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2006年01月27日(金)
ギャング・スターの憂鬱

日刊スポーツの記事より。

【京都大学アメリカンフットボール部の元部員3人が女子大生2人に集団で乱暴したとして、集団強姦(ごうかん)容疑で26日、京都府警川端署に逮捕された。3人の元部員は昨年12月、鍋パーティーに女子大生を誘い出し、乱暴することを計画。京都市左京区内のマンションで2人を泥酔させ、乱暴した疑い。トップクラスの頭脳集団・京大にあって、同部は6度の大学日本一に輝く。文武両道のシンボルでもあっただけに、衝撃が広がった。
 逮捕されたのは、いずれも4年生で元アメフト部員の3容疑者。調べによると3人は昨年、鍋パーティーを開催して女子学生を酒に酔わせ、乱暴することを計画。白井容疑者が、知人の女子大生A子さん(19)に声を掛け「3対3で飲もう。ぜひ友達も連れてきてくれ」と誘った。
 A子さんは友人の女子大生B子さん(20)C子さん(20)を呼び、12月22日午後9時ごろから京都市左京区内の木戸容疑者のマンションで開かれたパーティーに参加。ここで3容疑者は焼酎の瓶をルーレットのように回し、飲む順番を決めるゲームを行い、A子さんらを泥酔させた。C子さんが深夜0時ごろ帰宅し、女子大生が2人となった23日未明、乱暴したとみられる。
 A子さんは昨年12月25日に、B子さんは今月11日にそれぞれ被害届を提出。26日、3人に任意出頭を求め、川端署内で逮捕した。
 3容疑者は鍋パーティーを開いたことは認めているものの、いずれも容疑を否認。調べに対し「性行為はしたが、合意の上だった」「性行為そのものをしていない」などと供述しているという。3人はこれまでも2、3回、鍋パーティーを開いており、ほかの男子学生も加わっていた。京都府警はほかにも女性を泥酔させ、乱暴していた可能性があるとみてほかの学生の関与を含め追及している。
 3人とも部内ではレギュラー格だったが、昨年11月末に引退していた。3人とも留年が決まっている。

 同部は国公立大初のアメフト部として1947年に創部され、6度の大学日本一に輝いた強豪。東大と並び、日本の教育界の最高峰である京大の〝文武両道〟集団として、スポーツ界のみならず多方面から尊敬と称賛を集めてきた。京大に通う男子学生の1人は「地方に行って『京大生です』と名乗ると、頻繁にギャングスターズの話を聞かれます。いつも自慢に思っていました。今は言葉もありません」と絶句。別の男子学生も「京大生もモラルが低下しているのを日々感じるが、それにしてもひどすぎる」と言葉を失った。】

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 京都大学アメフト部、通称「ギャングスターズ」といえば、僕が大学受験をした時代には、この記事中にあるように、まさに「文武両道」の象徴とも言える存在でした。野球の東京六大学リーグでの東京大学の成績などを考えてみても、学生スポーツの世界では「スポーツ推薦枠」を持たない国公立大学の不利は明らかで、京都大学という「日本有数の難関国立大学」にありながら、これだけの実績を積み上げてきたのは、本当に凄いことだと思います。京都大学なんて、勉強だけやっていても入るのは至難の技なのに、そこにアメフトの素質がある選手を集めなければならないのですから。
 これも、アメフトが日本ではまだまだマイナースポーツであるからこそなのかもしれませんが、それでも、他の私立大学に比べたら、「ギャングスターズ」が、ものすごく不利な条件にあることはまちがいないと思います。ちゃんと勉強もして講義に出ないと、単位も取れないでしょうから。他の私立大学であれば、スポーツでの活躍を認められている学生は、単位が取りやすかったりするみたいですしね。
 昔、長嶋茂雄さんが、立教大学に入るときに、入試問題が全然わからなくて「野球部・長嶋」とだけ書いたにもかかわらず合格したなんていう話があるくらいです。
 僕は以前、この「ギャングスターズ」に関する、こんな「伝説」を聞いたことがあります。スポーツ推薦枠のない京大では、有望な選手を「ギャングスターズ」に入れるために、選手たちが「京大に入れる可能性があるくらい学校の成績が良い有望選手」のところに家庭教師に行き、その選手を京大に合格させて「ギャングスターズ」に入部させるのだそうです。
 そして、4年間の現役生活を送ったあと、選手たちはわざと留年して、「ギャングスターズ」への1年間の「お礼奉公」のために、大学に残るのだとか。
 考えてみれば、「文武両道の理想の大学生」なんてイメージされがちな「ギャングスターズ」というチームですが、その実像というのは、なんだかすごくイビツではありますよね。「スポーツ推薦枠」がない名門大学で、学生スポーツの頂点を目指すためには、ここまで不自然な「努力」をしなければならないのか、とすら思えます。
 「ギャングスターズ」は、最近関西学生リーグでの成績も振るわず、一時は200人以上いた部員も60人くらいまで減ってしまっているそうです。それでも、60人いれば立派なものかもしれませんが、「文武両道」という素晴らしいイメージを維持するためのこうした「伝統」に、学生たちもついていけなくなってしまっているのかな、という気もします。いくら部に愛着があったとしても、今から社会に出ようというときの「1年」って、けっして短くは感じないと思うし。
 そこまでして、京大にアメフトの強豪チームをつくる意義って…

 もちろん、そういう「歪み」が、この「部のために留年しなければならなかった3人」に、こんな極悪非道な犯罪に奔らせたと短絡的に結びつけていいものかどうかはわかりませんが、「スポーツが人間の心を鍛える」というのは、その「人間」によるのだ、ということなのでしょう。
 
 しかし、こんなのって、何のための「文武両道」なのでしょうか。
 頭が良くてスポーツもできて、モラルが最低の人間って、ある意味、すべてにおいて最低の人間より、よっぽど性質が悪いんじゃないかね。