水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
先月末から「短編復活」(集英社文庫)を読んできましたが、とうとう、最後の 作品になりました。そして、この短編小説が今年、2002年の読み納めです。 唯川恵・・! 確か、去年も年末に読んでいたような・・と、listを見たら、 去年の12月末に、『22歳、季節がひとつ過ぎてゆく』を読んでいました。 去年の最後は、昨日読んだ山本文緒!そうそう『プレミアム・プールの日々』で、 爽やかに読み終えた2001年でした。あれから1年。速いです〜。
で、今年の読み納め、唯川恵の『青の使者』、面白かったです! 失跡した不倫相手に貸したお金を返してもらおうと、本宅を訪ねた女と妻の対決 にぐいぐい引き込まれました。男はどこへ行ったのか・・これは、凍ります。 ホラーですね。静かなゾクゾク感がいい感じ。んー、低温ホラー?で読み納めと なりました。最後にふさわしい読み応えたっぷりで、良かったです。
たくさんの小説からもらったものは、ドキドキ、ソワソワ、ゾクゾク、ホンワカ、 ニコニコ、しんみり、ハラハラといった、心のエクササイズ。いろんな気持ちに なれることで、心は柔らかく強くなっていくように思います。
今年も、拙い文章に目を通してくださって、ありがとうございました。 来年もどうぞよろしくお願い致します。 皆様にとって、2003年が心に残る良い年でありますように。
See ya ! 水野はるか
2002年12月29日(日) |
山本文緒『いるか療法』 |
生徒に体罰を加え、免職になった女性教師の独白。突発性難聴に罹った「私」は、 水族館に通う日々の中で、同じようにいるかを眺める少年と出会い、自分の心の場 所を見つけていくのです。
一種のアニマルセラピーですねー。いるかに癒されるというのは、わかるような気 がします。小さな水槽の中を自由自在に泳ぐ金魚にさえ、なごみますもの。 スケールは全然違いますが・・。。。笑
突発性難聴の原因を、善人ぶっていたから無理がきたのだと自分で解釈するのが、 いかにも教師的で、まっすぐ胸にささります。つい先日、心を病む教師が増えてい る、なんて新聞で読んだばかりです。まじめな教師ほど、生徒を心配し、心と身体 のバランスを崩していくなんて、やりきれないですよ。
ラストは明るくまとまって、ホッ。 穏やかな元気を分けてもらったような・・。 じゃ、また明日!
2002年12月28日(土) |
群ようこ『キャンパスの掟』 |
久しぶりの更新になってしまいました。こんな不定期更新自分本位読後つらつら 感想日記を新たにエンピツMy登録してくださった皆様、恐縮ですー。。 ありがとうございます。
群ようこ、といったら、『無印○○』シリーズでスラスラ読める文章がお馴染で すが、このスラスラテクは、心理描写を( )で綴り、まぁ、呟きふうに書いて いるところで、『キャンパスの掟』にも、時おり登場する( )呟きが視覚に も訴えて、なかなか面白い味わいです。例えば、友人の爪にマニュキアが塗られ、 ラインストーンがついているのを見た「わたし」は、(こんなの間近で見たことな いわ)となるのです。一行で「わたし」の爪を想像させるカッコ言葉、恐るべし!
女子大生の生態を描いたこの作品の初出は'93年。十年前の作品とは思えないほど 今の女子大生も・・こんな感じなんじゃないでしょうか。スラスラ読める快感は、 気持ちいいです。タイトルもOK!
小説を読むのは、感動や感激するためだけじゃないんですよね。
2002年12月23日(月) |
宮部みゆき『さよなら、キリハラさん』 |
読み終えて、しんみり・・。
家族みんなの耳が聴こえなくなり、家中の音がなくなった時、やって来たキリハラ さん。キリハラさんの話は俄かに信じられないものでしたが、家の中で起きていた 不思議な出来事を解き明かしてくれるうちに、今まで気づかなかったおばあちゃん の寂しさを知ることになるのです。
キリハラさんの登場の仕方、自己紹介がSFマンガチックで、軽く入っていきました が、途中から老いていくことの孤独を目の前に突きつけられた感じです。 家族と同じ家に暮らしているからといって、寂しくないわけないんですよね。
明日はクリスマス・イブ。 一緒に過ごす人がいない寂しさを知る日でもあります。と、誰か言ってました。
ん?わたし?このところ、パーティー続きッ!←基本的には寂しがりやですぅー
2002年12月20日(金) |
東野圭吾『超たぬき理論』 |
ちょっと気になる人の意外な面を知るのは、いつも買うチョコボールの箱に、「増 量」と見つけたときくらい嬉しかったりします。「秘密」しか読んだ事がなかった 東野圭吾に、こんなオチャメなところがあったなんてっ!
