DEAD OR BASEBALL!

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Vol.113 2002年ドラフト総括(日本ハム編)
2002年11月30日(土)

 今期首位打者を獲得した小笠原ばかりがクローズアップされるが、力そのものは決して低くないチームだと思う。ビッグバン打線のイメージが残影のようにチラつくが、今の日本ハムは機動力と投手力を押し出すチームに変貌するまでの過渡期にあり、ここをうまく乗り切れば2〜3年後の上位復権は現実的に想像可能。そういうイメージが涌きにくいのは、ここ数年で主力の顔触れがガラリと変わりつつある為で、本社の不祥事によるイメージダウンの為ではないと思う。



 かつての3本柱である岩本、関根、下柳のうち、下柳が阪神へのトレードで球団を去り、岩本と関根は今後も戦力として考えるのが難しくなってきた。しかし安定感ある金村、新人王の正田が規定投球回数に達し左右の両輪を形成し、シールバックも規定投球回数到達で勝ち越し。先発転向1年目のミラバルは前半獅子奮迅の快投を重ね、隼人もローテーション投手として機能。正田22歳の若さが円熟期を迎えつつあるローテーションを若々しく見せるのだから、この構成自体は地味だがなかなかのものがある。

 弱いと見られがちなリリーフも、佐々木の足踏みが気になる程度で悪くない顔触れ。軸が固まらない中で建山と芝草が終盤を締め、井場も3点台後半の防御率の割に被安打と奪三振は圧倒的な数字を残し、来期のクローザー固定は現実的な視野。これに江尻や山口、伊達の参入があれば厚みも出てくる。

 確かに悪くないのだが、落ち付いて見てみれば絶対的な軸がいないことに気付く。1巡目指名では予想を覆し高井の指名から撤退したが、高井レベルの超大物の存在は今の日本ハムに不可欠。金村や隼人はエースとして見るには苦しい存在だが、2〜4番手ぐらいのローテーション投手なら途端に輝いてくる投手。高井がエースとして活躍できる現実的な算段は1〜2年後。その頃はまだ今のローテーションは充分機能できる。鎌倉は完全に将来を睨んだ人材で、武田は恐らく中継ぎのテコ入れ。自由枠を行使しなかったのなら、残った超大物は高井のみ。高井の抽選を外した後でも尾崎には向かえたと思ったのだが。

 金村の故障がちな体質を考えれば、即戦力で先発を任せられる投手の指名が一人ぐらいあってもよかったかも。候補は三東洋(ヤマハ→阪神6巡目)、酒井泰志(いすゞ自動車→ロッテ7巡目)、堤内健(日本大→横浜9巡目)というところ。館山昌平(日本大→ヤクルト3巡目)が上位で獲れたら最高だったのだが。



 小笠原の存在が抜けている野手陣だが、ここ数年でビッグバン打線の様相はガラリと変わり、今は重量打線から機動力野球に転換する端境期。フランクリン、ウィルソン、オバンドー、片岡が抜けたオーダーを眺めると、つくづくビッグバン打線というものは外国人の力に頼ってきた打線。それはそのまま耐用年数の短い打線ということを表し、ここ2年の低迷は外国人に中軸を任せてきたツケが出たもの。田中幸の衰えも考えなければならない以上、小笠原の神通力に“ビッグバン打線”の冠名を委ねたところで看板倒れは免れない。

 捕手(實松)、一塁(小笠原)、二塁(金子)以外のポジションはどこも流動的。内野は田中賢、外野は森本という赤丸の期待株がいるが共に殻を破れず、内野の木元、奈良原、阿久根、古城に爆発力は期待薄。坪井の加入は外野陣に大きな刺激を与えるが、安定感に乏しい井出、上田、石本、クローマーでは誰一人レギュラーがいない状態と言ってもいいぐらい。

 人はいるがポジションが埋まらない状況というのは、チームが端境期にドップリとハマりこんでいる時がほとんど。この中で重点補強ポイントは、極端に若さのない外野とポスト片岡が埋まらない大物三塁手、そして實松以外に頼れる選手のいなくなった捕手と、細かいところで山積している状態。尾崎はもしかしたら外野で使われることがあるかも。

 5巡目より下でバランスよく選手を指名したのは、なかなか巧い指名だと思う。小谷野は守備より打撃に持ち味があるタイプで、パワーが増せば田中幸の後継三塁手として意外に早く出番が回ってくるかも。紺田も今の手薄な外野陣なら充分割って入る余地はある上、スピード感は森本に劣らないレベル。池田は小笠原安泰の一塁手だが時間がかかりそうなタイプで、年齢差11歳ならいいタイミング。鶴岡はオバンドーの後の指名打者候補なのか、それとも捕手強化なのか、ちょっと読めないところ。

 これで高井が獲れていたら……という指名ではある。ややこまごまとした印象はあるが、取り敢えず手当てするべきところに手は打ったかなという感じ。悪くない指名であったが、チーム事情もドラフトも「悪くない」「そこそこ」の段階から脱せないことが心配になる。札幌移転を機に田中賢や森本の本格化が実現しれば、「そこそこ」から脱せそうな気もするが、特にフロントはもっともっと貪欲になってもいい。


日本ハム
1巡 尾崎 匡哉 遊撃手 報徳学園 右右 181・73 総合力抜群、華のある大型ショート。投手も器用にこなせる均整の取れた柔軟な体で、崩れても強い送球を送れる力強さ。甲子園で特大バックスクリーン弾を打った打力に長足の進歩。
3巡 鎌倉 健 投 手 川之江 右右 189・80 今夏甲子園を大いに涌かせた快速大型サイドハンド。内外角に投げ分けるコントロールと出所の見にくさ、ベースの角を切り取るようなスライダーの斬れ味に凄味。
4巡 武田 久 投 手 日本通運 右左 170・68 140km台前半と驚くほどの速さはないが低目のコントロールが抜群で、フォークも交えて低目で出し入れできる安定感。
5巡 小谷野 栄一 二塁手 創価大 右右 177・83 大学選手権であの和田毅(早稲田大→ダイエー自由枠)から4安打を放ち注目を集めた。軸を崩されない抜群のミートセンスが光る。
6巡 紺田 敏正 外野手 国士舘大 右左 183・78 大学2年に投手から外野手に転向と野手経験は浅いが、50m5秒台の快足と肩の強さは東都リーグでも出色の存在だった。3年秋に首位打者を獲得した打力もシュア。
7巡 池田 剛基 一塁手 鵡川 左左 184・90 堂々たる体格から漂う風格は大物スラッガーの色。北海道トップクラスの長打力と馬力はプロでも遜色ないレベルだが、緩急に脆い弱点をどう克服するか。
8巡 鶴岡 慎也 捕 手 三菱重工横浜硬式野球C 右右 175・73 高校時代から強肩で注目されていたが、パンチ力とシュアに捕らえられる打力を生かして社会人では主に指名打者だった。
Vol.112 2002年ドラフト総括(ロッテ編)
2002年11月29日(金)

 毎年のシーズン前ではここ数年ずっと「台風の目」に挙げられるロッテだが、「台風の目」から抜け出せない現状は一言で言って停滞傾向。そこそこの戦力から抜け出せないからには、ファームからの輩出かドラフト、どちらかで劇的な効果が欲しいところ。



 投手力は悪くない。エース黒木知が長期離脱で1試合も登板がない中、ミンチー、清水直、加藤の3人が規定投球回数に達し、揃って二ケタ勝利。シコースキー、小林宏、川井が勢い溢れる中継ぎを形成し、小林雅が33連続SPという絶対的な働きで終盤を締める。中盤のパターンは西武に負けない磐石さを誇った今年のロッテ。

 小野や渡辺俊の低迷が、勝ち星を上積みできなかった要因。今年の3本柱の星勘定を計算すると40勝40敗でプラマイゼロ、ローテーションを1年守った働きは評価できるにしても、そこから貯金を作り出せる先発が何人か出てこない限り、ロッテが「台風の目」から抜け出すことは難しい。高木、薮田、長崎の先発繰り上げがあっても貯金は望めず、黒木知と小野の先発ローテーション復帰はAクラスへの命綱。

 それが望めないならば、トレードかドラフトで即戦力の投手を獲得して層を分厚くするしかない。トレードの目が波留や垣内に向いた以上、手段はドラフトになるのが自然な考え方。ただ、難しいのは黒木知や小野が先発に復帰できた場合は即戦力投手が余剰戦力になる目もあるということで、黒木知の存在の大きさが戦力編成の判断を難しくしているのも恐らく事実。

 地元の逸材である浅間を上位で獲得し、下位で即戦力投手を3人獲得したのはベターな判断というところだが、高校卒2人に即戦力2名の指名でもよかった気がする。元々ロッテのファームには高校卒投手の数自体が少なく、小林宏を除けば田中良1人が突出して若いというイビツな構成。この若さ枯渇寸前の状態に浅間1人では若さは注入しきれない。即戦力3人の活躍の場は黒木知、小野の復帰があれば途端に狭められる状況で、中継ぎにも入れるか微妙なところ。トータルで見れば充実期に近い投手陣だからこそ、高校生投手の指名がもう1人はあってよかったかも。



 野手に目を向ければ、とにかく現有戦力では絶対数自体足りないというのが正直なところ。明るい材料を探せばサブローが規定打席到達でようやく一人立ちというぐらいで、前年首位打者の福浦、遊撃職人小坂の成績も右肩下がりとかんばしくない。致命的なのは長距離砲の不足で、ボーリックや初芝の耐用年数を迎えるまでに新たな主砲を準備できなかったという印象。メイの23本塁打90打点がやけに目立つ現状は、得点力不足が慢性化しつつある状況を描き出す。元横浜ローズの獲得も爆弾要素が強く、信頼できるか怪しさが拭えない。

