水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2005年02月28日(月) 藤田宜永『天からの贈り物』

東京で暮らす息子から、会わせたい人がいると手紙を貰った父親が上京したところ
から物語は始まります。新宿・歌舞伎町の路上で、ギターを弾きながら歌う息子が
父親に紹介した女性は、30年前、学生時代に愛した女性の娘で──。

若かった頃の儚かった恋の思い出を慈しむ父親を、ずっと見ていたい。
そんな気持ちになります。自分で決めた結婚でも、もし、他の女性(男性)と結婚
していたら、全く別の人生だったという想いは、誰にでもあるのかもしれません。
自分の人生を後悔しているわけじゃなくても。

まあ、過ぎてしまえば、思い出は美しくなるもの。結婚しなかったからこそ、若い日の
恋が、輝いたままなんですよ。そして、彼女に瓜二つの娘が、あの頃の彼女と
同じくらいの歳で、自分に全てをまかせてきたら……。こういうシチュエーションを
きれいに描く藤田宜永は、噂どおりの恋愛小説の旗手。胸がうるおいます〜。

ときめき・恋愛・ミステリーのバランスもいい感じ。流石、山前譲コレクション、
満足度が高いです。


偶然、こんなことがあり、びっくりです。こちら


2005年02月23日(水) 乃南アサ『つむじ』

突然ですが、彼の髪が薄かったら、、気になりますか?
男性にとって、髪が薄くなっていくのは、そんなにビクビクするようなことですか?

早く結婚したい女と、まだ結婚したくない男のお話『つむじ』。
ふたりは、お互いのことが大好きで、良い恋人でいたいと思っているのに、
少しずつ少しずつ、気持ちにすれ違いが生まれてきちゃうんです。

原因は、ズバリ、髪!!彼女に嫌われないように、髪を増やそうとする彼の
努力は……。深刻な悩みのようです。そんなこと、気にすることないのに、と
あなたは思うでしょうか。それとも、……。

どんなに悩んでいても、他人からみれば、他人事。
裏を返せば、自分の悩みも、他人様にとっては、一笑に付す程度かもしれませんね。

髪なんて、気にすることありませんよ。
男にとって、大切なのは、機に応じた清濁硬軟の使い分けと気力、知力、体力
でしょう。女も同じ。髪なんて、ぜんぜん、わたしは気になりません。


2005年02月15日(火) 新津きよみ『永遠に恋敵(ライバル)』

日記内を新津きよみで検索すると現れる作品、すべて、オススメ、ゾクゾクします。
行間から立ち昇る女の嫉妬の炎には、凄まじいものがあります。ひとりの男性を
めぐる女対決、男性なしの女対決、どちらも、震え上がります。こわッ!

『永遠に恋敵(ライバル)』は、恋人を友人に奪われた女性が、3年ぶりに偶然
友人と再会することから、再び敵対心をつのらせていくもので、ちょっとやりすぎ
な気がしますけど、思いもよらないラストのどんでん返しに、さ、さすが、新津流と
唸ります〜。

恋人が、自分の友人と仲良くなったら、恋人を恨みますか?それとも友人を?
難しいとこですよね。まあ、縁がなかったと、時には、あきらめるのも大切かも。
執拗に追いかけたりしたら、お互い、嫌な思いをするだけです。

縁って、あるような気がします。ひとにも、場所にも、結婚にも。


2005年02月10日(木) 夏樹静子『燃えがらの証』

はい、如何にも恋愛ミステリーです。夏樹静子の作品は、どうしてこう設定が
わかりやすいんでしょうか。登場人物の横顔の雰囲気までも、スルッと想像
できてしまうので、頭の中で勝手にキャスティングしてしまいます。

主人公は、テレビ局勤務の女性、30歳。28歳の人形作家の恋人がいます。
ある日、恋人が人妻風の女性と一緒のところを目撃し、衝撃を受け、彼女を
尾行して、家まで確認するんですが、な、な、なんと、その彼女が殺人事件の
被害者として報道されることに!そして、恋人とは連絡が取れず──。

犯人は恋人か、不倫を知っていた夫か・・となる展開は、隠されていた秘密の
登場で、予想を越える事態となり、暗く冷たく深いものがあります。こんな事情を
かかえた夫婦って、息苦しいです。苦しいですよ。きっと。

ドキッとしたのが、人妻の家と車庫のこと。こういう家、珍しくないですよね。
日常の中の些細な光景が、事件の様子を鮮やかに見せてくれます。


2005年02月06日(日) 篠田節子『柔らかい手』

ヒェ〜〜こ、怖いよー!妻の愛はホラーの匂い!

水の事故で全身不随となった写真家を世話する妻のお話なんですが、客観的に
見たら、献身的でよくできた妻でも、寝たきりの夫にとっては、自由を奪われ、
外部との連絡もさせてもらえず、まるで、、、生き地獄のよう。。

うーむ、この妻は夫に憎しみを抱いている模様です。それは、写真家として、
あちこち撮影に出かけることの多い夫が、家にあまりいなかったからですか?

写真家って、そういうものなのでは?家にいつもいる写真家なんて、スケールが
小さいと思うんですが……。身体の自由がきかなくなった夫と、ずっと一緒に
いられるのを喜ぶ妻は、、、心のバランスを崩してませんか?病気スレスレの
女を描くのが上手い篠田節子のおかげで、怖いながらもズンズン読めますよ。

ラストにきても、ラストじゃないもどかしさは、主人公に明日があっても明日が
ないからで、不思議な感覚です。愛が憎しみに変わり、終わりがない苦しみで
思い出すのは、『38階の黄泉の国』(「短編復活」集英社文庫、2002.12.02記)。
こちらも篠田節子のホラー愛が、心の奥にゆっくり沈んでいきます。


水野はるか |MAIL
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