|
|
2010年07月11日(日) ■ |
|
「壊れて止まっている時計でも、1日のうち2回は正確な時を示すことができます」 |
|
『DIME』2010年7月6日号の特集記事「ヒットの法則大研究」より。
(「結果を出し続けるプロデューサー・秋元康による「深く刺さる『濃いコンテンツ』創造術」という記事から。「濃いコンテンツを創るための秋元康の5の法則」の「法則4」。引用部はすべで秋元さんの発言です)
【「何かがヒットすると、みんな後を追いかけようとします。二番煎じを狙っているわけではないのでしょうが、同じような所に正解があるような気がするのです。 しかし、流行はまるで、”もぐら叩き”のゲームのように、全く違う場所から頭を出すのです。それを追いかけるのは困難です。 逆に、ブームとは関係なく同じことを続けていると、それがブームになったりします。壊れて止まっている時計でも1日のうち2回は正確な時を示すことができます。 何かアイデアが浮かんだとき、まわりを見回す必要などないのです。いまの時代のニーズは? なんて考え始めたら、ヒットは作れません。これはヒット間違いなし!という思い込みが一番重要なのです。もう古いかな? なんて不安に思う必要もありません。 昔、僕が『ザ・ベストテン』の構成に関わっていたとき、ルービックキューブが流行りはじめたのでセットに使おうと提案したら、却下されたことがあります。 その後、コピー商品が出回るようになってから、ようやくセットになりました。『遅すぎますよ』とプロデューサーに言ったら、『これくらいがちょうどいいんだ』と言われました。 ここには2つのポイントがあります。(1)プロデューサーの思い込みの激しさと、(2)テレビでは視聴者の最大公約数を狙っていることです。 つまり、”テレビはみんなに広まってからネタにするもの”というプロデューサーの思い込みが、当時の40%近い視聴率を叩き出していたんです」】
〜〜〜〜〜〜〜
作詞家・プロデューサーとして大成功をおさめてきた秋元さん。 僕のなかでは、「自分が売り出していた『商品』である高井麻巳子に手をつけた、とんでもないオッサン」でもあったわけですが、数年前までは、「もう過去の人」というイメージを持っていたのです。
しかしながら、自らプロデュースした「AKB48」の大ブレイクで、秋元さんは、あらためて注目を集めています。 「AKB48」を秋元さんがはじめたときには、「会いに行けるアイドル」としてちょっとした話題にはなったのですが、僕は「そんな二匹目のドジョウを狙っても、うまくいくわけないだろ、そもそも『AKB48』のメンバーのクオリティも、おニャン子クラブと比べたら……」と小馬鹿にしていたんですよね。 ほんと、こんなに売れるとは思わなかった(僕自身は、いまでも前田敦子さんと篠田麻里子さん以外のメンバーは、さっぱりわからないんですが)。
この秋元さんの話を読むと、秋元さんは、「苦し紛れの二番煎じ」ではなくて、ある種の「狙い」を持って、「AKB48」をはじめたのだということがよくわかります。「AKB48」の誕生は2005年。初日のステージはお客さんが7人しか来なかったそうですから、けっこう時間も手間もかかっています。プロデュースする側に自信と忍耐がなければ、途中で諦めていてもおかしくなかったはず。
この秋元さんの話のなかで、「壊れて止まっている時計でも1日のうち2回は正確な時を示すことができます」という言葉は、とても印象に残りました。 たしかに、やみくもに時計の針を動かすだけでは、「正確な時」を示すのは困難です。むしろ、同じ場所にいて、時間のほうがやってくるのを待っていたほうが、「いつかは流行を創れる」可能性は高そうです。「いまの流行」のすぐ後ろを追いかけていては、ずっと、「ちょっと遅い時間」を示し続けることになるでしょう。
もっとも、「自分が待っている時刻」が、ちゃんと「流行という時計」の文字盤の上に存在しているのかどうかというのが難しいところで、「ずっと時計の針が指すことのない時刻」で待ち続けて一生を棒に振ってしまうこともありそうです。 それが本当に存在する時刻なのかどうかを嗅ぎわける能力というのは、誰にでもあるものじゃないですよね、きっと。
|
|