 次代の備えがファームにいない訳ではない。外野手転向を果たした寺本を筆頭に、喜多、今江というのが候補だが、澤井、渡辺正のドラ1コンビが全く殻を破れず、大塚、立川が若手と言える年齢をとっくに脱した現在、ロッテのファームに活気があるのか本当に疑問。ファームでの足踏み期間が長い上に、一軍の野手陣、特に主軸の年齢層が上がっている現状を考えれば、即戦力・高校生問わず野手はいくら獲ってもいいのでは?という感覚になる。

 ファームに素質豊かな高校生を多数送り込んで活気を戻し、一軍にも即効性の戦力を注入して若手輩出まで戦力をもたせる。こういう時期のドラフトは本当に難しいが、高校生野手3人の指名は少な過ぎる気がする。西岡の1巡目指名は昨年の今江に続く高校生野手上位指名で、ロッテフロントの意気込みを感じる指名ではある。若さ不足とレギュラー不在の捕手陣に金沢を送り込む指名も理に適ってはいるが、それでも少ないというのが正直な感覚。

 早坂を含めた3人をファームに送る計画かも知れないが、西岡は高校生でもかなり早い時期に一軍でやれるポテンシャルがある。こういう選手は1軍に置いてバシバシ鍛えた方が伸び率が高いのだが、ローズが来る以上はファームでの熟成期間を課せられる。確かにファームの刺激剤としては納得できるが、ローズ、波留、垣内の獲得が一軍に恵みと若手抜擢までの時間的猶予をもたらすか、ちょっと危ない。

 鞘師智也(東海大→広島4巡目)、紺田敏正(国士舘大→日本ハム6巡目)、竹原直隆(城西大)、平石洋介(同志社大)は若さの欠けつつある外野に活気を与える好素材で、特に鞘士と竹原の長打力は今のロッテには旨味のある戦力。地元千葉の長田昌浩(東海大望洋→巨人4巡目)、瑞慶山浩士(所沢商)ら高校生長距離砲の総獲り計画は面白かったかも。若さと即効性を同時に要する難しいドラフトだったのは確かだが、野手より投手の方が指名人数の多かったことにはちょっと疑問符がつく気も。            


ロッテ
1巡 西岡 剛 二塁手 大阪桐蔭 右左 180・75 回転軸が全くブレないスイングは力強く、金属バットの反発力に頼った打ち方をしていないのですぐにプロのバッティングに移行できる筈。大きなストライドで魅せる走塁に強いスナップスロー、高レベルで三拍子。
3巡 浅間 敬太 投 手 敬愛学園 左左 177・75 腕の振りが抜群で、とにかく投球フォームが美しい。肘のしなり、膝の送り方、体重移動とフォームにケチをつける要素がほとんどなく、左右の違いがあれど中里(中日)級のセンス。縦のカーブにスライダーのキレ、制球力も◎。
4巡 神田 義英 投 手 川崎製鉄水島 右右 179・72 高校時代からピッチングの斬れ味には定評があった。鋭いスライダーとフォークを駆使してなかなか崩れないしたたかさ。
5巡 鈴木 貴志 投 手 王子製紙 左左 176・73 球持ちの長いMAX143kmのストレートは球速以上に打ちづらい。速い腕の振りから投げ分けるスライダーも強烈な武器。
6巡 金沢 岳 捕 手 矢板中央 右左 178・72 抜群の地肩と柔軟な体捌きを兼ね備えた“動ける捕手”。俊足と振り抜けるヘッドスピードも持ち、外野手転向も一考の価値。
7巡 酒井 泰志 投 手 いすゞ自動車 右右 178・78 147kmの快速球にスライダーで攻める投球が持ち味だったが、社会人で覚えたフォークが意外にキレる。崩れないフォームの安定感◎。
8巡 早坂 圭介 遊撃手 横浜商工 右左 176・63 一言で言って野球センスの塊。軽快なフィールディング、俊足と一つ先の塁を常に窺う積極性、鋭いスイングと高次元で三拍子で高橋慶彦(元広島)を彷彿。
Vol.111 2002年ドラフト総括(ダイエー編)
2002年11月28日(木)

 過去4年の成績を見れば、日本一→リーグ優勝→2位→3位。上位安定と言えば聞こえはいいが、実際の感覚はだんだん勝ち切れない消化不良が先行するようになってきた。一言で言えば、右肩下がりのジリ貧状態。

 戦力的なバランスで言えばリーグトップクラスと言われながら、ここ2年は特にシーズンの山場での勝負弱さが目立つような気がする。戦力的に問題はないのだが、親会社のゴタゴタが浮上してきてから、チームの雰囲気にリーグ連覇を果たした時程の活気が薄れつつあるように思えることがある。まさか「勝ち慣れ」ということではないだろうから、空気が緩んでいるとしたら問題は根深いかも。



 投手陣の弱さがこの2年の突き抜けられない最大要因だと思うが、今年はさらに若田部がFAで横浜に移籍し、規定投球回数に到達した先発は田之上ただ1人になる。ラジオも退団し、クローザーのペドラザも抜け、普通の球団なら『大丈夫か?』となるところだが、全くそういう不安を感じさせない布陣が整っているのがダイエー投手陣の非凡なところ。

 星野と田之上を筆頭格にして、山田、杉内、小椋といった本格派投手が控え、怪腕寺原だって周囲の不安をよそに6勝を上げた。本格派の有望株がズラリと顔を揃えた先発陣に今年は大学球界No.1左腕の和田、沖縄産天然豪腕の新垣が入り、ポテンシャルと若さを備えた顔触れは12球団屈指のもの。中継ぎには復調の気配ある篠原を筆頭に、吉田、岡本、渡辺と若干高齢化を感じるが力量的に申し分ない。

 山村、松、田中総といったドラフト上位組の低迷が気にならないと言えば嘘だが、彼等が機能しない中でこれだけの先発陣を揃えられること自体、ダイエーがいかに貪欲なドラフトをしてきたかが分かる。岡本がクローザーに回るとやや中継ぎが手薄になるが、永井、飯島、倉野、水田でカバーは可能。

 溝口、田中をファームに送り、殻を破りきれない小椋やドラフト上位組にプレッシャーを与えることも忘れていない。「乱獲」「金持ちドラフト」などの批判も飛んでくるが、ここまで見事に戦力を構成されると文句を言う気も失せてくるというのが正直なところ。投手陣に関しては、マイナス要因を探せと言う方が難儀する。



 ここ数年ほぼ磐石なオーダーを組んできたダイエー野手陣だが、今期は磐石の主力が故障離脱したことで、逆に控え層との力量差を感じたのも事実。井口と城島が故障で長期戦線離脱し、秋山の引退が現実になったことで、そろそろ若返りの機運が高まり出してもいい頃。こうなると小久保、松中の慢性的な故障も気になり始めてくる。

 城島27歳、井口29歳、柴原29歳、松中30歳、鳥越32歳、小久保32歳だから、まだ危機的状況という年齢構成ではなく、むしろ円熟期。こういう時にこそ次代の備えをしておかないと、今年のように主力の戦線離脱が同時多発的に襲ってきた時に対処不能になる。円熟期にこそ慢心せずに着々と将来性重視の補強を重ねることが、長期政権を築くチームの補強戦略。

 幸いにもダイエーには川崎、吉本、田中瑞、中村、荒金、高橋ら期待の戦力は控えている。この中で川崎に一本立ちの気配があり、長年のアキレス腱だった遊撃の後継候補で一歩抜き出た感がある。

 ただ、冷静に考えてみれば長距離砲の後継が不足していることは気になるところ。吉本がその筆頭だが、足踏みが長く、「ポスト小久保」には程遠い現状。ドラフト1位で獲得した高校生長距離砲が低迷すると、その後のドラフト上位で同じようなタイプの選手に食指を伸ばさなくなるのが、ドラフト戦略の「悪しき伝統」。吉本に対する期待の大きさと言うより、高校生長距離砲の上位指名は吉本で懲りたという雰囲気が、ダイエーのフロントから漂っている気がする。

 城島に向こう10年弱は正捕手安泰の気配があり、城島が抜ければディフェンスに定評ある的場、代打の切り札的存在の坊西がいる。こういう球団が、高校生長距離砲に向かわずに大学No.1捕手の大野に向かう。この戦略はちょっと疑問。今のダイエーはとにかく素質豊かな次代の長距離砲が欲しい。

 九州だけ見渡しても、山本光将(熊本工→巨人5巡目)、千代永大輔(九州学院)、吉村裕基(東福岡→横浜5巡目)、川本竜二(創成館)ら逸材が目白押し。瀬間仲ノルベルト(日章学園→中日7巡目)は、外国人に頼らずにチーム作りができているダイエーが一本釣りするべきだった超目玉。



 ここ数年のダイエーのドラフト戦略は、「とにかくいい選手を獲る」「九州志向」という2点に尽きる。上位では豪腕を駆使してその年のトップクラスの選手を獲り、下位では九州に縁のある素質豊かな選手を片っ端から指名する。九州という豊穣な野球所を存分に生かした手法で、パイプの強さは目線と信念が間違っていなければ強力な武器になるという好例。

 だが、表向きは強力打線で弱い投手陣を支えたここ2〜3年だが、今補強すべきなのは次代の長距離砲のような気がしてならない。これはほとんどの球団に当てはまることではあるのだが、大砲をあまり上位で指名したがらないのが最近のドラフト。「理屈抜きにいい選手を獲る」がダイエーのドラフトなら、吉本に喝を入れる為にも高校生長距離砲の指名があってもよかった気がするのだが……。           


