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2007年01月02日(火) トリコモナスの論文を斜め読みする。

Failure to detect urethral Trichomonas vaginalis in Japanese men with or without urethritis.
SHIN-ICHI MAEDA,et al.Int.Journal of Urology(2006)13,1418-1420.

日本人男性のトリコモナス尿道炎の罹患率の論文である。

男性のSTDで最も頻度の高いのは尿道炎である。
女性のトリコモナス腟炎から伝播した、わが国の男性におけるトリコモナス尿道炎(症候性・無症候性)の罹患率を調べた。

100名の男性が対象である。
66名は尿道炎症状を有していた(16-65、平均24歳)(淋菌性28、非淋菌性38)。
29名は無症状でSTDスクリーニング受診し尿沈渣に異常はなかった(18-50、平均26歳)(クラミジア陽性1、病原体陰性28)。
残りの5名は他のSTD(ヘルペス等)であった。
しかしながら、前2者で、いずれもトリコモナスは陰性であった。

アメリカでは、有症状患者の10-30%がトリコモナス陽性で、成人女性の2.8%にあたるとされている。
ある研究では日本人女性では、11.3%/人口10万とされており、また別のデータでは、コマーシャルセックスワーカー171名でトリコモナスは検出されなかったとのことである。
つま日本人女性の罹患頻度は低いということであり、それが日本人男性でのトリコモナス罹患率も低いという結果になったのだろうという結論である。

時々、婦人科でトリコモナスと彼女その他の女性が言われた、とのことで、受診される方がいる。
そういった男性の尿沈渣を見るのだが、尿中のトリコモナスにめったにお目にかかることはない。(先日一人おられた。)
でもそういった経路で泌尿器科受診するので、婦人科領域ではけっこうトリコモナスっているんだ、とか、思っていたのだが、
・・・このデータからすると絶対的頻度は多いわけではなさそうだ。
しかしパートナーがトリコモナスという条件が前提としてあるわけで、
上記とはちょっと違うわけで・・。
・・・そういった方に関してクラミジアPCRはチェックするようにしているが、
けっこう陽性率はあるように体感している。

つまり何が言いたいのかわからなくなってきたが、
STDはいろいろあって裾野が拡がってるよなあということなのである。
トリコモナスに罹患しているとHIVのリスクもあがるというようなことも書かれていたが、
これってクラミジアでも似たようなことが言われている。
つまりそういうことなのだ。

知らないことは、はっきりいってSTDの世界でも罪とみなされるんだろう、な。
彼氏を、彼女を信じるとか何とかいう前段階の世界に向けて、世界は急速加速中なのである。

その後で、米疾病管理センター(CDC)によるSTD新規ガイドラインの概要を読んだのだが、これが複雑過ぎて実感わかない。

・性的暴行後の予防法とか、妊娠に至る可能性がある場合の緊急避妊薬の使用とか、
・膣トリコモナス症に対する新規抗微生物薬としてのメトロニダゾール2g単回投与とか、
・男性と性交を行う男性における性病性リンパ肉芽腫性直腸結腸炎に対するセフトリアキソン125mg筋注とか、

・・・いやいや。なんか怖すぎます。


2005年10月01日(土) 『ロキソニンは夜間頻尿を改善する?』

『ロキソニンは夜間頻尿を改善する?』
という感じの2つの論文を斜め読みする。

ロキソニンはメジャーな鎮痛剤である。NSAIDsのprodrugである。
その作用はプロスタグランジンの生成阻害であり、他のNSAIDs同様である。
この手の鎮痛剤は、連用で胃腸障害がおこりやすいのはよく知られていることである。

その1;『夜間頻尿に対するロキソプロフェンの効果 あらき腎・泌尿器科クリニック 荒木徹(日本臨床泌尿器科医会 第3回臨床検討会記録集より)』

前立腺肥大の治療として主にαブロッカー投与している人で、夜間頻尿が2回以上の人に、就寝前ロキソニンを1T投与した。
著効・有効を含めると74.2%に効果あり。
夜間頻尿のためαブロッカー以外に、抗コリン剤とか、三環系抗うつ剤を処方する症例もあるのだが、これらの無効例にも30-40%効果あり。
神経因性膀胱患者に対しても、80.6%有効であった。
また投与をやめたあとでも1割くらいは効果が継続しているとも書かれている。

こういった夜間頻尿患者には高齢者が多いので、連用には注意が必要なので、
効果があるとわかれば、いざというときの屯用を進める、と、著者は述べている。

で、ロキソニンの夜間頻尿に対する効果は以下の4つが推測されるそうだ。

①腎での尿生成抑制
②下部尿路に対する鎮静
③尿意に関する神経の中枢での抑制
④脳における睡眠覚醒コントロール

もう一つの論文。

その2;『Effectiveness of an anti-inflammatory drug,loxoprofen,for patients with nocturia. MOTOAKI SAITO et al(International Journal of Urology(2005)12,779-782)』

こちらは15名の(前立腺肥大and/orOAB)の方に、現行の治療でも夜間頻尿改善しないのでロキソニンを眠前に内服して7日後に評価したところ、
著明7、改善6、変化なし2という好成績を得たというものだ。
著者らはロキソニンの効果は、主に夜間の尿の産生を抑えることであり、膀胱容量には影響していない、と、述べている。

へえ~っ。

もしかしたら夜尿症とかにも効くのかもしれないが、対象が小児のため、なかなか使えないか。
インダシン座薬も効いたとどちらかの考察に書かれており、高齢者に対して座薬とかはもしかしたらいざというときのチョイスはありかもな、などと思いつつ。


2005年04月15日(金) 韓国の大学での、STDスクリーニング

韓国の大学での、STDスクリーニングの論文を読む。

South Koreaの3大学で行われ、対象は18-25歳、M202名、F420名と結構大規模である。

彼ら彼女らのうち、性交渉を経験しているのは、M120(59.4%)、F123(29.3%)。
その中でのクラミジアの検出率はM8.4%、F10.6%で、淋菌感染は症状のある1名のみとのことであった。

で、STD罹患に関与しているのはコンドームの使用と、セックス・パートナーの数という、まあ妥当な結論が出ている。
アジアの中でも南韓国はAIDSの発生頻度が低いためにコンドーム使用率が低いのだとか、
性活動期の無症候の学生に対しクラミジアのスクリーニングは有用であろうと察されているのだが・・・。
それはそれで納得できる結論なのだが。

ここで、個人的・素人的に驚く点を2つ

1.儒教概念がまだ浸透されていると思われている(『冬ソナ』のせいでそんな風に思うだけなのか?)韓国の大学生でも、コンドーム常時使用は9.1%、絶対つけねえよと回答した人は48.6%もいるという驚愕の事実!

2.どうして韓国には、淋菌感染症はないの。
当院を訪れるSTD患者さんの中にはいるし、日本は先進国の中で唯一淋菌感染症の多い国だと文献上書かれているけどホントだったんだ、という、今さらのショック!

そりゃあ日本の若者がコンドームつけんはずだわ。
・・・といいつつ、今日もSTDの治療にいそしむのだった。

(参考文献:Sexual behavior survey and scleening for chlamidia and gonorrhea in university students in South Korea(International Journal of Urology,2005,12;187-193))


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