初日 最新 目次 MAIL HOME


活字中毒R。
じっぽ
MAIL
HOME

My追加

2005年01月20日(木)
「オンライン痴話喧嘩」のリアルな結末

共同通信の記事より。

【別れ話の腹いせに、インターネットのオンラインゲーム「リネージュ」に不正アクセスし、元交際相手のゲーム内のアイテムを捨てるなどしたとして、福島署は20日までに、不正アクセス禁止法違反の疑いで、富山県高岡市の30代の女を書類送検した。
 調べでは、女は昨年4月ごろ、福島市の20代男性が持つゲームのIDとパスワードを不正に使用してゲームに侵入し、武器などのアイテムを捨てるなどした疑い。
 2人はゲーム内のチャットで2年ほど前に知り合い、交際するようになったが、別れ話が出ていたという。】

〜〜〜〜〜〜〜

 うーん、ネットゲームで知り合ったカップルとしては、ものすごく自然な「復讐」なのかもしれませんが、やっぱり、なんとなく違和感がありますよね。というか、「それですんで良かったね」と言うべきか。
 僕はオンラインゲームの経験はないのですが、知人の話や雑誌で読んだ記事などを総合すると「オンラインゲーム上でお金を稼ぐのは、普通に仕事をしている社会人には至難のワザ」とか「プレイヤーの中には、RMT(リアルマネートレード)という、『ゲーム内のお金や道具を、リアルでの現金で買う』という行為まで横行している」そうなのです。
 考えてみれば、僕だって長時間かけてレベルアップした「ドラゴンクエスト8」のデータを腹いせに消されてしまったらたまりませんから、「実体のないデータ」にだって、金銭的な価値が生じるのは当たり前の時代なのでしょうけど。
 そういうRMTの中には、その「元締め」になっているプレイヤーを中心に、何人もの「下働き」たちが日々敵を倒したりアイテムを造ったりして対価を得ている、というような「RMT集団」まで出現してきているそうなので、こうなると「ゲーム」というより「仕事」とか「バイト」という感覚かもしれません。実社会で働くのがイヤになった人たちが、そこから逃れてきたはずの「ゲーム社会」で単純労働をしている状況というのは、なんとなく皮肉めいた印象もありますね。結局、バーチャルのはずの世界すら、「リアルの延長」になってしまうのか、という諦念すら浮かんでくるのです。

 まあ、「ゲーム内のチャット」とか、そういうつきあい方をしたから、こんなわけのわからない「復讐」をしようとするんだ、と感じる一方で、きっと、現代人の付き合い方なんて、原始時代の人々からすれば、「バーチャルな付き合い方ばっかり」なのかもしれないなあ、とも思うのです。電話とかメールというのは、「情報」を伝えるツールではあるけれども、そこに介在するのは「文字」とか「音声」と言った、限定された情報なわけですから。
 「手で触れる」「体温が伝わる」位置関係でのコミュニケーションが主流だった人間たちからすれば、現代社会そのものが、僕たちにとっての「オンラインゲーム」みたいなものなのかもしれませんし。
 電話がない時代には「テレフォンセックス」なんて、みんな想像もしてなかっただろうし、そりゃもう、こんな時代になれば「少子化」が進むのも、いたしかたない、ような気もしてくるのです。

 ゲームのおかげで、世界中の人々は、「ゲームをやっているあいだだけは別の人間になる」ことができるようになりました。凄腕の格闘家であったり、世界を救う英雄であったりという体験は、それまでは、書物や他人の話を聞いて、頭の中で想像するしかなかった「妄念」のようなものだったのに。
 でも、こうしてバーチャルの世界ばかりが進化していくと、「誰がリアルの責任を取るのだろう?」と不安になってくるのも事実です。
 それこそ、生まれたときから自動的に栄養分を補給され続け、ずっとパソコンの前に座って家から一歩も出ないまま、バーチャルの世界で「救世主」として生きていくことだって、不可能ではないのだし。
 僕は映画「マトリックス」を観ても、「リアルがあんなに厳しい世界なら、いっそのことずっとプラグ指しっぱなしにしてもらって、バーチャルで生きたほうがいいんじゃないかな?」と真剣に考えましたけど。

 それにしても、このくらいの「復讐」で書類送検されてしまうなんて、バーチャルな世界での痴話喧嘩というのも笑い話になりませんね。実際は、他人になりすましての「不正アクセス」そのものが問題になってしまったようですが。

 そのうち、「オンラインゲーム上で人を殺した!」とかいうことで、実刑を受ける人が出てくるんじゃないでしょうか…