Sotto voce
DiaryINDEX|past|will
それは、父の上司からの一本の電話から始まった。
父が無断欠勤していると言う。携帯にもでないと言う。
朝、私が家をでるときには確かにいた。寝てたけど。 昨日、父は胃カメラの検査のために有給をとった。 昨日は父の誕生日でもあり、娘たちとの食事会よりも カラオケ仲間&飲み屋のオネーチャン’Sとの誕生パーティーを選択し、 ごきげんさんで帰ってきたのは午前3時(←寝ていたためうろ覚え) そんなまさか、と笑い飛ばした私。
昨日休んだ理由が理由だけに、検査の結果が悪くて…と 同僚の皆様は心配をしているようだ。
仕事の締切の都合上、ぶっ倒れそうになるのをこらえて出社してた私。 そこでオーバーヒートして…臨界点突破。同僚に平謝りして午前中で早退する。 割れるような頭痛と高熱の中、 それでも頻繁にかかってくる父の同僚からの電話に応対しつつ、 最悪の事態まで考え、眠れないまま時間ばかりが過ぎる。
夕方になっても父との連絡は一切取れず。 私はこの人にだけは頼るまい、と思っていた 世間様では親父の「オンナ」と噂される女性・Sさんに電話を掛ける。 電話口で感情が高ぶって思わず泣き出した私を心配して、 Sさんも父探しに協力してくれることになった。
数分後、彼女から電話が入る。 父の様子がおかしい、と言う。 最初は電話の相手がSさんだと判らないくらい、 意味不明な言動をしたと言う。 隣町の海岸の近くにいて、海が綺麗で思わず引き込まれそうだ、と言ったと言う。
私からの電話にすら出ないのに、Sさんとは話をするんだ…と ちょっと嫌な気持ちになる。 あからさまに電話口で取り乱した私を心配して、Sさんが家まで来てくれた。 2人で父を迎えに行くことになり、それぞれの車で隣町のO海岸に向かう。
O海岸に着くと、柵も何もない、オートマ車で操作ミスすれば海へ真っ逆さまな海岸と駐車場の境目に車を止めて、泥酔状態の父が車の中で爆睡中。 どうにかたたき起こすと、今度は私とSさんの目の前で号泣する父。
「昨日の検査の結果は、何も異常なかった。 でも、俺は胃がんでもなんとでも診察されて入院したかった。 (異常なしの診断をされたことで)逃げ場がなくなったんだ・・・って思った。」
この発言は、とてもショックだった。 普通なら異常なしの診断にほっとするべきところを、 異常ありだと判断されて病院に入りたかった。 …つまり、自分を取り巻く全ての環境から逃げたかった。 仕事も、人間関係も…そして、家=私からも…?
家、と言うのは安らぎの場所だと思っている。 母がいた頃の私にとっては決してそうではなかったが、父と2人だけの生活をするようになってから、安らぎの空間に変わりつつある。
でも、父にとっては決してそうじゃなかったんだ。
私への不満を口にする人ではない。 仕事への愚痴を言う人でもない。 でも、父の中ではそんな不平不満が、たまりにたまっていたんだ…。
何も言えなくなった私に代わって、 Sさんが父にいろいろ問いかけ、父の気持ちを洗いざらいしゃべらせようとする。 Sさんの問いかけには素直に応じる父。
…じゃあ、ここにいる私はいったい、なんなんだろう。
かつて、父が忘年会か何かから帰ってきて、 介抱した私に向かって 「お前じゃやっせん!(←鹿児島弁で「だめ」とか「悪い」の否定の意)、 R(妹)を呼べ!Rはどこ行ったとよ??」 …と言ったことがある。
どこの家庭もそうだと思うが、やはり末っ子のほうが可愛いのか、 父は妹を溺愛していたし、妹も何かあれば父にくっついてる「お父さん子」だった。 やはり父は、母はともかく妹に去られたことが痛手だったのだろうか。
同じ暮らすなら、妹をそばにおいていたかったのだろうか。
とにもかくにも、最悪の結末にはならずにすんだが、 このまま父と暮らし続けることに、更に自信をなくした騒動でもあった…。
|