即興詩置き場。

2005年03月30日(水) 美しい夜に



美しい夜に



美しい花が咲くよ
飲み込めないものを置き去りにして
美しい花が美しく咲くよ
思い出を糧に
忘れられた形を残して
美しい花が咲く美しい夜に
僕たちの魂は震えているよ
僕たちの魂は淡雪のように中途半端に
震えながら落下するよ

夜の淡雪は美しいよ
それは誰にも気づかれずに降っているよ
夜の淡雪が美しく降るよ
僕たちは落下しながらそれを見るよ
見ていることに気づかないまま
淡雪のようにそれを見るよ

思い出はいつも美しいよ
美しいものだけが残るのではなく
すべての思い出が美しくなるよ
僕たちの魂はそれを糧に
美しく美しく落下するよ
淡雪のように
忘れられた形を残して





2005年03月07日(月) 動物園 2



動物園 2


<雪見カンガルー>

どうしても雪の白に溶け合わない
自分の体を恨めしく見下ろすと
袋の中で子供たちが
凍えながら見上げている



<嫌がるラクダ>

ラクダのコブは脱着可能だが
ラクダが嫌がるので外されることはない
ラクダはコブを欲しがっている
できるなら
100個くらい
どんなに小さな
コブでもいいから



<武装する象>

象の武器は
長い鼻でもなく
鋭い牙でもなく
重い足でもなく
あの、つぶらな瞳だ
この瞳によって
象に逆らうことはできない



<錯乱フラミンゴ>

こんなに集まらなくてもいいだろうと
誰もが思っている
群れるのは嫌いだが
一人では生きていけない
そのジレンマで
バシャバシャ水面を叩く
誰もが錯乱している



<考える猿>

我々は進化する
すべてを見て、すべてを語り、すべてを聞く
芋も洗った、温泉にも入った
だが、パンツはまだ履くべきでない



<サイレントサイ>

眠りにつくものと起き上がるものが交差する
陽が昇る直前のわずかな時間に
今日はどれだけの生き物が死んだのか
サイは瞑想する
この地には例外が多すぎて
死んだものと生き残ったものの数が合わない
懐かしのサバンナ
死者はすべて生者の血肉
苛立ちながら瞑想を止め
サイは静かに
突進を始める
例外の象徴
檻に向かって





2005年03月02日(水) セックスの話をすると腕が痺れるのでセックスの詩を書こうと思う



遠く、遠く、遠い場所で
何かが揺らめいている
ように見えるんだ
そして消えるんだ
追いかけないんだ
そこにいるんだ

交接、の前の
寂しさが好きだ
触れる直前の、一瞬の孤独
「二人」という言葉には
わたしとあなたは違う
そんなせつなさが隠れている

そう。
すべてがせつなさから始まる
それが世界のロジック
ありふれた
微細な揺れが
やがて波になり、波動になり、
伝わり、包む。包まれる。
その揺れがせつなさだ
せつなさはいつも揺れている
僕の目の前で
僕たちの目の前で
そして僕たちの背後で

接合、という言葉が好きだ
組木細工のように
合わさって、繋がって
僕たちは落ち続ける雫のようだ
揺れるひとつの魂になるのだ
そしてその
揺れが見たいんだ
ぴったりと合わさった
魂が見たいんだ
消えていく運命が
僕たちをなぞらえるなら
その運命に
祝福を受けるんだ
その運命に
祝福を授けるんだ
それがセックスだ
僕たちはそこにいるんだ
たとえ魂が消えてしまっても
腕の痺れを残していくんだ




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