私はすぐにしもやけになるたちだ。 生まれつき体質が薄情なのだ。
というのも、寒いところに行くと、すぐに指が白くなる。 しびれたようになり、感覚が鈍い。仮死状態だ。 それも五本いっしょにではなく、 小指とか薬指とか、どうでもいい指から白くなる。
つまりこいつらは血液の配給を断たれたのだ。 私の心臓は、こうやって弱いものから切り捨てていく。
リストラ。
しかも親指や人差し指はたいがい無事なのだ。 裏でつるんでいやがるのか。 あの図体だ。きっと親指が親玉で、隣の人差し指が参謀か。 名前もなんかそんな感じだし。
きっと裏世界では結構知られた顔で…いやこの場合は指だけど、 もっと悪いことをしているんだ。 まったく、なんてやつらだ。 私の体だけに、どこにどう腹を立てていいのかわからない。
しかし…組織のおそらく中堅にあたるであろう中指は、 なかなかいいやつなのだ。
図体から言えば親指の次にいい体をしているし、背も高い。 なのに、こいつが結構白くなる。 薬指をかばって、小指と中指が白いという状態になったりもする。
ひょっとしたら中指と薬指は兄妹かもしれない。
だって似ているのだ。この二人…じゃない、二本は。 だから中指は、妹想いないいやつなのだ。 おそらく人差し指あたりに弱みを握られたか親の治療費のため、 二本は仕方なくこの組織に身を置いているのだ。
小指はなんなんだろう。
サイズ的には末っ子だが、こいつはそれほど可愛らしくはない。 心臓にも真っ先にリストラされるようなやつだし、 人情家の中指にも見捨てられるあたり、ろくでもないやつだろう。
おそらく…親指の隠し子。
だからみんな強くは出られなくて、組織に置いてやっているけど、 いざとなったら切り捨てられるということか。
なんとなく謎が解けてきたぞ。
しかし、彼らとそっくりな左手の存在については、 明確な結論が出ていないことを伝えておこう。
完
|