

だが、結論が出なかった。
時刻は午前2時。社員の顔にも疲労が見えていた。
社長は言った。
もう諦めよう。君たちは十分がんばった。

そのとき、
「待ってください」
一人が立ち上がった。

専務の山田だった。

「この場合のコーヒーと牛乳は、
 塩昆布とごはんの関係に相当するのではないでしょうか」

光明が、見えた。

後に山田さん(当時43)はこう語っている。
「あのときはみんな必死でした。
 なんとか黒部ダムを完成させようとしてね。」

山田と、その部下は、皆に語りかけた。

「塩昆布は、好きです。でも食べられません」
「ごはんは食べられます」
「ごはんに牛乳をかけたら…」
「紅茶はいかの塩辛です。ごはんがあるからうまいんです」
「砂糖は、塩なんです。ごはんに塩をかけても食べる気がしない」
「だからコーヒーが、必要なのです」

静まり返るトンネル。
しかし、ひとつふたつと拍手が起こり、最後はみな、立ち上がっていた。

コーヒーは、おかずだった。
ダムは、完成した。

♪ヘッドラーイト・テールラーイト♪旅はーまだ 終わらーないー♪

            〈完〉


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