衣類の散らばる荒らされた部屋。 何かを物色したかのような箪笥に、もはや金は残っていない。 ひび割れた壁。 冷蔵庫は賞味期限の切れたものばかり。 机には飲みかけの缶コーヒー。
そして部屋の奥には…倒れ伏し動かない男。
犯罪の匂いがする。 眠りの小五郎の名にかけて、家政婦ポワロはニャアと鳴いた。
犯人は誰だ。
動機は。
殺害手段は。
謎の深まる密室トリック。
警部は表で待っている隊士に合図しようと十手を振りかざしたが、 その時 男が呻いた。 まだ息がある。 駆け寄り、助け起こす。
「しっかりしろ! 何があったんだ!」
男は顔を顰め、苦しげに呟いた。
「………………………ね……………………………………………むい」
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