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海は青い。海は広い。海は深い。海は全て の命の源だ。 私達の体を構成する1番多くの要素は水で ある。ならば、私達にも、逆らうことなく流れ を変える、水と同じ性質が備わっていても 不思議はない。 私達は、青い水の惑星にいる。海の青、空 の青に強く惹かれる理由はここにあるのだろ うか? 晴れた日の昼間に見る海や空は、穏やか でいて友好的だ。しかし、私を強く魅了する ものは、「夜の海」であり「夜空」だ。黒くて、 深くて、冷たくて、広いそれらに、かつては とてつもない恐怖を感じては目を逸らしてい た。 プールでも、海でも良かった。歩くも良し。 泳ぐも良し。深く、深くもぐるのも良い。静け さと安らぎの中で、余計なものを、ひとつひ とつ手放し、自由になる瞬間が心地良かっ た。 そこには、自分が自分である意識さえも無く なる、存在自体が「とろ~ん」と水の中に溶 けてしまう、なんともいえない幸福感があった。 尾ヒレがつき、まるでイルカにでもなったよう な気分になれたのだ。 あらゆる感情を無にする「心の安定」。あれほ ど求めていたそれが、今は恐怖に変わる。 感情を無くすことの方が、相当に恐ろしく感じ てしまうのだ。 集中しているも時そう。ふと気がつくと、心静 かに何かに没頭している瞬間があり、戸惑い を隠せない。 瞬きする瞬間でさえも、思いっきり笑い、泣い て、心配して、怒って、踏み潰されてもまた咲 いて、時にダンマリしながら、生きていたいと 願う。 心の奥底から沸きあがる感情を、上手にコン トロールする力が備わってしまうことほど、表 現者にとって辛いことはない。 夜空を見上げ、夜の海を眺め、瞬きする瞬間。 人は閉じた瞳の奥で、何を見つめ何を考えて いるのだろうか。自分以外の「他の世界」を追 い求める自分がいる。 青でもなく、黒でもない、「ブラックブルー」の 命が芽吹く。 心の波は驚くほど静かだ。夜空に散りばめら れた無数に輝く星たちは、まだ私の頭上には 落ちてこない。
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