長い事、会社の為に頑張ってきたよ。 随分と家の事は、かあちゃんにまかせっきりだったな。 わかっていたよ、かあちゃんが大変だったのも。 でも、俺だって仕事が忙しかったんだ。 頑張って頑張って、家族を養ってきた。 一人娘もようやく結婚し、 会社を辞めたら、 俺はこれから、かあちゃんと静かに生活していこう。 そう思ってきたからこそ、今までがむしゃらに働けたってもんだ。 俺を見たいって? じゃあ・・・ ヒゲを生やした俺。 ダンディだろ? とーちゃんレゴだよ。 そしてこれが、かあちゃん。 かあちゃんレゴだ。 俺はこのポニーテールに惚れたんだ。 ナイスだよ、かあちゃん。 胸はぺちゃんこだが、乳がんになる心配もない。 ある朝目覚めると、いつもと違う俺がいた。 頭の様子が変なんだ。 ない! 「おーい かあちゃん アレを知らないか?!」 「アレってなんですか?今洗濯してるんだから もう」 「アレだよアレ」 カツラだよ! 知りませんよぉ。 アレがないと会社に行けないじゃないか。 じゃあ、これでもかぶっていけば? わ〜い これで雨が降っても安心!、、、っておい! ダメだよこんなの・・・。 ならこれは? 職場に咲く一輪の花。 俺に群がる、チョウや蜂。 チクイテテテ。 蜂に刺されるからダメダメ。 んじゃ、こっちは? あぁ、、、今日はやや北西の風が強し。 って、かあちゃん!! 冗談はもういいよ。 困ったわね〜。 もう、最後はこれしかないわね。 ほれ ポコ おぉ! カツラだ。 ・・・。 え゛?? これは、かあちゃんのポニーテール。 お、おまえもカツラだったのか? あら?知りませんでした? いつからだ? もう10年くらい前からですよ。 とーさんにだって話しましたよ。 俺は覚えてないよ。 でしょうね、あなた仕事仕事って忙しそうでしたから・・・。 あげますよ、それ。 だって、これはかあちゃんのじゃないか。 私は別のカツラも持っているんです。 もう、私は家を出て行きます。 別のカツラをかぶって、これからは生きていきます。 きっと、街で私を見かけても、あなたにはわかりませんよ。 な、なんで急にそんな事を言い出すんだ! 急にじゃないです、 カツラだってあなたの知らない所で、 ポニーテール以外のモノもちょくちょくかぶっていたんです。 あなたは気が付かなかった。 俺はかあちゃんとこれから2人で静かに暮らしていこうって、 そう思って今まで頑張ってきたのに・・・。 ひどいよ。 ひどいのはどっちですか? あなたは、私の事など何もわかっちゃいない。 バタン かあちゃんは出て行った。 髪と共に去りぬ、、、か。 俺は、かあちゃんの何を見ていたんだろうか。
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