水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
「闇に香るもの」(新潮文庫)の棹尾を飾るのは、勝目梓『棺の中』。 今回の“香るもの”は、アクセサリーです。ふとしたことで関係を結んだ女に 18金のネックレスとイヤリングを贈った男。愛情はなく、はずみで始まった 情事は何も残さず終わったはずでした。女が死ななければ。女が、この アクセサリーを棺の中に入れて欲しいと言い残さなければ──。
お葬式で、死んだ女に夫がいたことを知るなんて……。 はずみにも、ほどがあるでしょう!! 何気なく贈ったプレゼントのことで、夫に呼び出される男。 夫はこの男をどうしたいのか、夫自身わからないようですが、うーむ、 わたしもわかりません。こんな夫のココロ。男も然り。
夫vs妻の恋人、というより、夫vs妻の夫に対する憎しみ、のような図式が 浮かびます。言葉にできない思いを持て余すふたりの男対決が、 妙になまなましく、せつないですねぇ。
「闇に香るもの」(新潮文庫)、どの作品も強烈ですが、特に印象に残るのが、 東野圭吾『栄光の証言』。誰の身にも起こりそうです。
2006年03月16日(木) |
結城昌治『不可抗力』 |
主人公が哀れですねー!というか、この男のダメダメぶりに疲れます。
妻を殺そうと企む主人公は、自分が捕まらない方法を知ろうと、推理小説や 犯罪記録を熱心に読み進むうちに、刑法第39条に行きつきます。
刑法第39条というのは、心神喪失者の行為は罰せず、心身耗弱者の行為は その刑を軽減するという法律で、これを利用すれば、妻を殺して、捕まっても 無罪になると主人公は考えるわけですよ。。まったく!! そこで、心神喪失を装うために、主人公が考えたのが──。
浅はかですよね〜。
離婚を承知されないかもしれないから、殺すって、、あんまりです。 一度でも、「別れてくれ」って、言えば良かったのに。。 案外、あっさり、「そうね」かもしれないのに。
妻への不満を誰にも言わないでいると、殺意が生まれるのでしょうか。 妻が死ねばいいなんていう願望が内攻すると、こんなふうになるのでしょうか。。 結婚したときは、憎しみなんてなかったでしょうに……。
短編集のタイトル「闇に香るもの」(新潮文庫)からイメージしていた香水が 登場しました。森瑤子さん……今もお元気なら、どんな恋物語を……と、 思ってしまいます。表参道ヒルズや携帯電話を、森さんなら、どんなふうに 描くのでしょうか。急逝されてから13年ですね。森さんほど、濃密で艶やかで めくるめくような淫靡さで、琥珀色の恋愛小説を書ける人は、なかなか いないものです。
『香水』は、婚約者の部屋を訪ねた女が、香水の残り香から他の女の 存在を感じ……というお話。な、なんなんでしょう?行間から立ち昇る香り。 読んでいくうちに息苦しくなります。匂い付き本?なワケないですよねー。 ムアムア香ってきます。ハァハァ・・酸欠状態になりそうです。息継ぎしないで 泳ぎきった感じで、読み終えました。。フゥ〜
人間、誠実で知性があれば、未来についてのどんな約束もすべきじゃない。 というようなことを男が言うんですけど、うーむ、これは、わかるわ〜。 口約束で婚約して、6年もずるずるきたら、男は女に飽きて、女は男に 執着するような気がします。どーですか?
女が自分の年齢に愕然とする口の周囲の皺、欲望に膨らんでいく男の 唇の両側が柔らかく釣り上がってできる官能の皺。皺(しわ)にもドキドキ。
愛と憎しみは紙一重。女は恐い。
2006年03月03日(金) |
北方謙三『男の小道具』 |
これは、短い。コーヒーが冷めないうちに読み終えてしまいます。 そして、巧いですねぇ。隙がなくて、ツッコミどころが見当たりません。
あえて言うなら、、男の小道具=葉巻って、、そ、そうなんですか? 上司が葉巻喫ってたら……ぜんぜん想像できません。 北方謙三ぐらいじゃないですか?葉巻が似合う人。他は、ゴルゴ13?笑 まわりに葉巻を喫うような人がいないから、葉巻の匂いがわかりません。 でも、だからこそ、想像力が刺激されて、一層楽しめます。
ストーリーは、21歳の女子大生とつきあう50過ぎの作家の元に、彼女と別れて ほしいと若い男がやって来て……。ん?んんーん?実話? じゃないですよねー。妙なリアリティーを感じます。北方流哲学をベースに 語られる男と女の関係。女の心理も、、よくご存知で。北方先生。
「闇に香るもの」(新潮文庫)第五話は、確かに香ります。右脳がモワッ!
2006年03月02日(木) |
阿刀田高『ギャンブル狂夫人』 |
嗜好品を扱った短編集「闇に香るもの」(新潮文庫)を読んでおります。
第四話の嗜好品は、煙草。ただ、煙草環境は10年で大きく変わりました。 煙草は嗜好品とは言えないのではないでしょうか。愛煙家などという 言葉も古臭い感じがします。もっと古いのは、ギャンブル狂。 煙草とギャンブル狂と夫人です。なんてレトロなキーワード!
ところが、予想を裏切られ、スリリングな気持ち良さ。テンポも良いわよ。 阿刀田高、ですもの。完成された美しさ。 旅先で偶然知り合った夫人から、ある賭けを持ちかけられた男の話が こんなに面白いなんて!どんな賭けかは、読んでみてね。
ラストで、フッ。 人生、泣いたり笑ったり。笑ったり泣いたり。
今日のわたしは、笑ってました。
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