ダイエー
自由 新垣 渚 投 手 九州共立大 右右 188・85 全身故障だらけで、満足に1シーズンを投げたことがないのが不安要素。それでも150kmを投げられるのは素質の証明。まだまだ底を見せていない段階だが、意外にスライダーがキレる。
和田 毅 投 手 早稲田大 左左 179・74 秋季リーグで江川卓の持つ六大学通算奪三振443に挑む。全く打者にボールを見せない卓越した技術に凄み。腕の振りからボールが遅れて出てくる一瞬の間で打者に勝負をさせない、今年No.1左腕。
4巡 溝口 大樹 投 手 戸畑商 左左 177・75 昨夏に西日本短大付を破った左腕が1年で大きく飛躍。天性の肘の柔らかさから繰り出すMAX147kmのストレートはキレがあり、一躍高井(東北)に並ぶ高校生の目玉左腕に台頭。
5巡 大野 隆治 捕 手 日本大 右右 186・90 既に肩の強さと送球のスピードはプロでも上位レベル。大型の体に不釣合いな大人しい打撃は課題になるが、持ってる潜在能力は鍛える価値十二分。
6巡 森本 学 遊撃手 シダックス 右右 175・72 俗に言う三拍子タイプの遊撃手。軽いフットワークで見せる走塁・守備と大学時に首位打者経験のある打。
7巡 田中 直樹 投 手 沖学園 右右 178・72 体の線は細いが、肘の使い方が抜群に上手くよくしなる。全身のバネ抜群で、投げては145km、打てば抜群の長打力。運動能力の高さ◎で、投手か野手か。
8巡 稲嶺 誉 遊撃手 東農大生産学部 右左 170・66 闘志溢れるヘッドスライディングが持ち味。亀山(元阪神)や波留(ロッテ)を彷彿とさせる元気者。
Vol.110 2002年ドラフト総括(近鉄編)
2002年11月27日(水)

 優勝した昨年ほどの爆発力は、流石になりを潜めた感があった今年の近鉄。戦力的な上積みはほとんどなかったものの、その中で離れた2位とは言えAクラスをキープできたのは、優勝を経てしぶとさと地力を積んできたからだろう。まだ安定飛行とは言えないが、少なくとも以前のような「10かゼロか」という不安定さは薄れてきたように思える。

 しかし今オフの近鉄に訪れたのは、激震に続く激震。パを代表するクローザーの大塚がポスティングでのメジャー移籍を表明すれば、「いてまえ打線」の象徴中村 がFAでチームを去ることが99%決定的。さらに高村にメジャー移籍の可能性が残っている今、大袈裟でなくチームは大転換期を乗り越えなければならない時期にきている。



 3人の穴は1年で埋まるものではないが、埋める努力はしなければならない。中村が抜けるのは確かに痛いが、ローズという主砲が一本残り、吉岡、川口という長距離砲がいることを考えれば1〜2年は凌げる。こういう事情だから、今年のドラフトで欲しいのは即戦力投手。昨年規定投球回数に達したのが17勝で最多勝のパウエルと8勝の岩隈2人だけという現状、岡本がクローザーに回ったときの弱体化した中継ぎを考えれば、それは尚更。

 宮本、藤崎、松本という速球派、サウスポーの成長株である高木らに成長が見られるのは好材料だが、1年を任せられるかというと疑問府が付く。前川、門倉、小池、赤堀といった辺りに勢いが戻る気配がないので、岡本→大塚という勝ちパターンを失っただけで投手陣全体の陣容が崩れたような感覚さえもたらす。手を変え品を変えで凌ぐにしても、絶対数自体が足りないというのが正直な感想。

 ところが、フタを開けてみれば1巡目〜6巡目まで高校生の指名がズラリと並び、投手指名は阿部と宇都の2人。1巡目抽選に破れた高井と阿部は、高校生の中でも即戦力に近い完成度を持っていたが、下位指名でも大学・社会人投手の指名がなかったのはちょっと分からない。

 自由枠に決まっていなかった選手の中で、三東洋(ヤマハ→阪神6巡目)、中村泰広(日本IBM野洲→阪神4巡目)、福家大(JT)、渡邊恒樹(NTT東日本)、鈴木貴志(王子製紙→ロッテ5巡目)、奥本典文(ホンダ熊本)といった社会人勢、堤内健(日本大→横浜9巡目)、小出琢磨(関東学院大)、渡辺秀一(東北学院大)、河村健治(広島経済大)らは現実的に充分獲得可能だった選手。中村や大塚の退団を見越したドラフト戦略が立てられなかったのなら、それはフロントの完全な失策だと思うのだが。



 中村の穴は全員でも埋められるものではないが、それでも何とか格好を付けないとならない。現時点での構想は吉岡を三塁に回し、川口を一塁手で使うプラン。ローズを4番に据え、周囲を吉岡、川口、磯部で固めれば悪い陣容ではないが、求心力の物足りなさは解消できない。

 これはドラフトですぐどうなるものではない。現実的にはトレードや外国人補強でが時間を稼ぎつつ、ファームで次世代の大砲を育て上げるしかないが、ドラフト以前に大砲候補の吉川元と中濱をトレードで巨人に放出していることを考えれば、フロントにそういう危機意識はほぼゼロ。業務提携をしているドジャースから、ラソーダ氏経由で優良外国人を獲得することに期待をかけるしかない。

 7巡目以降で3人の外野手を指名したが、どの選手も打撃より守備走塁に力があるタイプで、「いてまえ打線」復権に適いそうなのは坂口、筧の高校生コンビというチグハグさ。上位で本当に指名したかったのは即戦力投手。こういう悪循環は一度ドツボにハマるとなかなか抜け出せない。

 高校生野手にしても、坂口や筧のようにまとまった中長距離砲タイプよりは、吉村裕基(東福岡→横浜5巡目)、山本光将(熊本工→巨人5巡目)のような超長距離砲タイプの方がチームカラーには合ってた気がする。2人とも打撃に相当クセがあるが、中村を育てた実績でも分かるように、クセを生かしつつ時間をかけて育て上げるのが近鉄ファームの伝統。

 捕手枯渇の状況も深刻で、正捕手不在の現状を見れば高校生捕手2人の指名ではとても間に合わない。水口の衰えで決め手に欠ける二遊間も手当てが急務なのに、そんなことには目もくれず素材重視で高校生を獲った今年の近鉄。「迷ったらポジションに関係無く1番いい選手を獲れ」というのはドラフトの鉄則だが、今年の近鉄は現状無視の暴走に近い感覚。阪神と近鉄の指名が入れ替われば……と、なんとなく感じてしまう。                      


近 鉄
1巡坂口 智隆 外野手 神戸国際大付 右左 181・75 MAX140km、50m6秒0の俊足に遠投110mと運動能力は折り紙付き。コンパクトに振り抜ける鋭い打撃も持ち、投手から外野手転向は確実。
3巡 筧 裕次郎 捕 手 明徳義塾 右左 173・65 サインを出すタイミングや返球のリズムが良く、投手にとっては非常に投げ易そうな捕手。軸が崩れず直球・変化球に崩されない打力と50m6秒1の俊足は野手でも惜しいが。
4巡 阿部 健太 投 手 松山商 右左 183・70 フォームのバランスが良く、簡単に崩されない完成度と内角を攻められる制球力は高校生屈指。指先の感覚が非常に鋭く、抜け球の無い安定感◎。昨夏甲子園であっさり出した147kmはまだ伸びる
5巡 宇都 格 投 手 川内 右右 188・71 運動能力・バランス感覚は先輩・木佐貫の上を行く。球筋自体はまだ特別秀でたものがないが、長身も合わせて素材自体は屈指で鍛えられればどこまで伸びるか。
6巡 横山 徹也 捕 手 福知山成美高 右右 176・72 全国区には縁が無かったが強肩を目を引くレベル。ややドアスイング傾向があるが、踏み込んでからリストを利かせて運ぶ長打力も出色。
7巡 大西 宏明 外野手 近畿大 右右 178・77 観客の目を引きつける鉄壁の外野守備と超鉄砲肩はプロでもおひねりが飛ぶ武器。2年春季に首位打者も、荒さの残る打撃にヤスリがかけららればプロでも1番センター。
8巡 下山 真二 外野手 日本生命 右右 175・77 26歳のプロ入りだが俊足を生かした外野守備は若さを感じる。長打力も社会人の外野手では屈指のレベル。
9巡 井戸 伸年 外野手 元住友金属鹿島 右両 180・80 昨期はホワイトソックス参加のマイナー所属。俊足と広角打法が持ち味の核弾頭タイプ。
Vol.109 2002年ドラフト総括(西武編)
2002年11月26日(火)

 日本シリーズでは巨人によもやの4タテを食らったが、シーズンで90勝の白星を重ねた栄光が色褪せた訳ではない。一言で言えば充実期を迎えた今年の西武だが、実際には安穏とできる状況ではないのも事実。充実期ということは目の前に下降期が来ているということで、この時期のドラフトを甘く見る球団は大抵急坂を転がるように戦力が落ちていく。



 12球団トップの投手陣を抱えていることは、誰もが認めるように間違いない。昨年も書いたが、期待株・主力・ベテランの年齢構成が高い次元で整っているのだ。

 今年は故障もあり散々だった松坂(23歳)だが、体調充分なら強力な戦力になることは間違いない。松坂の穴を完璧に埋めた張(23歳)、安定感ある投球の許(27歳)の3人が20歳台の先発で、西口(31歳)、石井(32歳)、三井(30歳)もまだまだ老け込む年ではない。リリーフの豊田(32歳)、潮崎(35歳)、水尾(35歳)、デニーのトレードを考えればやや高齢化の影も差してきたが、青木勇(26歳)、土肥(27歳)、後藤(29歳)、森(29歳)の勢いと布陣は完璧の一言。ファームには真山(22歳)、大沼(24歳)、鳥谷部(24歳)、星野(26歳)という速球派が控え、どこをどう見ても穴が無いというのが現在の西武投手陣。

 こういう状況では高校生投手を獲得して、次代の競争を活性化させるのがフロントの役割。ファーム組が殻を破れないまま主力が高齢化していくという最悪の状況を想定するなら、積極的に高校生投手を獲得してファームに緊張感を与えることが肝要。それを考えれば、長田、小野寺というバリバリ即戦力2名の獲得は、西武にとっても2人にとっても恵みをもたらすか疑問。

