Sotto voce
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2012年03月10日(土) Song for…。

あれはもう何年前のことなのか。

SNSのカラオケオフ会で
私が歌った「浮舟」と言う歌を気に入った、と
あなたの歌声をこれからも聴きたい、
そう言ってくれた人がいた。

歌は好きだけど、
自分の声にコンプレックスを抱えてる自分にとって
その言葉は嬉しくもあり、でも信じられなくもあった。

その方は何人も生徒をとって教えてる、
「歌で飯を食えている」歌い手。

初めて会った時に
その方が歌った中島みゆきの歌に
誰もが圧倒された。

ただうまいだけじゃない、
その人の人生と言うか生き様が
その歌声に更に重みを持たせていた。

その時から私は
その方をひそかに師匠と呼んでいる。

互いの家庭の事情もあり、
なかなか連絡もとれずにいたのだが、
突然、先方からメールが来た。

師匠は、私の主宰するカラオケコミュに参加してくださっているのだが、
できればオフ会と言う形でなく、
二人で会いたい、会ってあなたの歌を聴きたい、と言う内容で。


なぜ、「皆と一緒」じゃだめなのか。

そう問おうとした私に届いた次のメール。


『自分は、病に侵されている。
先立った夫と同じ病。
今はまだ大丈夫だけど
いつかは歌えなくなる日が来る。

その病の治療をうけたら
間違いなく声に支障が出る。
だからぎりぎりまで治療は受けない。

この身体が動くうちに
あなたと会っておきたい。
あなたの歌声に癒されたい。
あなたの歌で元気を分けて欲しい』


涙が止まらなかった。

私より上手な歌い手はたくさんたくさんいる。
なのになぜ、この人はそんなことを言ってくれるのか。

自分の歌にそんな力があるとは到底思えない。
それでも、この声が少しでも力になるのなら
いくらでも歌う、あなたが私を必要とするのなら。

なるべく早く、時間を作ろうと思う。
私も、師匠の歌を聴いておきたいから。


安積 紗月 |MAILHomePage

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