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2004年07月15日(木) ■ |
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「ゴーマニスト」vs「ドロボー」の金網デスマッチ |
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毎日新聞の記事より。
【漫画家の小林よしのりさん(50)の作品「新ゴーマニズム宣言」を巡り、「自分の作品を『著作権侵害のドロボー本』と書かれるなどして名誉を傷つけられた」として、関西大講師の上杉聡さん(56)が約720万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が15日、最高裁第1小法廷であった。
「著作権侵害」など法律的な見解を表明した場合、「実際に違法行為を行った」という事実を指摘するものなのか、論評として許されるのかが争われた。横尾和子裁判長は「法律的表現は、最終的に司法判断で決着するものであっても、意見や論評の表明と言える」と初判断を示した。そのうえで、小林さんと漫画を掲載した雑誌の発行元「小学館」(東京都千代田区)に、250万円の支払いなどを命じた東京高裁判決(昨年7月)を破棄し、「名誉棄損ではない」とする逆転判決を言い渡した。小林さんの勝訴が確定した。
上杉さんは97年、「ゴーマニズム宣言」の批判本を出版。この本に小林さんの漫画のカットを引用したところ、「著作権を侵害された」とする小林さんが漫画で「上杉ドロボー本」などと批判するとともに、泥棒姿の上杉さんの似顔絵などを描いたことが問題になった。「ドロボー」と表現したことについて、「小林さんの漫画は意見や論評の域を逸脱した人身攻撃とまでは言えず、上杉さんも小林さんを著作で厳しく非難していた」として妥当性を認めた。
▽小林よしのりさんの話 ドロボーの一言で訴えられていたら、言論で闘う場合にあらゆる言葉が訴えられてしまう。名誉棄損にならないとされて、ありがたい。
▽上杉さんの話 合理的根拠がなくても「ドロボー」と連呼できる、とする判決で、承服しがたい。バランスを欠いた不条理な内容だ。】
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僕はこの「ゴーマニズム宣言」を読んだのですが、確かに「ドロボー本」とは過激だなあ、と思った記憶があります。まあ、「ゴー宣」を読んでいると、どうしても小林さんの思考の影響を受けるので、半分くらいは「やっちゃえ!」という感じではありましたけど。 それにしても、今回の判決が「バランスを欠いた不条理な内容」かと言われると、必ずしもそうではないような気もします。当事者でない僕からすると、自分のほうから厳しく非難しておきながら、「著作権侵害」「ドロボー」なんて言葉尻をとらえてお上に訴えるなんて、それこそ「子供のケンカに親を連れてくるなよ」という印象で。 とはいえ、お互いの社会的影響力などを考えると、「言論の内容以前に、勝負にならない」から、あえて法に訴えた、というところなのでしょうが。 【「著作権を侵害された」とする小林さんが漫画で「上杉ドロボー本」などと批判するとともに、泥棒姿の上杉さんの似顔絵などを描いた】なんていうのは、正直、上杉さんとしては耐え難い屈辱だったのだろうな、とは思いますけどね。【意見や論評の域を逸脱した人身攻撃】と言えなくもないでしょう。 裁判長の本心はわかりませんが、もしかしたら「お互いさまなんだから、裁判所を巻き込むなよ…」とか考えていたのではないかなあ。 口喧嘩の最中に衝動的に出てきた言葉のひとつひとつに、いちいち違法性を検証するなんて、ある意味バカバカしい。 考えてみれば、別に「ドロボー」と書くことが、小林さんの言いたいことを説明するのに必要なわけじゃないような気もするのに。
なんとなく、こういう罵りあいを喜んで読んでいた自分というのも、ちょっと恥ずかしいな、と反省してしまいました。 口喧嘩では声が大きいほうが正しく聞こえるように、言葉だけの場所って、内容よりも「言葉の強さ(インパクト)」のほうが重視されがちですしねえ… 本当は、そんな「悪口比べ」を金払って読んでもしょうがないのに。
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