 長田はストレートの伸びとコントロールの良さに加えて、2種類のスライダーのキレ味も充分に一軍レベル。小野寺は無名の関甲新学生リーグ所属ながら、完封を続けてきた完投能力と安定感は全国トップクラスの実力。それでもこの2人が現在の西武投手陣に食い込むことは容易ではない。今年ファームで11勝を稼ぎ、すでに下では別格の存在になった一昨年のドラ1右腕大沼も、今年の一軍登板はわずか5試合。恐らく2人とも中継ぎかファームスタートが待っているが、実績ゼロから始まる彼らのプロ生活が軌道に乗るか本当に心配になる。正直に言えば現在では余剰戦力になる可能性が高く、相思相愛だったとは言え「マズい球団に入ったな」という印象。

 不足気味の先発左腕を強化する意味でも、高校生左腕の獲得に向かうべきだったと思う。高井雄平(東北→ヤクルト1巡目)の競合参加はもちろん、田村領平(市和歌山商→阪神8巡目)、溝口大樹(戸畑商→ダイエー4巡目)、長峰昌司(水戸商→中日5巡目)、廣田佳史(東海大浦安)辺りは現実的に獲得可能だった選手。貪欲と言うよりも飽食と言った方が近い即戦力投手2名の獲得で、球団の危機管理に一抹の不安を感じる。



 野手陣も投手陣と同様のことが言える。確かに今年の戦力は万全だったし、脇役を入れ替わり立ち代わり起用した伊原監督の選手起用も磐石だった。しかし冷静になって考えれば、安泰どころか大地殻変動一歩手前という印象すら受ける今年の西武のオーダー。少なくともこの布陣は短命に終わる可能性の高い布陣である。

 最大のネックは若さがないこと。20歳台のレギュラーは小関(27歳)、松井(28歳)のみで、共に若手と言える年齢を遥かに超えている。和田の大化けという要素もあったが、カブレラという超強力な主砲を中心に据え続けられたことが打線の好循環最大の要因。しかし、カブレラの米球界復帰と松井のメジャー移籍は、近い将来に訪れうる極めて現実的な未来。

 カブレラと松井の抜けたオーダーを想像すると、得点力の低下は飛車角落ちでは済まないレベル。ファームには中村(20歳)、中島裕(21歳)、大島(22歳)、高山(22歳)、赤田(23歳)と長距離砲候補の高校卒選手が内外野に揃い、今年はそこに後藤が加わる。長年正捕手を張ってきた伊東の後継には細川、野田という捕手が育ちつつあり、一見すれば備えは磐石なように見えるが、長距離砲候補の選手の成長がとにかく遅い!

 バッティングに剛柔備えた器用さがある大島、パワーやスピード感ともに「ポスト松井」の太鼓判を押せる中島裕に期待は持てるが、高山と赤田は揃って優れた身体能力を持ちながらバッティングで分厚いカベに苦しみ続け、中村と後藤は打撃以外のセールスポイントが無い状態。マクレーンの残留は後藤が1年目から活躍できる選手ではないという西武フロントの判断だが、ドアスイングを矯正しない限り後藤は売り物のバッティングでも苦戦しそうで、フロントの判断はこういう部分だけ現実的。

 彼等に奮起を促す為には、ファームに高校生野手の逸材を送り込んで競争を活性化させるという荒療治しかない。特に手当てが急務なのは二遊間で、自由枠を使った以上は尾崎匡哉(報徳学園→日本ハム1巡目)、西岡剛(大阪桐蔭→ロッテ1巡目)、長田昌浩(東海大望洋→巨人4巡目)、森岡良介(明徳義塾→中日1巡目)という高校トップクラスの二遊間は補強できないにしても、岩崎達郎(横浜商大高)、千代永大輔(九州学院)、岡地篤志(中越)、吉川淳一(初芝)辺りはあってもよかった指名。

 指名打者と中堅手が日替わり定食のようだった現状を考えれば、特に外野守備の即戦力もほしかったところ。鞘師智也(東海大→広島4巡目)は、守備力だけでなくバッティングも磨けば和田レベルのパンチ力を持つ万能型。大友の低迷、垣内のトレード、清水の引退を見渡せば、外野手の指名も一人は欲しかったが……。


西 武
自由 長田 秀一郎 投 手 慶応大 右右 178・75 高校時(鎌倉学園)から既に144kmを投げていた本格派。投手として非常にまとまりがよく、全体的なコントロールやフィールディングの良さ◎。2種類のスライダーとチェンジアップを混ぜながら、今春の東大戦では21奪三振。
後藤 武敏 一塁手 法政大 右右 176・88 高校時(横浜)からリストが非常に柔軟で、ヘッドが使える長所で飛ばしていたスラッガーだが、それに頼り過ぎて体が開く今の打撃だと苦労しそう。守備・走塁に長所が乏しいのも気になるが……。
4巡 小野寺 力 投 手 常磐大 右右 187・82 投手としての完成度が非常に高い割に、投手としての底も見せていない好素材。ヒジがよくしなり、無駄の無いコンパクトなテークバックで打者にボールを見せず、糸を引くようなストレートが低めで伸びる。2種類のSFFも強烈な武器。
5巡 春日 伸介 捕 手 田辺 右右 183・91 春にチームをベスト4に導いた抜群の打撃センスを生かして内野手に転向か。
6巡 上本 達之 捕 手 協和発酵 右左 186・75 強肩捕手だが、むしろ持ち味は打撃。駒田(元横浜)のようなタイプで、大きいのも放てば巧く拾って一、二塁間を抜く起用さがある。
Vol.108 2002年ドラフト総括(横浜編)
2002年11月25日(月)

 両リーグワーストの勝率.363、投打あらゆる部門の数字で5〜6位という数字を見ても分かるように、とにかくいい材料がほとんどなかった今年の横浜。森監督が1年の任期を残して解任され、ペタジーニの獲得合戦にもあっさりと敗退。98年にマシンガン打線と大魔神佐々木という金看板で日本一になった球団が、この4年で信じられないほどに没落した。

 この現状を引き継いだのが山下新監督だが、これだけチームが崩れればかえってチーム作りはしやすいと思う。幸いにも横浜には横須賀で力を蓄えている素質豊かな高校卒選手がゴロゴロし、昨年の首脳陣もチームが早々とペナント争いから脱落したことで、若手の起用に躊躇わなかった。確かに厳しい現状だが、若手主体で新たなチームの体制を整えるにはいい時期だし、かえって面白い時期に山下新監督は就任したと思う。



 先発投手陣で規定投球回数に到達したのは、ヤクルトの石川と新人王を争った吉見11勝のみ。開幕投手の三浦がケガで離脱し、川村に復帰のメドが立たなくなると、後は雪崩式でローテーションが崩壊。バワーズ、ホルト、グスマンの外国人トリオは主戦級の働きをしたが、外国人枠の問題や打線の援護がないことで数字が伴わず、来期の去就は読めない状態。

 この状況を逆手にとるなら、若手にとってはチャンスがゴロゴロ転がっていると考えることができる。1年目の秦と千葉が揃って1軍のマウンドを踏み、2年目の東は中継ぎでイキのいいストレートを披露。同じく2年目の後藤はまとまりのあるオトナのピッチングを見せて、この中で秦、東、後藤の3人がプロ初勝利。

 投球内容を考えれば、この4人に来年も過剰な期待を寄せるのは酷というもの。しかし、チームの現状は1枚でも2枚でも選手が欲しいところというのが偽らざる思い。期待されていた速球派の神田が解雇され(不可解!)、横山、矢野、谷口の停滞、中野渡と木塚の故障離脱、さらにクローザー斉藤のメジャー移籍まで考えれば、やるしかないという苦しい事情。

 21歳以下の未完成な戦力に期待値をかけなければならない以上、即戦力補強だって何枚もほしいところ。土居と堤内は150km近いストレートと鋭いスライダーを武器にする本格派で、今の横浜投手陣を考えれば開幕からローテーションに入ってもおかしくない力量を持っている。加藤は木塚同様ストレートのキレ味で勝負できるサイドスローで、斉藤の抜けたリリーフ陣をどこまで支えられるか。横須賀には長身左腕の飯田を送り、ファーム輩出型の伝統を継続することも忘れていない。

 三浦、吉見、若田部までがローテーション確定組。次候補が土居と堤内、そして外国人トリオになるが、土居や堤内がある程度の結果を残せば、福盛、森中、河原といったもう一つ突き抜けてこない中継ぎ陣への活性力になる。土居と堤内は1年目から活躍できる球団に入ったが、それだけの期待と責任を負わされる存在だということも意識していてほしい。勝負はいきなり1年目。



 3割を打った打者が1人もおらず、規定打席到達者もロドリゲスと種田2人のみ。マシンガン打線の完全崩壊は投手以上に散々な状況を示しているように見えるが、シーズン終盤で台頭した古木の活躍は周りが考えている以上に大きい。中軸を打つ打者が決まれば、あとの枝葉は半ば自動的に埋まっていくからだ。

 わずか1ヶ月で9本塁打を打った成長力は見事の一言。.320の打率も申し分無く、インターコンチ杯という国際舞台でも大爆発し、完全に自分の打撃を掴んだ感がある。悪癖であった小さく当てにいく打撃が完全に影を潜め、どんなボールにも対応できる万全のトップの形を固めた。首位打者を獲得した福留と同じ進化だが、福留を大きく上回る成長スピードは、七野、小池、田中充、内川、金城らを大きく刺激する筈。当然、若手抜擢の機運も高まる。

 ポジションが固まっているのは、遊撃(石井琢)、三塁(古木)、左翼(鈴木尚)のみで、金城の二塁コンバートも含めてポジションはかなり流動的な状況。だが古木の台頭で、少なくとも若手に優先的にチャンスが与えられる環境は整っていると見る。選手の絶対数が少ない中でポジションが流動的ならマイナスにしかならないが、ある程度選手がいる中で流動的なら、競争激化で一気に選手層の底辺が持ち上がる可能性だってある。

