オトギバナシに終わりはつきものなんだ。 それがハッピーエンドだとは限らないのが現実ってもので。
それは、人々の夢も希望も塗りつぶしてしまいそうな闇を掲げた朔の日の夜。 音を立てずに出て行く気配を感じた。
「・・・ドコ行くの?」
闇色をした男。 ボクの好きなオトコ。 いくら音を忍ばせてても、気配だけは消せないから。 その大きな身体も今回だけは仇になったね。
「あ・・・いや〜・・・その、なんだ。」
見付かったかとばかりに振り向く。 そうだよ、見つけたよ。 ボクの目を誤魔化せるとでも思ってるの?
「・・・そのォ〜・・・酒!酒が切れたんでな。買いに行ってくる。」
そう言って、少し肩をすくめた。
あ・・・そういうこと。
ボクはひとり落胆とも安堵ともつかない複雑な気持ちになる。 きっとこれから、会いに行くんだ。 ボクのライバル、ボクの恋敵。 今日は朔の日だから。 暴走寸前のアイツを、命懸けで止めに行くんだ。 嘘まで吐くんだから、間違いない。
そう、それは些細な仕草。 でも、大好きだからこそ、わかる仕草。 いつも見てるから、わかってしまう、何気ない仕草。 嘘を吐く時はいつも少し、肩をすくめる。 そんなことにも、気付かないなんて。 きっと、無意識の仕草なんだろうね。
「・・・いってらっしゃい。」
不本意ながらも嘘に乗ってあげるボク。 だって、泣いて引き止めても、こっちを見てくれないって、知っているから。
「いってくる」
あっという間に闇に染まって見えなくなってしまった背中に、ボクは一言呟いた。
「・・・ウソツキ。」
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