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2002年05月07日(火)
2002年5月7日。

「寿司屋のかみさん おいしい話」(佐川芳枝著・講談社文庫)より抜粋。

【いつだったか、中年のご夫婦がシジミのみそ汁を飲んでいて、「ああうまい、こんなみそ汁は久しぶりだ」ご主人が、しみじみ言ったら、奥さんが、「あなたっ、何言ってるの。毎晩遅いから、朝起きられなくて、食事もしないで出てゆくくせにっ。ちゃんと起きてくれるなら、みそ汁くらい、私だってつくりますよっ」
あやうく、カウンターで夫婦喧嘩が始まりそうになり、夫と私が話をそらして、その場をおさめた。】

〜〜〜〜〜〜〜
奥さんや恋人の前では、料理を誉めるのも難しい。しかし、もしこの料理が、舌平目のムニエルとか、北京ダックのような日頃口にすることがない超高級料理だったとしたら、この奥さんもそんなに怒りはしなかったと思うのですが。
でも、この情景をよく考えてみると、ご主人は「こんなに旨い味噌汁」を飲んだのが久しぶり(まあ、そうですよね。やっぱり店の味は、そうそう素人に出せるものじゃないし)だと言っただけで、別に、味噌汁をふだん飲んでいないとは、言ってないのですが。
奥さんとしては、自分が日頃からちゃんと料理をしていないというふうに言われたような気がしたんでしょうね。
例えば、もしこの場に、寿司屋の店主とおかみさんがいなかったら、たぶん、こんなふうに2人が喧嘩をすることはなくて、「この味噌汁、おいしいね」「そうだね」というような結論になっていたんじゃないでしょうか。
店の人と客という関係でも、女は女、夫婦は夫婦ということもあるんでしょうね、きっと。
お店の料理をほめるときは、その料理の種類とまわりの人々をよく確かめてからのほうがよさそうです。
だからといって、いつも「キミの料理が最高だよ」では、あまりに嘘っぽい気もしますけど。

それにしても、おいしい料理の味わいかたというのは、それはそれでなかなか難しいですね。かえって不味いもののほうが「これまずいよね〜」「そうだよ、何これ」などと、2人はかえって意気投合してしまったりするもので。