 ここにドラフトで獲得した選手が加わる。自由枠入団の村田は三塁手で古木とポジションが重なるが、古木のポジションを動かしたくないことを考えると村田の行き場所は一塁が妥当。北川と木村は金城との競争になるが、内野の控えが小川や種田という高齢化している現状を見れば、チャンスは十分に転がっている。外野手の河野も小池や南と激しいポジション争いが待っている。吉村は次代の長距離砲の期待を背負って、内川や石井義と横須賀にて切磋琢磨。円熟期を迎えたチームで過度の競争は磐石の強さを奪うが、発展途上のチームなら激しい競争はチーム全体を底上げする。



 一言で言って、全てのポジション・全ての世代で貪欲な獲得をしたなという横浜のドラフト。補強ポイントがあらゆる部分に出ているだけに、これだけの選手を獲得しても1年で弱点を解消することはできないが、獲れる逸材は片っ端から頂こうという姿勢は見えてくる。これは横浜のスカウトが極端な高校生路線から現実モードに移行しつつある兆候。

 中村の耐用年数が限界に近付き、相川や鶴岡に一人立ちする気配が見えない以上、即戦力捕手の指名がなかったのは唯一の不満。昨年3巡目指名の小田嶋は今やファームの三塁手で、打撃評価で獲得した捕手の育成の難しさを図らずも証明した格好。大野隆治(日本大→ダイエー5巡目)は上位なら簡単に食い込めたディフェンス型捕手で、向かわなかったのは大野の地元志向があった為だろうが、ならば那須義行(三菱重工名古屋)、松谷基央(JR四国)といった社会人捕手に食い込む手もあった筈。

 正捕手が固まらないチームは上位にこないというのが近年の常識。来年も中村でいくのだろうか。人材自体が不足気味なのだから、刺激策があっても良かったのではと思う。


横 浜
自由 村田 修一 三塁手 日本大 右右 177・78 通算本塁打歴代2位、神宮球場の上段まで運ぶ長打力を持つ、今年の大学生トップクラスのスラッガー。苦しいカウントでは軽打に切り替え、厳しいボールはカットでなくライト前で逃げられる技術。
土居 龍太郎 投 手 法政大 右右 182・78 上体開いて投げるフォームは故障心配だが、その割にはなかなかヒジが出てこないのでタイミングは合わせ辛い。真横に滑る高速スライダーは伊藤智仁(ヤクルト)を彷彿。
4巡 加藤 武治 投 手 三菱ふそう川崎 右右 186・81 147kmの剛球を操るサイドハンド。グイグイ押してきたかと思えばフッと抜く投球勘も鋭い。
5巡 吉村 裕基 遊撃手 東福岡 右右 181・5 背筋のピンと伸びた構えには一点の隙も無し。引き手が非常に強く、振り抜けるスイングの速さはスラッガーの色気がムンムン。意外に器用で、遊撃転向もこなせるセンス。
6巡 北川 利之 遊撃手 川鉄水島 右左 174・74 インターコンチ杯では二塁を守っていた全日本の常連。深い位置から簡単に殺せる強肩と柔らかいグラブ捌き、柔軟なリストワークで確実にミートする打力は貫禄漂う。
7巡 飯田 龍一郎 投 手 育英 左左 185・73 腕の振りが鋭くカーブがキレるが、踏み込みが弱く力を持て余しているのが惜しい。体重移動を一つ覚えれば大化けの可能性。
8巡 河野 友軌 外野手 法政大 右左 175・77 存在は地味だが、高校時(狭山清陵高)は埼玉県下No.1のスラッガーだった。捕手もこなせる器用さあり、強肩。
9巡 堤内 健 投 手 日本大 右右 184・78 148kmの快速右腕がこの順位で取れたのは超お買い得。肘が前に出るようになり、直球もスライダーも格段の進歩を見せて一躍プロの対象に。今秋専大とのリーグ戦で1試合18奪三振。
10巡 武山 信吾 捕 手 享栄 右右 178・79 二塁送球のレベルは今年の高校生捕手の中でトップクラス。強肩に加えて、取ってから投げるまでの動きに速さとキレがある。課題の打撃も夏に一皮剥けた感があり、伸び代の大きさは買い材料。
10巡 木村 省吾 遊撃手 愛知学院大 右左 181・75 スピード感溢れるフィールディングに華がある。ただ堅実なだけでなく、巧さと力強さを兼ね備えたリズム。リーグ戦で120m飛ばした長打力に磨きがかかれば。
Vol.107 2002年ドラフト総括(広島編)
2002年11月24日(日)

 素材重視のドラフト戦略と、それを促進するファームの指導力が広島の持ち味である。ドラフトでは極力マネーゲームに参加せず、FA宣言した選手の残留は認めず、12球団一と言われる猛練習で素質豊かな高校生を中心に輩出する。緒方や前田が広島の象徴的選手になっているのは、彼等がドラフト下位指名の高校生選手だったからだと思う。

 現在のプロ野球においては、逆行するチーム運営の仕方かも知れない。マネーゲームに参加できないという資金力の問題は確かにある。しかし、私はこの広島のやり方には好感を持っている。昨年も書いたが、ファームとスカウトが正常に機能すれば資金力がなくても強いチームを作れるということを、広島は今の球界に示す責務を担っている。個人的には頑張って欲しい球団の一つだ。



 今年のシーズン前、私は広島の先発陣はセ・リーグでトップクラスだと評した。完投能力の高い本格派がズラリと並んだ布陣は、毎年言われている中継ぎ・抑えの弱さを差し引いてもプラスに持っていける投手陣。だがフタを開けてみれば長谷川13勝(10敗)、高橋9勝(14敗)、黒田10勝(10敗)、佐々岡8勝(9敗)と4人が規定投球回数に達したものの、4人の勝ち負けを足すと−3と借金状態。その後ろを固める横山は例年通り故障でリタイア、河内も足踏み状態が続いている。これで今年も中継ぎが左を中心に枯渇状態なら、5位という成績もやむなしというところ。

 救いは5勝を稼いだ苫米地の存在ぐらいだが、ファームに目を向ければ玉山、横松、大竹という期待株も揃っている。黒田という軸がいるのだから、若い横山や河内が一皮剥けてくれれば悪い陣容どころか、かなり揃ったメンバーになるという点は去年と同じ。裏を返せば毎年一定の水準に達する期待値に、実際の成績が伴っていないということ。

 なまじ期待が持続して、それが形になりきらないだけに、これは広島という育成型チームの性格を考えれば、ドン底にいるよりもタチが悪いかも知れない。期待が毎年先行して、本当の危機感に繋がらない為である。

 矢野、天野、酒井といった投手が一軍のマウンドを踏み始めているが、投球を見ればこれは時期尚早というのが正直なところ。解消されない左腕日照りも含めて、はっきり言えば確固たる戦力の絶対数は実際の感覚よりもずっと少ない。

 そういう中でトータル4人の指名、うち投手が2人という指名は少ない。少数精鋭で鍛えると言えば響きはいいが、ここにきて少し停滞傾向があるファームに喝を入れる為には、もう少し指名があっても良かった気がする。

 永川は自由枠入団だが、プロの一軍で活躍するにはもう少し角を取るべきだと思うので、実際は2年目勝負というところが本音。吉田はチームに枯渇している左投手だが、柔らかさにパワーを備えた打撃、意外に反応が鋭い外野守備を見れば、外野手として育てたい。この二人の存在が、どこまでファームに喝を入れられるか。特に永川のスケールは今の広島の若手投手の中でも図抜けた存在。刺激を与える意味でも永川の一年目はファームで鍛えてもいい気がする。



 好守と強打のイメージがある野手だが、そろそろ全般的にテコ入れが本格化していい時期。外野は主砲の金本がFAで阪神に移籍し、緒方、前田の耐用年数は現実的なカウントダウンに入っている。今まで不動のレギュラーだった3人のスケールを考えれば、廣瀬、朝山、森笠といった候補の力不足は否応無く付きつけられる。浅井や町田を恐怖のスーパーサブと考えれば、鞘師の加入はチーム事情にピッタリ。高い次元で備えた肩と守備力、そして先の塁を貪欲に狙う走塁レベルは、まさしく広島のチームカラーそのもの。粗さの残る打撃が課題だが、江藤や新井を長距離砲として一人立ちさせた広島のファームで打撃技術を身につければ、近い将来緒方レベルの外野手に化ける資質を秘めている。

 内野もテコ入れが必要だが、指名選手はゼロ。三塁の新井は打者として大成しつつあるが東出と共に17失策はリーグ最多。木村拓も相変わらず内外野守備位置が安定せず、ディアスは年俸で折り合わず退団。野村に頼るのは論外として、シーズン終盤は代走職人の福地がスタメン二塁に名を連ねるなど、ポジションはかなり流動的になっている。

 アジア大会出場の栗原に大化けの気配があり、一塁に回る新井と超大型の和製一塁〜三塁ラインが形成できそうなのは好材料だが、井生、松本、甲斐、石橋という辺りに芽が出る気配がなく、エリート候補生である東出のレギュラー特権剥奪が現実味を帯びている現状、内野手の指名ゼロはどう考えても不可解。

 吉村裕基(東福岡→横浜5巡目)、千代永大輔(九州学院)は下位指名でも獲得できた逸材で、広島にとって準地元の九州選手。永川に地元の目線を向けるなら、こういった視野の広げ方もするべきではなかったか。かつては野球所だった広島だったが、地元の利を全面的に享受できるほど今の中国地区は戦力が整っていない。

 地元でめぼしい選手がいないから指名から降りるという根性は、フランチャイズ意識ではなくただの視野狭窄。地元とのパイプの強さを、他の地域を軽視するような態度にしてしまうのは、実際問題いかがなのものかと思うのだが。


