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2004年10月25日(月)
ガルシア・マルケスの発行部数倍増計画!

時事通信の記事より。

【「百年の孤独」などで知られるメキシコ在住のノーベル賞作家、ガルシア・マルケス氏(77)がこのほど10年ぶりに発表した新作が、思わぬ話題を呼んでいる。
 新作「メモリア・デ・ミス・プータス・トリステス」は、1950年代を舞台に、コロンビア人の老人が愛の遍歴を述懐する内容。27日に出版予定だったが、母国コロンビアで印刷所から流出したとみられる海賊版が広く出回ってしまった。これを受けて、同氏側は予定を1週間早めて20日から発売した上で、「本物」は海賊版とは最終章が異なると異例の発表を行った。出版元のランダムハウス・モンダドリ社は時事通信に対し、「書き換えたのは出版3週間前で、芸術的観点からの部分的な修正」と強調しているものの、海賊版に腹を立てたマルケス氏が一矢報いたのではないかとのうわさが広がっている。】

ガルシア・マルケスさんの略歴はこちら。

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 「現代ラテンアメリカ文学の旗手」であり、文学史上大きな影響を与えているガルシア・マルケス。もう77歳になられたんですね。
 僕も高校時代からハマっていた筒井康隆さんが紹介されていたので、「百年の孤独」他の何作品かは読んでいます。
 東アジアのニュースでは、よく「海賊版」の話題が出てきて、CDやDVDなどは、「本物の発売日前には、すでに海賊盤が多くの人に行きわたっている」などという話を良く聞きます。それにしても、マンガ以外の本の「海賊版」というのは、けっこう珍しいのではないでしょうか?
 そもそも、「印刷所から流出した」なんて、損害賠償ものなのではないかなあ、とも思いますし。

 「海賊版」ではありませんが、洋楽のCDなどは価格が安い輸入盤に対抗するために、国内盤には詳細なライナーノーツがついていたり、ボーナストラックが入っていたりするものです。そうでもないと、やっぱり消費者というのは「同じものなら、安いものがいい」と考えがちなものです。
 だからといって、小説に「本物にはボーナス・トラックが!」とか「豪華特典付き」というわけにはいかないだろうしなあ。

 もちろん、この「書き換え」が、「海賊版対策」なのかどうか、真相は作者本人にしかわかりませんが、この場合の最大の問題点は、果たして、その「書き換え」というのは、どの程度だったのか?ということでしょう。
 ほとんど話の本筋が変わらなければ、どちらも本人の作品には違いないわけですし、「海賊版でもいいや」と思う人もいるでしょう。逆に「海賊版なんて許せない」という人もいるでしょうが。
 しかしながら、ガルシア・マルケスという人は「海賊版が出るくらい」熱心なファンが多い作家でもありますから、もしかしたら、「海賊版」と「改訂版」の両方を手に入れて、比較してみたい、という人もけっこういるかもしれません。むしろ、「海賊版」のほうが「レア物」として価値が出たりするんじゃないだろうか、とも予想されますし、改訂する前の「海賊版」のほうが良かった、なんて声が出てくる可能性もあります。こういうのって、「直せば必ずしも前より良くなる」とは限らないから。

 でもなあ、77歳になって、ノーベル文学賞も獲って、これだけの名声を得ている大作家でも、やっぱり海賊版にはムカつくし、「一矢報いるために、自分の作品を書き換えた」なんて言われるものなんですね。事実かどうかはさておき。
 このくらいの大家になれば、「海賊版への憎しみ」より「自分の作品を改訂することへの不安」のほうが先に立つのではないかというのは、読者の勝手な思い込みなのでしょう。

 実は、この「海賊版」〜「改訂版」の過程そのものが、「マニアに2冊買わせるための戦略」だったりしたら、それはそれで「さすがマルケス!」とか思わなくもないのですけど。