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2002年05月02日(木)
2002年5月2日。

毎日新聞の記事より抜粋。

20年前に借りた100円…当時高校生・目黒区の主婦、手紙添え交番へ返す /東京

 「20年前に借りた100円をお返しに来ました」。19日午後、神奈川県藤沢市辻堂のJR辻堂駅前交番に、女性が訪れた。その手には、謝礼の図書券と手紙が添えられた「100円硬貨」が握られていた。女性は、目黒区内の主婦(37)と名乗ったという。
 82年の夏休み、藤沢市の自宅から鎌倉市内の私立女子高に通っていた。ある日、財布を忘れてバス代がないことに気が付いた。目の前にあった交番に、勇気を奮って入った。
 「バス代を貸して下さい」
 交番には20代と思われる、若い警察官2人がいた。1人が彼女の事情を知り、快く100円を貸してくれたという。
 手紙には「すぐお返しするつもりが、日を過ぎるにつれ勇気がなくなり、こんなに遅くなりました。困っていたとき助けていただいたのに、時々思い出しては気にしていたのにうかがえずごめんなさい」と謝罪の言葉がつづられていた。
 同署は「暗い話題の多い時代に心の洗われる思いがする。当時20代の交番勤務員なら今40代。部内誌で呼びかけ探してみる」と話している。該当者が名乗り出ない場合は返された100円と2000円分の図書券は、交通遺児の支援事業などに役立てる。

〜〜〜〜〜〜〜
この暗い世の中、なんとも心洗われるような「美談」ではあります。きっとこの主婦は、20年間ずっと、「あの100円を返さなくては…」と思い悩んで人生を送ってきたんでしょうね。

って、そんなことないだろう、と僕は思うのですが。
20年前といえば、僕は10歳のころ。当時のことを思い出しても、100円というのは、そんなに目の玉が飛び出るような大金ではない、というか、まあ、駄菓子屋に自信を持って行けるくらいの小遣い、といった感じでしょうか。それを考えると、ファミコンの出現というのは、子供の金銭感覚を破壊してしまった感もありますね。

でも、この100円(プラス2000円の図書券)なのですが、これが美談となるということは、世の中の人々は、交番で借りた100円くらい、返さないのが当たり前と思っているということなのでしょうか。もし金額が1億円とかだったら、詐欺罪だと思うのですが。仮に20年後に返したとしても。
でもなあ、借りたものを期日までにきちんと返しても「美談」でもなんでもないのに、20年間隔を置いて返したら、感動的な話になってしまうというのは、いかがなものでしょう。
高校生の彼女の気恥ずかしさと100円という金額を考えると、彼女がなかなか返しに行けなかった理由というのは容易に理解できることだし、別に、この「100円の人」を責めようという気持ちはさらさらないんだけれど。

それでも、非行にも走らず、ただ淡々と真面目に人生を送っている人々よりも、不良や人に迷惑をかける存在から「更生」した人々のほうが賞賛されるというような現実は、ちょっと歪んでるのではないかな、と感じずにはいられないのです。

僕は、翌日ちゃんと返しに来るひとのほうが偉いと思いますよ、絶対に。