監督:原恵一 声の出演:冨澤風斗(クゥ) 横山貴大(上原康一) 田中直樹(康一の父・保雄)、他 オススメ度:☆☆☆
【あらすじ】 夏休み直前のある日、小学校の帰りに大きな化石を見つけた上原康一は自宅に持ち帰り石を水で洗ってみた。すると石から河童が現れたのだ。「クゥ」と名付けた河童の子供は、何百年も土中に閉じ込められていて人間の言葉も話せるという。最初は驚いた両親もクゥを世話する事を許してくれて、弱っていたクゥは康一家族の庇護の下で元気を取り戻していった。ところがクゥがある日「仲間の所に帰りたい」と言い出し・・・
【感想】 小暮正夫氏著の児童文学「かっぱ大さわぎ」「かっぱびっくり旅」からインスパイアされて製作したアニメーション。 本作の企画・脚本・監督全てを「クレヨンしんちゃん」シリーズの監督として知られる原恵一氏が手掛け、構想20年・製作5年という途方もない時間を掛けて製作したという渾身の一作。
まあ要するに自然を大切にする事、家族の絆、友情、仲間の大切さ、勇気、優しさ、思いやり等々のお子様推奨ネタてんこ盛りな内容ではあると思うのですが・・・正直子供が見るにはちょっと難しくないか?と思わないでもない。 本作のターゲット層がよく判らないのですが、少なくとも幼稚園児では難し過ぎるだろうし、「いじめ」が横行するような小学校中高学年辺りになって来ると、本作の表現の余りにリアルな様子にどう反応を示すのか?子供のいないぴよにはちょっと想像が付きません。
それというのも、本作の劇中にかなり胸糞の悪い「いじめシーン」が多々登場するからです。 他にも人間のエゴイスティックな感情や行動が、かなりリアルに赤裸々に描かれている。それを「こういう事をするのは心の貧しい事なんですよ。やっちゃいけない事なんですよ」とはっきり啓発・啓蒙表現をしないで、人間というのはどうしてこんなに卑しく心貧しく汚い生き物なのか・・・というのをこれでもか!と見せ付けるだけに終始した作りになっている。
河童と出会って心通わせるというファンタジーいっぱい♪な一方で、現実問題として本当に河童が実在していたら世間はどういう反応を示すか・河童を保護している家族は世間の反応にどういう対応をするか、という超リアルな部分を組み合わせた作りになっていて、その「超リアル」な反応がもうとにかくヘドが出る程感じが悪い。
最初はクゥの気持ちを慮って「世間には秘密にしよう」という、情に厚いファンタジーファミリーだったのに、それがいざマスコミにバレて「河童を飼ってる家族」として散々メディアに取り上げられると、TV写りを気にしたりワイドショーに出演出来ると有頂天になったりして痛い事この上ない。 クゥがおっさん(上原家の飼い犬)と「人間ってどうしてこうも変わってしまうのか」と嘆き合うシーンがありますが、本当に見ているコチラがクゥに申し訳なくなって「すいません。すいません(涙)」と頭を下げたくなってしまう。
コレは大人の反応だと思うんだけど・・・子供はこういう展開を見てやっぱり同じように思ってくれるんだろうか? もしそうだったらこの映画は大成功だと思うんだけど、少なくともぴよがこの映画を鑑賞している時に周囲はお子様てんこ盛りだったのですが・・・クゥと康一とのユーモラスなやりとり等にはキャーキャーはしゃいで大喜びだったお子様達、いじめやマスコミ反応等のシリアスな場面になると(しかもそのシーンが結構長くて多い)すっかり映画に興味をなくしたのか会場内をバタバタと走り回って邪魔で仕方なかったんですが。←こらこら(^-^;
要するに映画の主張する部分がかなり大人向けに演出された脚本だったと思うんですよね。 映像も子供に見せるには勿体無いくらい丁寧に作られていますし(最近のアニメは軒並みクオリティ高いけど)、大人が見るには反省させられたり日本の原風景のような美しい遠野の様子を堪能したりと、ファンタジーとシリアスと映像美をバランス良く楽しませてくれる秀作だと思うのですが、子供が見たらコレってどうなんだろう?
それから本作は上映時間が2時間18分、子供が見るにはちと長過ぎる。 大人のぴよでも「アニメは2時間が限界だなー」と思ってる位なのに、よっぽど気を惹き続けられなければ、子供にこれだけ長尺のアニメが大人しく見ていられるのか?少なくともぴよが鑑賞した時に会場は・・・もういいか(苦笑)
そんな訳で大人にはオススメしますが、子供には何歳以上からが鑑賞に向いてるのかちょっとワカリマセン。 「子供」「子供」と連呼してしまいましたが、予告編の作りやキャラクターデザイン等を見ると、本作はあくまでも子供を対象に作っているとしか思えなかったので、こういう感想になってしまいました。 アニメーション作品としてはよく出来ていると思いますので、是非大人の方だけでもご覧になって下さいよ。
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