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2002年12月03日(火)
千と千尋の赤隠し。


毎日新聞の記事より。

【大ヒットしたアニメ映画「千と千尋の神隠し」(宮崎駿監督)を収録したDVD(デジタル多用途ディスク)の購入者が販売元のウォルト・ディズニー・ジャパン(東京都目黒区)を相手取り、「色調が赤みがかって映画館と全く違う」などとして、正しい色調のDVDとの交換と1人1万円の慰謝料を求める訴訟を京都地裁に起こした。このDVDは初回出荷が300万本に上ったが、同様の苦情が同社や各地の消費生活センターなどに寄せられており、裁判の成り行きが注目される。

 訴えたのは、京都府や兵庫県のDVD購入者3人。訴状などによると、同社は映像ソフト販売部門の「ブエナ・ビスタ・ホームエンターテイメント」を販売元として今年7月、DVDを発売した。ところが、収録された画像は全編で赤みがかって暗く、原告側は「映画と全く異なるものだった」と主張している。また、原告側がコンピューターで色味を分析したところ、光の3原色のうち赤が極端に強かった、との結果が出たという。

 自らもDVDを購入し、原告にもなった大谷哲生弁護士は「素晴らしい映画なのにDVDにがっかりした消費者は何十万人もいるはず。法廷で真相を明らかにするのが目的だ」と話している。 

●受け止め方の違い

 ブエナ・ビスタ・ホームエンターテイメントの話 訴訟については映画製作者の「スタジオジブリ」とも協議して対応を考えるが、このDVDの色調は製作者の意図を尊重したDVD独自のもの。「映画と違う」「同じ」という議論は受け止め方の違いと考えている。】

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 「赤いほうが、いいじゃないか!」というわけにはいかないみたいです。
僕もこのDVD観ましたが、確かに赤みがかって見えました。でも、「そのせいで素晴らしい映画がだいなし」とまで言い切れるかは、ちょっと疑問なのですが。
 それに、この「赤い騒動」によって、ある種の先入観を持って観たことは、否定できませんし。
 この弁護士さんたちは、いわゆる社会正義の観点から立ち上がったのだと思います。ひとり1万円の慰謝料は裁判を起こすための名目で、実質はこの人にとって一万円は、裁判の手間を考えたら、割りにあわない金額でしょう。もちろん、弁護士として名前を売りたいという気持ちもあるんじゃないかな。
 しかし、もしすべての購買者が一万円ずつ慰謝料をもらうようなことにでもなれば、大変なことですけど。
 ただ、メーカー側としたら「そんなら買わなきゃいいだろ」という意見もありますよね、きっと。
 別に、脅して買わせたわけじゃないですから。
 僕は、映画館で「千と千尋の神隠し」一回だけ観ましたが、では、映画館での色とそんなに違うのか?と問われたら、正直、映画館での色合いをそんなに正確に覚えている自信はありません。
 それに、映画館では、真っ暗で広いスクリーンという、一定の条件で再現されているわけですが、家庭用の場合は、テレビを観る環境の明るさとかテレビの画質も千差万別ですから。
 観て不快になったから、慰謝料よこせ!というのが可能であれば、少なくとも「赤っぽい千と千尋」よりもさらに不快な映画なんて、腐るほどあるわけですし。
 色の調節なんてのは、観て明らかなノイズや編集ミスと違って、「これが製作者の意図したものだ」と言われれば、どうしようもないところがあるんですよね。
 真っ赤とか真っ黒では、致し方ありませんが。

 ただ、僕としても、発売元の正直な意見と正確な情報を聞きたい気持ちはあります。
 どんな形式で画質の調整をしていたのか?
 ほんとうに、今の色は製作者側が意図したものの通りだったのか?
 こういうのは、まさに主観の相違だと思うので、視聴者からみて納得がいくプロセスを経ているのなら、それはそれで仕方がないのかな、とも思っていますが、「ミス隠し」であれば、きちんと対応すべきでしょう。
 そういう製作者と視聴者の「感覚的なズレ」があまりにひどいのであれば、それは今後修正していくべき点だろうし。
 いやまさか、家庭用のDVDを映画館と同じ環境でしかチェックしてないということは、ないでしょうけど。

 裁判には負けないとしても、今後、ジブリの映像作品を予約して買う人が少なくなるのことだけは、確かだと思われます。