泡とガラス玉


2004年12月23日(木)      ピストル


息を止めて
全部終わりますように。と
旅行かばんに全てを詰めて
逃げ出した彼女の
からっぽの部屋には
深い溜息しか
残っていませんでした

私は足跡をたどって
追いかけましたが
途中のゆるやかな川で
あの大きな旅行かばんが
中身を散らしながら
流れてゆくのを
見たきりでした

彼女は
自由が欲しくて
誰にも束縛されたくなくて
服も脱ぎ捨て
お化粧も落とし
持っていたお金をばら撒いて
全速力で
駆けて行くと
とうとう風に
なってしまったのでした


私は
まだ青白い月の
薄っぺらな笑い声を右耳で聞きながら
またもや彼女を解放できなかった
苦しみに悶え
脆い足元から
赤い土になりました


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