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2007年03月10日(土) ■ |
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消費者金融で「貸す人」「借りる人」それぞれの現実 |
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『サラ金嬢のないしょ話』(小田若菜著・講談社文庫)
【(サラ金の返済が遅れている人々あれこれ)
ご主人も奥様もお客様で、ご夫婦仲良く遅れています。 でもお互いに、 「相手には利用を知らせるな」 とがんばっています。 お互い様なんだから、知らせたほうが楽だとは思うんですけど、お互いに知っちゃったら、さらに延滞ひどくなるかもしれませんね。
やはりご主人も奥様も仲良く遅れ、ついでに息子は自己破産。 「お金ないんで払えません」 そう言う奥様の声のBGMにワイドショーの声が聞こえます。 奥様は無職、つまり、専業主婦です。 「奥様がパートに出られるとかで何とかならないでしょうかね」 「仕事なんてないんです」 「ないことないでしょ。新聞に入っているチラシとか、ハローワークとか」 「チラシは捨てちゃいました。ハローワークがどこにあるかわかりません」 ハローワークのある場所を説明。すると、 「車がないから行けません」 「歩いていけばいいでしょ」 「歩くと疲れますから」 「疲れるとか、そういうこと言ってる場合じゃないでしょう」 電話口からため息が聞こえます。ため息つきたいのはこっちです。 少しの間、そして、奥様、再び口を開きます。 「働くの向いてないんです」 「向いていないって……じゃあ、どうしても働かないで借金返す気でしたら、一時的にでも電気や電話止めちゃったらどうですか? 水道やガスは困るでしょうけど」 「電気が止まったらエアコン動かないじゃないですか。この暑いのに、死ねっておっしゃるんですか?」 いやあの、熱帯でもないのに、エアコン止まったってそうすぐには死なないと思うんですけど……。 「困ります……」 電話口で泣き出す奥様。こっちも困ってるんですけど……。
(中略)
「どうせお前ら悪いことばかりやってるんだろ! 裁判に訴えればこっちのものだ。訴えてやるっ!」 あの、私たち「お支払いが遅れてますよ」とお電話しただけですので、請求電話がかかってきたというだけで訴えてもお支払いがチャラになることはないと思うんですけど?
10日以上遅れたお客様は、サラ金嬢ではなく男性社員の担当になる場合がほとんどです。 それ以上遅れると、男性社員が直接ご自宅まで回収に向かいます。
(大手消費者金融「武富士」について)
ちなみに武富士はいとこのお嫁さんが元武富士社員なので、実はけっこういろんな話を聞かせてもらっています。以前、テレビとかでもやっていましたけど、本当に毎朝会長の写真に向かって「会長おはようございます。今日も一日よろしくお願いいたします」と挨拶をするのだとか、朝礼では「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」などの挨拶練習を欠かさず、『日常の五心』とかいう標語のようなものを暗唱させられるんだとか。朝礼時にはラジオ体操も欠かせないそうですが、ちょっとでも気を抜いて体操すると怒られるので、大げさなぐらいに手足を動かすんだとか。しかも店長になると、毎年元旦には会長の自宅兼研修所に詣でなければならなかったそうです。早く詣でれば詣でるほど忠誠心が高いとされますので、ほとんどの店長が大晦日の夜から会長の自宅前に待機していて、会長宅前で新年を迎えていたそうです。詣でなければ「会長への感謝の気持ち」が足りないということで、降格さえあり得たとか。会長が代わったので、さすがに今はそんなことは無くなったんじゃないかなと思いますけど。】
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ほんと、貸す側も借りる側もどっちもどっち、という世界です。この「借金を返さない人たち」の話を読んでいると、自分から借りておきながらこんな態度をとるような「お客様」から取り立てをしなくてはならない消費者金融のスタッフにもちょっと同情してしまいますよね。まあ、そんな人たちに貸すほうにも責任があるのは事実なんですが、結局のところ、「ご利用を計画的に」できる人というのは、消費者金融から借金などしないわけで、貸す側も「絶対に返してくれそうな人」ばかりを選り好みするわけにもいかないようです。さすがに、「絶対に返してくれそうもない人」には、大手消費者金融は貸さないみたいですけど。 しかし、そう考えてみれば、より「返せそうもない人」ほど、より高金利で危険な闇金などから借金せざるをえなくなるのですから、世の中というのは「うまくできている」というべきなのか…… 実際は、大部分の顧客がなんとか返済しているからこそ消費者金融という商売は成り立っているのでしょうけど。
その一方で、この(以前の)武富士の話も凄いです。中小企業などでは「カリスマ化された経営者」の話は珍しくないのかもしれませんが、ここまでくると、さすがにねえ。元旦のなるべく早い時間に会長宅に詣でるために、大晦日の夜は会長宅前でカウントダウンなんて、「いざ鎌倉」か「新型ゲーム機の発売日」か、という感じです。さすがに、いろいろな問題が噴出してきたみたいですが、長年こんなことが行われてきたなんて信じられません。それも、何十年も前の話じゃないのだから。
TVで親しみやすそうなCMを流してアピールしていても、消費者金融の実状はこんなものです。ただ、本当に消費者金融というのが全く無くなってしまったら、そこでお金を借りていた人たちが「借金」をしなくなるのか、闇金に向かうのか、それとも、犯罪行為に走ってしまうのかと考えると、消費者金融にも「必要悪」という面はあるのかもしれません。 こうして「借りる側」「貸す側」の両方をみてみると、消費者金融というのは、やはり「関わらないに越したことはない」のは間違いないのですが、好きで借金する人なんていないだろうしねえ……
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