広 島
自由 永川 勝浩 投 手 亜細亜大 右右 187・81 高校時(新庄)から140kmを計時する本格派右腕だったが、亜大での4年間で150kmを越すレベルまで急成長。いかにもゴツい威力のストレートで押してくる豪腕型で、深く挟んで抜くフォークは魔球の落差。
2巡 吉田 圭 外野手 帝京 左左 186・82 リストの強さと柔らかさあり、どの方向にも強い打球を飛ばせる技術は高校レベルを超えている。投げてもサイドから138kmの打ちにくい球筋。投手指名のようだが、野手の方が伸びる気が……。
4巡 鞘師 智也 外野手 東海大 右右 183・78 走力や肩、守備範囲はすでにプロでも上位に位置し、特に中堅から両翼へのカバーリングの速さに見応えがある。下半身のバネが柔らかく、鋭い変化球にも膝をうまく送って拾える巧さあり。
5巡 松本 高明 外野手 帝京 右左 177・70 50mを5秒台で走る足が最大の武器で、単なる快速小僧なだけではなく走塁自体の勘がいい。外野からピュッと刺してくるスローイングも魅力。
Vol.106 2002年ドラフト総括(阪神編)
2002年11月23日(土)

 今年のオフシーズンの先陣を切ったのは阪神だった。投手を中心にベテランを大量に退団させ、一気にチームの体質を変えようとした阪神の粛清。これは球団の大ナタと言うよりも、星野監督の大ナタと言った方がいいかも知れない。星野は動く時はとことん動くタイプの監督だからだ。

 今年のドラフトでは12球団最多の11名を指名したが、出した選手が多ければ入れる選手も多くなるのは当然で、それ自体に不自然さはない。しかし、トータルで見ればあまりにチグハグな感が拭えないドラフトであったのも確か。



 福原の長期離脱、伊達のトレード、バルデスの解雇と、リリーフ陣に手痛い要素があるのは確か。しかし、先発に目を向ければ長期安定型の陣営が整いつつあるのが現在の阪神。24歳の井川が絶対的な軸として君臨し、藤田24歳、藤川23歳、安藤26歳が揃って今年プロ初勝利を挙げ来期に向けて虎視眈々。これに藪、ムーア、川尻のベテラン勢が程よく加われば、若手主体にかなりの先発陣が形成できる算段。ベテラン投手の大量解雇は別に不思議なことではないという結論に達する。

 金澤24歳、加藤20歳まで加えて考えれば、12球団屈指の若さに溢れた投手陣に化ける可能性を秘めている。井川という投手の一人立ちが、この若手主体の好循環を生み出した要因になっていることは疑い様がない。

 こういう若手が台頭している状態で必要な投手は、即戦力ではなく将来性豊かな高校生。しかし実際の指名は大学・社会人の選手に偏り過ぎている。高校生投手の指名は田村ただ1人。11人も指名しておいてこの結果は、阪神があまりにも目先にばかり捕われ過ぎている現状をはっきり物語る。

 今オフにペタジーニの獲得に乗り出したり、FAで金本を獲得し中村にも食指を伸ばそうとする状況も同じ。一言で言えば、1年先しか見据えず汲々とした状態。少なくとも今の阪神に必要なのは、杉山や江草といった即効性の戦力ではない。中継ぎ左腕を大量に解雇したから左腕を5人も獲ったのだろうが、解雇した選手と同じ役割をドラフト補強に求めることが、本当にチームの強化になるのか。そういうことを真剣に考えるべきだ。端的に言って、戦力編成に対して横着になり過ぎている。

 長峰昌司(水戸商→中日5巡目)は、井川と同じ高校出身の大型左腕で、井川とのサウスポーコンビはチームの売りになった筈。投手に関しては、こういう将来を見据えた補強を考えるべきだったと思う。溝口大樹(戸畑商→ダイエー4巡目)も欲しかったところ。繰り返すが、今の阪神に必要な投手は即戦力ではなく高校生。



 野手に目を向ければ、完全に端境期に入ったなというのが率直な印象。規定打席到達者は今岡、桧山、アリアス、片岡の4人だが、その中で.300を超えたのは唯一の20歳台である今岡だけ。濱中、矢野は.300を超えたが故障離脱で規定打席に届かず、赤星も右肩下がりの成績。故障者が続出した途端にチームの成績も雪崩を打ったように下落したが、これはまだ阪神に磐石の強さがなかったことの証明。遊撃のポジションを争った藤本、斉藤、沖原、田中といった辺りも帯に短し襷に長しで、一言で言えば地力がまだない。

 とは言え、6年目の関本がここにきて打力で遊撃のポジションを奪えるまでに成長し、ファームに目を向ければ、新井、桜井、喜田という長距離砲候補が着実に成長している。濱中も来期は主軸の自覚を持つレベルまできたし、赤星のセンターは阪神にとって欠かせない戦力。磐石ではないが面白いというのが現状の阪神で、近い将来の爆発力は期待していいレベル。金本や中村の獲得に乗り出したことは、そういう機運に冷水をぶっかけるようなもの。

 金本が左翼に入れば、赤星か桧山が自動的に余剰戦力になる。そういう無駄な補強をしているから、今度は昨年ゴールデングラブ賞の赤星を遊撃にコンバートするというバカな話が現実味を帯びてくる。無駄が無駄を招き、そういう無駄は新井、桜井、喜田、狩野の抜擢時期を確実に遅らせる。生え抜きの選手を使う機会がどんどん奪われ、中村のFA移籍が現実のものになれば、まさしく無駄のデフレスパイラル。数年前の巨人と何も変わらない状況になる。

 阪神に絶対的に不足しているのは、生え抜きの和製大砲と、矢野の穴を埋められなかった捕手。特に大砲は濱中がようやく一本立ちしたが、濱中一人では全然足りない。丁度良いことに阪神のファームは3年ぶりの優勝を果たし、若手の育成に関しての勢いはある。ここに長距離砲の資質を持った高校生をガンガン送り込んで、空いたポジションを賭けてどんどん実戦の中で競わせていく。こういう底上げを補強と言うのであって、少なくとも昨年FA移籍の片岡や32本塁打のアリアスが1年で余剰戦力になるような補強は補強と呼べない。異常の一言に尽きる補強戦略は、長嶋前巨人監督の「欲しい欲しい病」を想起させる。

 候補は桜井好実(砺波工→中日3巡目)、瀬間仲ノルベルト(日章学園→中日7巡目)、坂口智隆(神戸国際大付→近鉄1巡目)、山本光将(熊本工→巨人5巡目)、池田剛基(鵡川→日本ハム7巡目)辺りの指名組以外にも、瑞慶山浩士(所沢商)、川本竜二(創成館)、三澤慶幸(日本航空)など逸材がズラリ。松下1人ではとても足りない。

 昨年の野村→星野の電撃的な監督交代や、ペタジーニ・金本・中村の総獲り計画、そして即戦力と左腕投手に偏った今年の極端なドラフトを見ると、一言で言って焦り過ぎという印象の阪神。若手主体の戦力編成にシフトする下地は整いつつあるのだから、目先の10円を追っかけずに長期的な視野でじっくりとチーム作りに取り掛かるべきだと思うのだが。                                                                    


阪 神
自由 杉山 直久 投 手 龍谷大 右右 180・71 ヒジのしなりが抜群に柔らかく、鋭い腕の振りから繰り出される150kmストレートは糸を引くように伸びてくる。打者の目からは消えるスライダーも強烈な武器。
江草 仁貴 投 手 専修大 左左 178・80 145kmのストレートは上背の割に角度と馬力を感じる。縦に鋭く切れ込むカーブとフォークはプロ相手でも腰を砕く魔球。春季2部で5戦全勝し、1部昇格に大貢献。
4巡 中村 泰広 投 手 IBM野州 左左 175・70 ストレートは140km台前半と驚く程の速さはないものの、クセ球でボールはドーンとミットを叩く力強さがある。コントロールが良く自分から崩れないので、プロでは中継ぎ向き。
5巡 久保田 智之 投 手 常磐大 右右 180・84 高校時(滑川)は甲子園でも捕手からリリーフにまわり、脚光を浴びた。トルネード投法から繰り出される角度ある153kmストレートに大きく滑るスライダーが武器で、低目に集める制球力も悪くない。
6巡 三東 洋 投 手 ヤマハ 左左 180・75 駒沢大時代は肩とヒジの故障で泣かされ続けてきたが、故障を完治させ社会人入りして大きく花開いた。バネの効いた鋭い腕の振りから威力ある145kmストレートは勢い十分。
7巡 林 威助 外野手 近畿大 左左 178・78 俊足と抜群の打撃センスを併せ持つプロ級のスラッガーで、スイングの速さと思い切りが持ち味。1年春季に首位打者を獲得しているが、それ以来下降線。故障の治り次第で大化けも。
8巡 田村 領平 投 手 市立和歌山商 左左 178・80 体重移動にまだ粗さが残るが、それで146kmを投げられる身体能力は非凡。制球力もまだまだ未熟だが、それもこれも含めてこれから覚えればいいこと。左腕で145以上投げる高校生ならそれだけで希少価値。
9巡 新井 智 投 手 ローソン 左左 178・76 きれいにまとまったフォームから140km台中盤のキレで勝負する。右打者へのクロスファイヤーが持ち味。
10巡 伊代野 貴照 投 手 ローソン 右右 180・76 休部するローソンからのテスト入団。140km台中盤のキレ味あるストレートをサイドスローから放つ。
11巡 萱島 大介 遊撃手 ローソン 右左 180・75 伊代野同様に休部するローソンからテスト入団。俊足と守備力が持ち味。
12巡 松下 圭太 外野手 三瓶 左左 178・78 四国の高校生トップクラスの長距離砲。開かない打ち方ができているからこそ打球が伸びる。早いカウントからガンガン振ってくる積極性も買える。
Vol.105 2002年ドラフト総括(中日編)
2002年11月22日(金)

