山ちゃんの仕方がねえさ闘病記
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2014年01月13日(月) コンラッドとバルザック

《夏目漱石著『コンラッドの描きたる自然について』を読む》
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 コンラッドはイギリスの作家だが、今回村上春樹の「かえるくん、東京を救う」を読まなければ出会うことがなかったかもしれない。もともとポーランド人の船乗りだが、イギリスの帰化して作家になったという。イギリスでも有名で、学校でも読まれているというから国民的作家なのだろう。知らなかったのだから認識不足である。

 この書はほんの短い文章だ。ある新聞記者が漱石のコンラッド認識を批判したことへの意見のようである。批判の対象となっている書を読んでいないのでよくわからないが、コンラッドに出会ったことの方が有り難い出来事であった。

 村上春樹の話に出てきたコンラッドは「Load Jim」という作品で、映画化もされている。DVD もあることから映画もぜひ見てみたいと思っている。



《宮本百合子著『バルザック』を読む?》
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「宮本百合子全集第18巻」新日本出版社

辻原登氏の「東京大学で世界文学を学ぶ」に紹介された『ゴリオ爺さん』の冒頭部分とは如何なるものか触れてみたくて、アマゾンで「バルザック」を検索していて引っかかった。バルザックの作品の中から目に付いたところ或いは参考になるところを箇条書き的に抜き書きしたものだろうか。『宮本百合子全集第18巻』新日本出版社(1981(昭和56年)年5月30日初版)に収録されている(Kindle版: 青空文庫から)。これだけでは文章にも物語にもなっておらず、何のことかさっぱり判らない。

 しかも彼らの思想については全く知識がないので、この箇条書きを見ても何のためにメモしたのかわからないが、プロレタリア作家としての自分の思想とどこかに共通点を見つけたのかもしれない。

 まず彼女の思想とは別にして文学としての良い作品がありそうだ。彼女が日本共産党の活動に傾倒する以前に、坪内逍遥の推薦で発表したという「貧しき人々の群」から読んでみることとしたい。その後に活動後の作品をどうとらえるか考えてみようと思う。しかしここでは肝心のバルザックにはたどり着けなかったのが残念だった。

 後日もう一度検索してみると、『バルザックに対する評価』(宮本百合子全集第10巻(河新日本出版社))『バルザックについてのノート』(宮本百合子全集第12巻(新日本出版社))がヒットした。これらの方が創作ノートのように書かれているようなので、次回はこれらにも目を通してみるべきだろうか。もともと読みたかったのは宮本百合子ではなくバルザックなのだから。



《宮本百合子著『バルザックについてのノート』を読む》 Kindle(無料)版にて
 「宮本百合子全集第12巻」新日本出版社

 なにしろバルザックの作品を読んでいないので、どの作品のどの部分を言っているのか無知だが、宮本氏はバルザックを賛美するあまり、自国の作家を見事にこき下ろしているのではないかという印象を持った。例えば
「然し、真に驚くべきことは、バルザックがこの単純な性格の人々が遭遇した社会的関係の紛糾を描き出している巨大な力量である。彼が大作家たる所以はここにある。」
とバルザックは持ち上げておいて、他方では
「日本の近代文学において、散文はどんな伝統に立っているのだろうか。そういう見地から見ると、漱石の散文は秋声の『あらくれ』『黴』などからみるとずっと、弱い。」
とか、あるいは
「芥川の散文は教養のよせ木であり脆さが痛々しいばかりである。」
などと全く辛辣である。では翻って宮本氏の作品はいかがか。益々彼女の作品を読んでみなければならないと思った。


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