| 殺人狂時代。 |
チャップリンの出ている映画の一つのタイトル。内容はよく知らないし、見た事も無い。でも、一つだけ知っている台詞がある。「一人殺せば殺人者だが、戦争で何万という人を殺すのは英雄だ」みたいな大意の台詞。最後の方の演説シーンにあるらしい。もちろん、この台詞は戦争を皮肉った台詞。決して戦争を賞賛する台詞ではない。私は、この台詞に今までに2回関わった事がある。一度目はGWの映画だったりする。二度目は、先日の大学の中国思想史の授業中。墨子の思想についてやった時。
儒家は、墨家を批判していたらしい。まぁ、理由は色々あるけど、儒家と墨家の思想の大きな違いの一つは、"戦争観"について。儒家は、正当な理由があれば、正義のための戦争であれば、その戦争でどんな行為を働こうともそれは賛美される事らしいが、墨家思想では、たとえどんな正義に則っていても強者が弱者を一方的に侵略する戦争を否としている。唯一許されるのは、弱者が強者に侵略されそうな時にそれに抵抗する戦争だけ。そもそも墨子は防衛戦争の請負業みたいな事をやっていたと言う事だ。つまり、弱者の味方。
墨子の思想は、他にも"博愛"を唱えている。上下関係にこだわらない愛。儒家は、下から上への愛は強く、上から下への愛は別にそこまで強制されていない感じだった。それに比べて墨家は上から下へも、下から上へも、同じ愛情を持とう、と言うような内容。それによって戦争は無くなるとも唱えているようだ。
春秋末から戦国時代に流行したこの墨家思想は、その後消滅するも、清になってから研究が進み、またも流行。トルストイがこの思想に大きな感銘を受けたとか。「こんな昔に博愛を唱える思想があったとは」って。
中国思想史の先生は、もしかしたら、このトルストイが墨家思想に影響を受けた事が、このチャップリンの映画、「殺人狂時代」のこの台詞に影響したのかもしれない、と、あくまでも仮説ではあるけど、そんな事を言っていた。私はこの戦争を皮肉った台詞が実は好きだったりする。そして、この授業をキッカケに、墨家思想にも少し興味が湧いてきた。この思想が、現在戦争、紛争中の地域にも広まればいいのに。
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2002年05月29日(水)
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