 一言で言って、かなり意欲的な指名を行った今年の中日のドラフト。「若い血を入れる」という明確なテーマを掲げ、思いきった指名を重ねた。これは中日スカウトがかなり腹をくくった態度で今年のドラフトに臨んだということだ。



 野口、中里を欠いてシーズンスタート。開幕投手の山本も一軍と二軍を往復するなど、決して順風でない投手陣で開幕しながら、最終的にAクラスを確保した中日。矛盾しているようだが、この成績を支えたのはひとえに投手陣の踏ん張りの賜物。

 98年の新人王川上が、巨人・桑田と最後まで最優秀防御率を争って12勝、3年目の朝倉は200イニング以上を投げるタフネスぶりで11勝と両輪になった。これに新人の山井が6勝と準ローテーション投手に成長し、小笠原も前半の苦しい台所事情を支えた。岩瀬、落合、正津らで形成する中継ぎは今年も磐石で、ギャラードも見事なクローザーぶりを発揮。阪神から移籍するバルデスや中継ぎで結果を残した山北、故障からの復活を期す中里という名前を含めて考えれば、小山や洗平の伸び悩み、バンチの退団はあるものの、中日の投手陣には大いに勢いと若さを感じる。

 この流れは大事にしたい。今年のドラフトでは「松坂世代」と呼ばれる大学生投手に逸材が揃い、12名の大学生選手が自由枠を行使した。しかし中日が狙うべきなのは高校生。若い力がみなぎっている今こそ、即戦力補強に頼るのではなく将来性豊かな高校生を片っ端から獲得すべき。朝倉を3年で一人立ちさせた指導力も、若さ導入の機運を盛り上げる。

 中日も当初は自由枠競争に参戦していたが、皮肉にもことごとく競争に敗れた。これは逆に幸と捉えたい。大学生に逸材が揃ったということは、高校生の指名に関しては空き家も同然ということ。大学生に頼らなくてもいい今の中日投手陣の顔触れを考えれば、徹底的に高校生に照準を絞るべき。それを今年の中日フロントは、結果的に実践したことになる。



 投手の指名は植、小林の大学生に、長峰という高校生で計3人。植、小林はタイプとしてはリリーフで、これは先発陣よりも高齢化の進む中継ぎ強化を睨んだもの。長峰はまさしく未完の大器だが、そういう投手を育て上げるだけの時間的猶予はある。

 意欲を感じるのは、森岡、桜井、瀬間仲という高校生野手の逸材を片っ端から獲得したこと。中日のアキレス権は一にも二にも攻撃力で、特に長距離砲が育っていない。こういう現状なら本来は即戦力のスラッガーに目が向きそうなものだが、これだけ高校生を獲得するとかえって信念が見えてくる。

 今の中日野手陣で安泰なのは、捕手(谷繁)、二塁手(荒木)、遊撃手(井端)、三塁手(立浪)、右翼手(福留)の5人。その中で20歳台は荒木26歳、福留26歳、井端28歳のみ。それなりのメンバーだが、外国人を入れないと中軸が足りない

 福留は見事な成長を遂げて首位打者獲得、不動の三番打者になったが、その後ろの打者が見事に抜けている。立浪は90打点以上を叩き出し健在をアピールしたが、34歳という年齢は本気で後継を探す時期にきている。候補は森野、幕田、森といるが、いつまで経っても「期待の戦力」から脱せないことを考えれば、いい加減に次代の大砲が欲しい。

 救いは福留に26歳という年齢的余裕があることで、これは福留とクリーンナップを組むパワーヒッターに若い選手が座れば、向こう6、7年は中軸に難儀しなくて済むということ。福留は30歳の大台までまだ時間的猶予がある。それまでに耐用年数の長い日本人クリーンナップを確立したいところ。

 森岡と瀬間仲は、高校生だが極めて即戦力に近い存在。森岡の守備力はプロの巧い遊撃手と遜色ないレベルで、細身ながらフォロースルーで打球を飛ばすツボを知っている生粋の天才肌。瀬間仲は外国人登録がネックになるが、変化球打ちのタイミングで直球に対応する技術を習得すれば、長くプロの4番を張れる超逸材。桜井は将来性を睨んでの獲得だが、ただの力持ちではない器用さをもっており、打撃センスとパワーは山崎の全盛期クラスまで伸びる可能性を秘めている。

 プロのフロントが最も獲りたくないのが、高校生野手。それも長距離タイプの野手は、素材そのものも少ないがとにかく獲りたがらない。モノになるまでに時間がかかる上に、モノになる確率も投手や器用なタイプの野手に比べて低いからだ。その高校生大物野手を3人まとめてかっさらった今年の中日。意欲的だというのは、そういうことである。

 ファームに目を向ければ、土谷、仲澤、前田とチャンスメーカーは揃っている。彼らがまとめて目を覚ますのは2〜3年後。その頃投手陣はまだ磐石の年齢編成でいける計算。数年後の大規模な地殻変動を現実的に予想させる、そんなドラフトだったと思う。                         


中 日
1位 森岡 良介 遊撃手 明徳義塾 右左 176・68 まるでボールの方から擦り寄ってくるような抜群のフィールディング。華奢だがヘッドの走るスイング、凡退して修正できる適応力、カモシカのような走塁と総合力◎。
3位 桜井 好実 外野手 砺波工 右右 180・83 背筋248kg、ベンチプレス110kgの怪力を誇る長距離砲。引き腕だけで振り抜いてヘッドスピードが出せる上、右方向にもきっちり捉えて飛距離が出せる北陸トップのスラッガー。
4位 植 大輔 投 手 龍谷大 左左 180・81 最終年で精彩を欠き自由枠を逃すも、一通りの球種を投げ分けコントロール良く攻める投球は勝てる技術。プロなら一つ決め球が欲しいが。
5位 長峰 昌司 投 手 水戸商 左左 191・78 大きな体を支える下半身に強さがなかったが、1年で化けた。最速142kmまで伸び、徐々に先輩の井川(阪神)二世の呼び声が板に付いてきた。
6位 小林 正人 投 手 東海大 左左 180・84 4年の秋になってやっと出てきたセンス抜群の好投手。急成長で144kmを出し、一躍プロの対象になった伸び代はまだ底を見せていない。
7位 瀬間仲ノルベルト 一塁手 日章学園 左左 186・92 甲子園で見せた特大の一発は球場の視線を一人占めした。詰まり気味でも軽々外野の頭を越すパワーは類を見ないスケール。ブラジル国籍のため外国人登録。
8位 湊川 政隆 二塁手 慶応大 右右 174・69 三拍子揃ったリードオフマンタイプ。昨秋、今春と二期連続ベストナイン。
Vol.104 2002年ドラフト総括(ヤクルト編)
2002年11月21日(木)

 川崎がFAで中日に移籍した年は優勝、石井一がドジャースに移籍した今年は2位と、毎年のように主力を失いながら上位に留まる反発力は見事。川崎が抜けた年は藤井が最多勝の活躍、石井一が抜けたら石川が新人王と、主力が抜ける度に新たな戦力が台頭してきた。

 好意的に見れば崩れない強さをヤクルトを持っているが、主力は段々無理のきかない年齢に差しかかっていることがここ数年の不安材料。今年は主力投手の退団はないものの、ペタジーニが巨人に移籍することは大きな痛手。4番が抜けた途端に他の選手の高齢化が気になるのは、松井の抜けた巨人と同じジレンマだが、その引き金になった主砲が松井の穴埋めとして巨人に移籍したのは何とも皮肉。



 現有戦力の上に戦力を積んできた訳ではないだけに、悪いメンバーではないもののもう一つ選手層の薄さに悩まされてきたのが今年のヤクルトだった。投手陣で見れば、石井一の穴を石川が埋めたと言っても、それはマイナスを食い止めただけで、プラスを積む結果を出すにはもう何枚か戦力の上積みが欲しい。

 とにかく先発投手陣が手薄。ホッジス、藤井、石川まで名前が出ても、あとは一年働けるだけの地力に乏しい。若さに期待するなら今年台頭した坂元だが、大事なところでポカが多いタイプで、まだ全幅の信頼は寄せられない。鎌田は一年投げる体力に乏しく、戎は故障明け。前田や山部にこれ以上の働きを求めるのは酷。

 そうなれば石井や五十嵐を前に持っていきたくなるが、今年のヤクルトはこの2人を絶対的な中継ぎエースにして中盤を固め、勝ち星を拾ってきた。17勝をあげたホッジスが完投ゼロという数字を見れば、いかに石井・五十嵐→高津のパターンにヤクルト先発陣が頼ってきたか分かる。裏を返せば、このパターンを手放すことはリスクの方が大きくなるということ。先発陣をなんとかやりくりして5回までゲームを作り、後は石井・五十嵐に頼るというパターンを、若松監督は手放したくない筈だ。高津の衰えを考えれば、石井・五十嵐のリリーフ固定はますます譲れないところ。

 そうなれば、即戦力投手の獲得は必須事項。高校No.1左腕の高井を1巡目指名し、近鉄との競合で交渉権を獲得したが、高井は高校生と言えど即戦力扱いしていい大器。3順目の館山も故障さえなければ自由枠クラスだったバリバリの即戦力投手で、吉川、小森という技巧派即戦力も確保。坂元や五十嵐、岩村など、仕上がり早く選手を輩出するファームには泉、片山という高校生の豪腕を送り込み、単純に良い指名をしたという印象。ここ数年スマートな印象のあったヤクルトのドラフトだが、今年は随分と貪欲に投手を獲得した印象がある。



 ペタジーニの退団は、前述のようにラミレス29歳、岩村24歳以外に20歳台のレギュラーがいない年齢層の高さを浮き彫りにする。今年は古田、ペタジーニ、岩村、稲葉、宮本、ラミレスの6人が規定打席に達し、これは巨人と広島に並んでリーグトップ。安定感はあるが、2〜3年後を睨むと非常に不安になる様相。

