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2006年04月03日(月)
日本の住宅にあるクールなもの

「週刊SPA!2006.4/4号」(扶桑社)の鴻上尚史さんのコラム「ドン・キホーテのピアス・562」より。

(鴻上さんが、4月からNHKのBSで始まる『クール・ジャパン』という、日本に来て間もない外国人たちに『かっこいい日本』を紹介してもらうとい番組の司会をすることになり、その第1回の放送のテーマ「日本の住宅にあるクールなもの」から。

【一人はスリッパをあげました。
 じつは、スリッパは、日本人の発明なんだそうです。驚きです。
 明治時代、日本家屋に土足のまま、ずかずかと上がってくる外国人に困って、せめてこれをと、靴の上から履いてもらうために作ったものなんですと。だから、最初は、靴より大きいものでした。
 なので、英語のスリッパは、日本のスリッパではありません。英語のスリッパではありません。英語のスリッパは、室内履きというか、簡単に履けるタイプの靴のことです。
 でね、どうしてスリッパがかっこいいかというと、欧米のみなさんは靴を脱がないでしょう(アジアがどうなっているのか詳しく分からないところが情けないんですが)。ハリウッド映画なんか見ると、ベッドの上でも、ギリギリまで靴を履いてるでしょう。 で、これは誰が見て考えても、不衛生なわけですよ。
 オランダ人の参加者は、「オランダはほこりっぽい土地なので、家では靴を脱いでいる人がたくさんいるんだ。だけど、友達が来たら土足のまま、部屋に入ろうとするだろう。だから、いつも、そこでどうしたらいいんだろうっていう議論になるんだ」と語りました。
 部屋で靴を脱ぐのはとても快適だという、日本人からすれば当然でも、欧米人からすれば、信じられない現実を知って、スリッパの存在を「かっこいい」と言うのです。
 ただし、中には、混乱するからかっこよくないと反対した外国人もいました。タタミの部屋では脱がなければいけないし、トイレに入ると、トイレ用のスリッパに変えないといけない、複雑すぎる、とその人は言いました。
 トイレにトイレ用のスリッパがあったのは、ぶっちゃけて言えば、男性がおしっこをする時に、トイレの床にちょいと余計なものがこぼれると思われたからで、男性がみんな座っておしっこをするようになれば、じつはトイレのスリッパは不要になるのです。】

〜〜〜〜〜〜〜

 実は、僕はつい最近、この「スリッパは日本で発明された」というのを「IQサプリ」の問題で知ったばかりなのですが、「スリッパ」が、ここまで外国人にとって「クール」であるとは、思ってもみませんでした。むしろ日本人である僕にとっては、「スリッパを履くことさえ違和感がある」のですけど。
 しかしながら、僕がこの鴻上さんの文章を読んで驚いたのは、「外国人にも、土足で部屋に入るのは不衛生」という意識があるのだ、ということでした。いや、外国人は「部屋に入るときに靴を脱ぐ」という日本の習慣に対して、「よそよそしい」とか「神経質すぎる」というふうに受け止めている人ばかりなのではないか、と僕は考えていたものですから。もちろん、「外国人」というのをすべて「日本人」に対立する存在としてひとくくりにするわけにはいかないのですが、少なくとも、オランダには、家では靴を脱いだほうがいいと考えている人たちが少なからずいる、ということなんですよね。それでも、彼らはなかなか「靴を脱がない習慣」から逃れられないわけです。
 考えてみれば、どこの国の人であっても、「生き物」としては、足に「靴を履いている状態」より「脱いでいる状態」のほうがラクだし、気持ちいいのはまちがいないはずです。まあ、「気持ちいいこと」ばかりを追求するのは、必ずしも「文明的」ではないかもしれませんけどね。
 それにしても、僕たちが日常的に使っているスリッパ一足にも、日本の先人たちの知恵が詰まっているのです。

 ちなみに、外国人が「スリッパよりも、もっとかっこいい」と思っていたものは「お尻を洗ってくれるトイレ」だそうです。いやまあ確かに、僕も最初に見たときには、「よくやるなあ…」と感動しましたけど。