水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2016年03月28日(月) 堀晃『宇宙縫合』

堀晃『宇宙縫合』には、宇宙船もロボットもでてきません。
それでも宇宙を感じる不思議な世界で、ミステリアスな魅力があります。

それは、とても刺激的。
激しいというのではなく、最初から最後まで淡々と静かに進みます。
主人公が冷静なのが、良いですね。

SF小説のドキドキ・ワクワクに浸りました。





2016年03月24日(木) 新井素子『あの懐かしい蝉の声は』

時代は22世紀。
人々は五感──つまり、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚のことね。
それらに加えて、第六感を持っている。
第六感というのは、ネットに接続できる感覚。
パソコンを起動しなくても、無線LANから齎(もたら)される情報を取得できるという、想像しただけで疲れそうな感覚です。

そして、22世紀では、第六感を持っていない人は障がい者であり、主人公は第六感を持つための手術を受けるのですが……。

新井素子『あの懐かしい蝉の声は』は、「SF JACK」(角川文庫)の中で一番読みやすく、わかりやすい作品でした。

ただ、なんとなく違和感があるんです。
22世紀のはずなのに、ニュースラインが今の時代と大差なく、夢がない。
平成どころか、昭和のかほりな近未来です。


2016年03月23日(水) 山本弘『リアリストたち』

180年後の日本。
人口減少が進み、人口1,200万人になった日本には、「ノーマル」と「リアリスト」がいます。
バーチャルの毎日を過ごすノーマルと、リアルな暮らしを守るリアリスト。
今でも、買い物はネット派と、昔ながらの商店街に足を運ぶ人たちがいますから、山本弘『リアリストたち』の世界は容易に想像できます。

そこで、ふと気になるのは、ノーマルとリアリストのお話しなのに、なぜ、タイトルが『リアリストたち』なのでしょう?

仮想空間で育成するバーチャル・ベビーに人権が認められる世の中になっても、バーチャルでは、子どもを育てる喜びは持てないと思います。
子育ての面倒な部分をすべて排除して、バーチャルで成長を見守るだけなら、飽きてしまうのでは?

バーチャルは気楽で、リアルの辛いことから目を背けることができます。
ですが、誰もがわかっているんです。
リアルあってこそのバーチャルだと。


2016年03月22日(火) 小林泰三『草食の楽園』

人々が互いに助け合い、犯罪や戦争がない世界は、どこかにあるのだろうか。
昔に比べて、暮らしは便利になったけれど、人は賢くなったのか?
未来は平和だろうか?

以前、クリスチャンの知人に、「信仰を持つ人は皆、慈悲深く、他人を羨んだりしないのでしょうね。」と言ったところ、
「いいえ、他人を妬むこともあります。人間だから。」
と、すぐに返されたことを思い出します。

小林泰三『草食の楽園』は、「SF JACK」の中でも、人の根源的な部分に目を向ける作品。
スッと読んだあと、そう、読み終えてから、味わい深い。


2016年03月17日(木) 山田正紀『別の世界は可能かもしれない』

「SF JACK」に予想通り、遺伝子操作されたマウスが登場しました。
山田正紀『別の世界は可能かもしれない』

──知性を高められたマウスの名前はジェリー。
ジェリーと心を通わせる少女は五木梨花。

うーん、ここはシンプルに、ジェリーと梨花だけのお話にしてほしかったような気がします。

どんどん迷路を突き進んでいく感じですよ。


2016年03月12日(土) 今野敏『チャンナン』

今野敏『チャンナン』は、タイムスリップと沖縄空手のお話し。
実は、沖縄空手のことはあまりわからない。
というか、空手自体全く知らないし、空手の型を活字で見るのも初めてです。
いまいち、ピンとこないのは、空手だからかもしれません。

空手に限らず、何事も現在の形に落ち着くまで、いろんな人が関わってきたんですよね。
そんなことを、ふと考えると面白くなってきますが。。

主人公が魅力的じゃないのが、残念。
タイムスリップする人は、もっとカッコよく描いてほしい。
時空を超えるんですから。


2016年03月09日(水) 上田早夕里『楽園(パラディスス)』

「SFJACK」(角川文庫)は、11名の作家によるSF短編集です。
11作品の中でも、『楽園(パラディスス)』は読みやすく、せつなさを残しました。

メモリアル・アバター。それは、家族や友人を失った人間が悲しみを癒すために使う精神ケア・アプリ。
亡くなった人がSNSの日記やメールなどに残したライフログから対話型の仮想人格を作り出す、というもの。
メモリアル・アバターを使えば、もう会えない人と話ができる。
近いうちに、実現するのではと思う。
けれど、アバター相手では、虚しくないかなとも思う。
本当の気持ちって、他人には話さないのではないかしら。
日記に書くのは、読まれることを意識しての文章だと思うのです。

死んでしまった人と思い出話はできても、一緒に新しい思い出を作ることはできないんですよね。


2016年03月04日(金) 吉川良太郎『黒猫ラ・モールの歴史観と意見』

「SF JACK」(角川文庫)のカバー帯に「もう一つの世界を、体験しよう!」とあるように、SFの楽しさは非日常の世界に一瞬で行けること。
まあ、ジャンルを問わず、小説はどれも、本の中は別の世界だったり、別の人生だったりするわけですが、SFは特別。ここではないどこかへ誘(いざな)われます。それは、決して見ることのできない未来。テクノロジーとサイエンスが切り拓いていく明るい未来……というのが、私のSFイメージなのだと気づきました。

吉川良太郎『黒猫ラ・モールの歴史観と意見』は、どんどん息苦しくなっていきます。記憶を呑み込んだ「吾輩」がこのあとどうなるか、あまり知りたくないような。
いろんなSFがあるんですよね。

最近、SFから離れていたせいか、想像の世界が狭くなっていたことを反省。

やはり、本を読まなくちゃいけません。


2016年03月03日(木) 冲方丁『神星伝』

「SF JACK」(角川文庫)は日本SF作家クラブ50周年記念出版、11名の作家による短編集。執筆陣は、冲方丁、吉田良太郎、上田早夕里、今野敏、山田正紀、小林泰三、山本弘、新井素子、堀晃、宮部みゆき、夢枕獏──豪華メンバーが1冊に集結。想像以上の世界が詰まっていました。

全11編を読んで、全体的に刺激的で良かったものの、私にとっては難解というか、読むのにパワーを要するものもありました。それが、最初の冲方丁『神星伝』。造語が多く、ついていくのが大変でした。壮大な世界なのに、心から楽しめないのは、もどかしいです。


「水野の図書室」、長いお休み中、それなりに人生経験を積んだはず、なのですが、気の利いたことは書けそうにありません。
挫けそうになりながらも、再びオープンです。




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