水野の図書室
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2004年10月30日(土) 阿刀田高『マッチ箱の人生』

新潟県中越地震から一週間ぶりに新幹線が目の前を過ぎていくのを見て、
少しずつ復興に向かっているのを感じました。とは言っても、上越新幹線は
一部再開できましたが、全線再開までのメドが未だたたないとのことですし、、
被災地避難所で大変な生活をされている方々を思うと、やはり心配です。

地震後、Blogの方は更新していても、本を読む気持ちになれなくて、こちらは
停まったままでしたが、今日、ようやく本を開きました。
被災された多くの方々が、早く元の暮らしに戻れますように。。
緑豊かな美しい中越地方が、一日も早く復興しますように。。

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「七つの危険な真実」(新潮文庫)二番目は、阿刀田高『マッチ箱の人生』。
短編の名手の語り口は、なめらかで鋭くて、読み手の心を最初から鷲づかみ。
観察力に長けたバーのママが、ある事件の犯人をマッチ箱ひとつから推理
していくんです。完璧なまでの推理と説明に、つっこむ余地はありません。
ここまで犯人がわかっていながら、警察に言わなかった理由も明白。というか、
あまりに単純で唖然。まあ、真実はシンプルなものです。

去年読んだ阿刀田高の短編集「花あらし」(新潮文庫)も良かったです。
12編が1冊になっていましたから、、一日一話で、とぷんと半月浸れます。
面白い以上なのに、面白い以上の言葉を知らない自分が嗚呼、モドカシイ。


2004年10月21日(木) 赤川次郎『透き通った一日』

「わかれの船」(光文社文庫)を漸く読み終えました。順番通り読まなかったリ、
(水上勉さんの訃報で『猿籠の牡丹』に飛び)チェーホフの『不幸』にどうしても
ついていけなかったり、既読の田辺聖子『ジョゼと虎と魚たち』をスキップしたり、
いまひとつ、達成感に遠いのですが、本屋さんで面白そうな本を見つけたので、
次にいこうかと思います。あ、そうそう、「わかれの船」のあとがきは必読ですよ。
宮本輝が、釈迦にちなむ故事を例に、別れについて淡々と語っています。
「この世は別れに満ちている」── 別れが生きる証しなら、どんな別れでも、
目を逸らさずにきちッと受け止めていきたいです。

たくさんの別れ話を読んだあとに選んだのは「七つの危険な真実」(新潮文庫)。
罪と罰の意味を問うアンソロジーです。どうして、この本を選んだかというと、
オビなんです!オビにキャッチされたのは、多島斗志之「追憶列車」(角川文庫)
浅田次郎「薔薇盗人」(新潮文庫)以来かと思います。
「人は誰でも心の奥にさみしい犯罪者を匿っている──。」すごいコピー!!
参りました!(最後のとこ読めた?匿っている=かくまっている)

七編の最初は赤川次郎『透き通った一日』。おお!書き下ろしです。
文体が軽いので、テクテク読めますが、テーマはものすごーく重いんですよ。
中学生の少女が、まわりの大人たちの別の顔を知ることになるお話。
自分たちが不利にならないように真実を隠そうとする愚かさと、真実を口にする
勇気が事態を好転させる意義がよくわかります。
設定がわたし的には好きになれないんですが、作者の意図と思いがストレート
に伝わって、スッキリ。


2004年10月15日(金) 向田邦子『鮒(ふな)』

ある日、台所に誰かが置いていったバケツに入った1匹の鮒。それは、父親が
密かに通っていた女の部屋で飼われていた鮒だった。別れも告げずに女から
離れて1年。女は何の連絡もよこさず、突然、鮒を置きにくるなんて……。
父親の動揺をよそに、鮒に興味をもつ息子。飼うことになったため、女のことが
急に気になりだした父親は──。

どこかの家でありそうな出来事、でも、自分の家では、あってほしくない出来事
が繰りひろげられる『鮒(ふな)』。この父親ったら〜、なんて、おもしろ可笑しく
読めるのは、所詮他人事だからですね。

鮒に弱みを握られていると思い込んでいる父親の小心者っぷりが、可愛そうな
くらい楽しいんですよ。鮒に浮気をばらされるんじゃないかと、ハラハラぶりが
なんとも、いいおとーさんに見えてきます。母親、娘、息子の鮒へのまなざしも
なるほどーと、深読みしたくなります。

テーマは別れなのに、陰湿な暗さはなく、まるで、「会うは別れのはじまりよ」と
囁かれているみたい。エッ、誰に?もちろん、向田邦子さんに。


2004年10月11日(月) 連城三紀彦『桐の柩(ひつぎ)』

きれいな文章ですねー!一気に読みました。今まで、任侠ものは苦手だと
思っていたのは、何だったんでしょうか。。ホントに叙情的で、びっくり!

21歳の「俺」がヤクザの世界に足を入れ、兄貴に頼まれ、人を殺し──。
兄貴はなぜ、その人を殺す必要があったのか。なぜ、他人に頼んだのか。
兄貴はなぜ、女を抱いた後の「俺」を抱いたのか。← ちょっと倒錯世界
なぜなぜづくしが、「俺」の推理で次々に解き明かされていきます。

そして、謎解きの大きなヒントとなるのが、戦地でたくさんの死骸が焼かれる
光景を見たことで、戦場では死骸を焼くのに棺桶は要らないが、柩を焼くには
死骸が要るということなんです。柩に注目!
ただの任侠ものじゃなかったのね〜。ミステリー+任侠+ラブが新鮮!

雨、雪、匂いの描写も素晴らしい。読んでよかったー!ラストにキュン。


2004年10月06日(水) 中上健次『隆男と美津子』

何度も書いたと思いますが、小説に心中や自殺がでてくると、居たたまれない
ような、そこで読むのをやめたい気持ちになります。まして、心中を遊びにして、
心中未遂騒ぎを起こすことで小遣い稼ぎをする無謀なカップル隆男と美津子に、
読み終えた後、鬱々。次はハッピーエンドなものを読みたいです。

主人公の「僕」を通して見る隆男と美津子は、18歳にしてはあまりに未熟で、
なんだかー、、、という感じ。まあ、自分の18歳の頃を思い出すと、コドモでは
ありましたけど。

それより、「僕」は警察官の話から心中の真相を知ったのではないでしょうか。
「信じられない…」「分からない…」と、ふたりの心中に呆然としながら、実は
(信じたくない)(分かりたくない)状態だったのでは……。

ハッ!ミステリーを読む構えでいけば、少しは気持ちが軽くな・・・りませんね。
心中は殺人と変わりません。気持ちはドンヨリ。
何か、面白いものを読むか見ないかしないと、眠れません。
とりあえずヘキサゴン。


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