 とにかく内外野共に若さがなくなった。若手に目を向けても、三木、野口、畠山、志田、内田といるが、三木や志田は突き抜けるだけの爆発力に乏しく、畠山や内田はまだ時間がかかりそう。それでも若手を抜擢しなければならないチーム事情が、もしかしたら思いもよらぬ成長を促すかもしれない。そういう期待感はあるが、手当てが急務という現実は動かない。絶対的な数が足りなければ、ファームの若手の爆発を促すことは難しいからだ。

 補強ポイントは二遊間と外野で、特に二塁は慢性的な人材不足から即戦力を欲する状態。ペタジーニの抜けた一塁には畠山を抜擢できるが、特に外野はそもそもの人数自体が少ない。25歳以下の外野手は、内田(19歳)、ユウイチ(23歳)、志田(24歳)のみ。久保田は即戦力の意向に沿った獲得だが、人材自体がいないのなら1名のみの外野手指名は少ない。内野手も、大原は守備力を考えれば三塁で使いたい選手。三塁には24歳の岩村が安泰。どうするつもりだろう。

 鞘師智也(東海大→広島4巡目)や竹原直隆(城西大)といった右打ちの大物外野手には食い込みたかった。投手獲得の貪欲さに比べれば、やや淡白な感が否めない野手獲得だったように思う。                                                                                                               
ヤクルト
1巡 高井 雄平 投 手 東北 左左 174・76 今年の高校生No.1左腕と言っていい存在。メキメキと力をつけ、小柄だがストレートはMAX151kmまでヒートアップし、2種類のスライダーもキレる。長打力と瞬発力秘め、即戦力候補。
3巡 館山 昌平 投 手 日本大 右右 181・75 肩の故障で今春は棒に振ったが、今秋復帰。打者の顔色を窺いながら投げられる投球センスがあり、内外角に投げ分ける制球力は絶品。特にスライダーの制球◎。全ては故障の回復次第か。
4巡 泉 正義 投 手 宇都宮学園 右右 181・75 シニア時代から大注目され、素晴らしい素質を見せた1年夏の甲子園。肘のしなり、腕の振りの速さ、打者に近いリリースと、「いいボールを低めに集める」素質とセンスは図抜けている。
5巡 大原 秉秀 遊撃手 福知山成美 右右 185・80 堂々たる体格と馬力・鉄砲肩はパワーの塊。ショートの守備に確実性乏しく、開きがちでヘッドが入り過ぎる打が惜しい。
6巡 片山 文男 投 手 日章学園 右右 180・70 上体の力が滅法強く150km近いストレートがあるが、甲子園で2本塁打を浴びたのは球筋が素直でキレに乏しい為。体の強さは抜群で、フォームのツボを掴めば大化けも。
7巡 高橋 敏郎 捕 手 石巻専修大 右右 178・87 大学選手権で注目を集めた強肩捕手。春季リーグ戦で三冠王。
8巡 吉川 昌宏 投 手 ローソン 右左 172・65 亜細亜大時代からピッチングの巧さには定評があった。コーナーワークに渋みがあり、140km台中盤のストレートもキレがいい。
9巡 小森 孝憲 投 手 東農大生産学部 右右 179・76 やや横手からスライダーとシンカーで揺さぶり130km台後半をねじ込んでくる。4年時からややスライダーに頼り過ぎている感も。
10巡 久保田 智 外野手 川鉄千葉 右左 183・85 差し込まれてもスタンドまで持っていける左のスラッガー。守走に特徴乏しく、打力でどんどんアピールを。
11巡 大塚 淳 二塁手 土浦三 右右 173・70 フットワークの軽さが評判になっていた。深い所から刺せる肩も持っている。



Vol.103 2002年ドラフト総括(巨人編)
2002年11月20日(水)

 シーズンでは86勝を上げ他球団を寄せ付けない強さを見せつけ、日本シリーズでもシーズン90勝の西武を相手に4戦全勝。原新監督は稀代の名監督と評価され、V9時代に並ぶ圧倒的な戦力は黄金時代の到来を想起させるが、現在の戦力分布を冷静に見てみると、黄金時代どころか持続しない強さのようにも見えてくる。それがV9時代との大きな違いだ。

 松井秀喜が抜けたのは、確かに痛いの一言では済まないほどのダメージに違いない。しかし、昨年の高校生重視のドラフトを考えるならば、松井の抜けた穴を転換期にするだけの準備を整えているのだなと思った。そしてその転換期を軌道に乗せる為には、今年のドラフトが持つ意味は決して小さくない。



 全体的に高齢化が目立ってきたのが昨今の巨人。特に投手陣は、今年規定投球回数に到達した投手が上原、高橋尚、桑田、工藤と4人揃い万全の布陣だったが、現実的に来期を考えれば工藤40歳、桑田35歳、前田33歳、入来31歳、河原31歳と軒並み30歳台超え。上原と高橋尚も28歳で若手と言える年齢ではなく、真田19歳のみが突出して若いというイビツな年齢構成。

 昨年は真田、鴨志田、十川雄、林と素質豊かな高校生投手を片っ端から獲得し、即戦力志向のドラフトから一歩脱した感があったが、まだまだ若さが足りない。今年は木佐貫、久保という大学球界トップクラスの即戦力右腕を2人自由枠で獲得し、一応即効性の若さを取り入れた格好だが、木佐貫も久保も3年すれば中堅選手。磐石の態勢で臨めた年のドラフトだからこそ、高校生投手に向かってよかったんじゃないの?というのが私の本音。

 木佐貫と久保は、1年目からバリバリ投げられるだけの完成度と力量を持っている。二人の獲得は絶対に無駄にならないが、昨年と打って変わって高校生投手に見向きもしなかったことには疑問。昨年4人の高校生投手を獲ったからと言ってここで高校生獲得の手綱を緩めれば、数年後にはまた若さを感じない投手編成になる可能性が高い。

 条辺や真田が台頭した年数を考えれば、ここにきて巨人のファームは勢いを取り戻しつつある。この好循環を促進するには、やはり高校生投手の獲得が必要だったと思う。



 野手に目を向ければ、やはり20歳台の主力は高橋由28歳、阿部24歳、二岡27歳ぐらいで、若手と言えるのは阿部1人。清原、江藤の衰えも顕著。切り込み役の仁志が今年規定打席に届かず、来期32歳の年齢が現実的なネックになってきた。主力の衰えは若手台頭の機運を高め、それが前年までベンチウォーマーだった斉藤、福井、川中、宮崎らの抜擢と台頭の下地になった。原監督は長嶋前監督のお家芸だった空中戦よりも、個々の打者を線で結ぶことに腐心し、その結果が清水の一番固定であり、清原の穴を完全に埋めた斉藤の大活躍。

 選手の年齢層が下に向かったことは確かで、こういう機運は間違いなくドラフトに好循環をもたらす。つまり、下位指名で素質豊かな高校生野手を指名して若さを促進する機運の高まりである。長田クラスの遊撃手を4巡目で獲得できたのは、囲い込み戦略によるところも大きいが「いいとこ獲り」のドラフト。5巡目の山本も同様だ。

 手当てが必要になっているのは、一塁(清原)、二塁(仁志)、三塁(江藤)、そして松井の抜けた外野の4つ。予想通りと言えるペタジーニの獲得は若手輩出の機運をしぼませる重大要因になるが、そもそも内野には若手と呼べる年代の選手自体がいない。現レギュラーの耐用年数を考えれば、ここで必要なのは高校生野手。その意味で、長田と山本の指名はビンゴと言っていい。長田と二岡が8歳差、高橋由と山本が9歳差というのもいい構成。

 ただ、長田クラスの選手が4巡目まで囲われた状況は、球界全体から見たら明かなマイナス。そこは長田自身が考えなければならない問題だが、他球団の上位指名より巨人の4位指名がいいという精神力は、今後徹底的に鍛え直すべき。

 下位で捕手を2名獲得したが、向こう10年間は阿部が正捕手を譲らないことを考えれば、二人に求められた役割は阿部の控え。阿部以外の捕手が完全に飛車角落ちの現状を考えれば、二人に求められている役割は決して小さくないということを肝に銘じておいてほしい。チャンスは必ずある筈だ。                                 



巨人
自由 木佐貫 洋 投 手 亜細亜大 右右 186・76 まず高めに抜けることの無い鉄壁の制球力が、試合終了まで全く崩れない。最後までコンスタントに140km台を低めに集め、フォーク、スライダーもストレートと全く同じ腕の振り。
久保 裕也 投 手 東海大 右右 178・74 2年までは150kmの豪速球で騒がれたが、1年からの多忙がたたってヒジを壊した後は超絶の投球術を操る天才投手に変貌。変化球のみで緩急をつける技術はプロでも希少
4巡 長田 昌浩 遊撃手 東海大望洋 右左 179・77 居並ぶ超高校生級内野手の中でも、総合力で言えば頭一つ出ている感。長打力と俊足を兼ね備えた大型ショートで、抜群の強肩とフットワークで見せる守備も◎。
5巡 山本 光将 外野手 熊本工 右右 183・85 高校通算61本塁打で、熊本工では伊東(西武)や前田(広島)に劣らない飛距離と評判。緩急に脆さあり開く悪癖あるが、肩と足は抜群。ダイエーと競合か。
6巡 矢野 謙次 外野手 国学院大 右右 178・81 俊足・強肩の長距離砲で、粗さは残るものの自分なりの放りこめるポイントを持っている。運ぶ技術と合わせて打球を飛ばすセンス出色。
7巡 入野 久彦 捕手 福岡大 右右 180・82 テスト入団でドラフト指名にこぎつけた。遠投130mに背筋300kgのズバ抜けたパワーで野球頭もキレる。
8巡 横川 雄介 捕手 都日野 右右 180・75 今年になって評判が上がった。走攻守で3つ揃った捕手とのこと。
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