即興詩置き場。

2003年11月25日(火) 動物園



動物園



<パンダ禁止>

薄汚れた白と汚れの見えない黒でできている
パンダになることは禁止されている
パンダであることは禁止されていないので
檻に入って、笹などを食んでいる



<しまうま反対>

しまうまの権利は既得権益であると
デモ隊が表現の自由を掲げて息巻いている
もうすっかり
白黒ついているというのに



<ライオンばんざい>

ライオンは寝ている
酔っ払いサラリーマンの理想としてライオンはあり、賛美され、
雄は雌が餌を持ってくるのを待ちながら寝ている
ライオンの生活形式はすべての酔っ払いサラリーマンに愛されている



<見守るゴリラ>

ゴリラは永世中立である
ゴリラの永世中立はその容姿において保たれている
誰もが怖がってゴリラに近づこうとしない
ゴリラも近づかない
バナナがあればバナナを食べる
バナナがなければ別のものを食べる



<キリンしか見えない>

臆病なほど
首が長くなる
臆病なキリンはあたりを見渡すと同時に
あたりから見渡されていることに気づかない
細い細い超高層ビルたち
遠く遠く離れた場所では
キリンが動物園の目印となる
キリンしか見えない
皆、キリンを目指してやってくる




2003年11月14日(金) 以外の、


以外の、



おとなしく
血を流していると
罰当たりと呼ばれて
血がさらに
累々と垂れる
骨の泣く音がする

どうしたってそれは
宇宙、と呼ばれる、あるいは歌、と呼ばれる、もしくは私、と呼ばれるもの
を、(「を」はかわいそうだと思う 風に千切られる直前の 木の葉のようだと思う)
秋の気配の中に、呼ばれない言葉で、声にならない言葉、というもので巻き取られた
累々と垂れる血と泣く骨、以外の、肉だ。


苦しい。 苦しい。 苦しい。 肉は狂おしい。











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アクロスティックです。




2003年11月10日(月) 40.小指の爪


小指の爪


小指の爪は
ときどき泣いているが
誰にも気づかれない
ことに泣いているのではなく

誰にも気づかれないことに泣くのは
もっと大きなものだ

小指の爪はときどき
小指の爪でなくなる
誰も見ていないときに
よくなる

親指の爪のことはよく知らない
小指の爪が好きだ

小指の爪は
自分の名前が欲しい
小指がなければ
小指の爪もない
小指の爪は小指に属している らしい

上腕二頭筋みたいな
おおげさな名前はいらない

何かの役に立つことは恥かしいと思っている
何かの役に立つことは恥かしいことだと以前
鼻クソが言ったのを真に受けている
小指の爪は
他に友達を知らない




2003年11月04日(火) 39.オムライス



オムライス


オムライスの作り方をよく知らない
卵を使うそうだ
ちなみに卵と玉子
どう違うのかよく知らない

知らないことが多くて
怖い
怖い
と言っても始まらないので作る
失敗する
失敗することは怖くない
失敗すると知っているから

卵混ぜご飯ケチャップ風に限りなく近いオムライスの
境界について考える
ミリ単位の
あるいはパーセンテージの世界で
オムライス
と宣言してみる
オムライスになる
それはオムライスになる
味は保障しない





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