バンコクの安宿街のひとつ、サヤーム地区からタクシーに乗った。
「空港へ行ってください」 ふうー。三月とはいえ外はうだるような暑さだったから、車内の涼しさは格別だ。バンコクは交通量が多く、排気ガスにも悩まされた。東京より空気が悪いんじゃないだろうか。 運転手がしゃべりかけてくる。 「国に帰るのかい?」 日本に向かっているわけではなかったのだが、なんとなく話しはじめる。話題は転じて、日本車談義になった。
運転手曰く、タイを走る車の95%が日本車なのだとか。ほー、そんなになるかい。ちょっと眉唾である。 続けて彼はいう。 「トヨタとホンダがいいね。特にトヨタは燃費がバツグンだ」 そうだろう、そうだろう。地球にやさしい車だよね。なんだか自分が褒められているような気分になる。 「それに何といってもエアコンがいい」 そういえば、この車も「TOYOTA」だった。運転手は「解説」を続ける。 「ホンダはね……」 F1で有名なだけに、やっぱりエンジンの評価かな。吹け上がり? トルク? 「……エアコンが最高だ」 そうきたか。やっぱり判断基準はエアコンなんだ。ちょっと拍子抜けする。まあ確かに暑いもんね、バンコクは。
ついでなので、他の日本車メーカーについても「評価」を仰ぐことにした。 「マツダはダメだね」 それは、どういうわけなんだろう。トラックが多いから環境に良くないってことかな。 「マツダの車は、エアコンが利かない」 …………。
バンコクでは、車の評価はエアコンで決まる。ギンギンに冷えた「高性能車」は、ドン・ムアン国際空港の出発ゲートに到着した。
2001年03月18日(日)
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