「たぬきには超能力があって、UFOの正体は文福茶釜である」と説く男のお話。 イルカやナマズの超能力じゃなくて、“たぬき”なのが、ほのぼのします。 UFO研究家を相手に、力説するこの男を応援したくなっていきました。
こういう楽しい小説もいいですよねー。ストーリーは全然違うけど、北村薫の『か とりせんこうはなび』を思い出しました。(「水に眠る」文春文庫、2002,4,7記) 蚊が蝿を刺すようになる薬が開発されるお話で、面白かったです。
波乱万丈な人生を知る長編小説を読んで、胸を熱くしたり、泣いたりすることもあ れば、短いながらも楽しさいっぱいのユーモア小説に心をほぐされたり・・。 とりとめもない感想になったところで、時間がきたようですので(笑)、またネ。
2002年12月17日(火) |
坂東眞砂子『盛夏の毒』 |
短編なんですが、長編を読んだあとのような感覚が残りました。
土着伝奇ホラーの名手だけあって、今回も、何、それ?というものが登場します。 それは、ハメ、毒蛇の一種だそうです。耳慣れないものが出てくると、怖いもの 見たさにドンドン先へ先へと気持ちが急いて、一気に読んでしまいます。
一気に読んだのは、ハメのせいだけじゃありません。巧みな心理描写、男と女が 睦みあう凄さにドキドキ・・官能的とか、激しいとかいうより、凄い!のです。
妻に疑惑を持った夫がやったことは・・、こ、怖いです。 その後の妻と夫の日常は・・裏から(どこから?)見ると、怖いですねー。。 妻の不貞を疑う夫の話は、今までいろいろ読んできましたが、これは別格という感 じです。これほど強烈な作品は、忘れられないでしょう。
「小説すばる」15年、157冊から精選、と帯にするだけのことはありそうです。 「短編復活」(集英社文庫)、お買い得みたいです。
2002年12月15日(日) |
清水義範『苦労判官大変記』 |
時代小説のつもりで読み始めたら、次のページで力が抜けました。 「〜じゃん」、、って、は?軽く読める時代もの? キャハ!こ、これは親切、じゃない新説・珍説時代もの、でしょうか。
笑えますー!義経と弁慶のお話。義経の本当の姿は!おっと、真相というのと ちょっと違います。弁慶が実は本当の、いえ、本当というんじゃないけど、 ん〜〜、もどかし〜いぃぃ・・読んでみてください。
のどごし良く、ゴクゴク飲むように読めます。日本史好きでも、そうでなくても 楽しめそう。日本史に大胆に切り込んでくれました。最後は、しんみり。 戦いに勝つには、人々が応援したくなるような好青年ではなくてはならないと考 える弁慶・・わかるような気がします。ほら、選挙のとき、新人候補のポスター の印象って、大きいでしょ、ですよねー。(新人に限らず・・)
ところで、好青年というと、天草・島原の乱の中心となった天草四郎。 四郎の父、甚兵衛は天草の武士で、反乱を起こすために農民たちをまとめようと 美少年だった四郎を「神の子」にしたとか。( 21世紀こども人物館・小学館) リーダーの顔が凛々しいと、ついていきたくなるのかな。
2002年12月11日(水) |
志水辰夫『プレーオフ』 |
読み終えて、思わず筆者を確認しました。志水辰夫・・ども、初めまして。。 男性ですよね!?後の筆者紹介を見たら、デビュー作は『飢えて狼』。受賞歴は 日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、柴田錬三郎賞など、堅そうな? ものがズラリ。『プレーオフ』は異色の作品ですか?コバルト・ノベルのテイスト なので、読んでる途中で女性が書いたもののつもりになってました!
プロゴルファーを目指す章二の前に現れた美代子は、美人でスタイルも良くて旧家 のひとり娘。章二と結婚したい美代子は・・と、くれば、この先のストーリー展開 は、・・ですよねー。ゴルファーになるか、旧家の(この旧家はちょっと特殊ね) 入り婿になるか、もっと、悶々と悩んで欲しかったような気もしますが、すごい 爽やか漫画的で、この作品の前に読んだ篠田節子の『38階の黄泉の国』が残した 混沌とした苦味をみごとに流してくれました。濃厚な肉料理の次に、酸味の効いた シャーベットを食べた感じです。
・・あのー、、「キスの雨を降らせる」って、・・男の願望? キスの雨が好きな女性は、あんまりいないと思います。ど? ハーレークイン風な描写が・・いやはや。。 この「短編復活」(集英社文庫)、思っていた以上にバラエティ豊かです。
2002年12月09日(月) |
篠田節子『38階の黄泉の国』 |
好きな人とずっと一緒にいられたら・・いいですよねー! でも、ずっとじゃなくて、ずっーーーとだったら、どうでしょうか? 「ガリバー旅行記」に、不老不死の国が描かれていたのをふと思い出しました。 そこは、好きな人(というより、好きだった人)と永遠に暮らせる国・・いいな と思いますか?つ、つらいのでは・・笑 いつか終わりがあるから今がいとおし いように、限りある時間だからこそ、愛することができるように思います。
どんなに愛しあうふたりにも、別れのときが用意されているのは、喜ぶべきこと なのでしょうか。あの世、がどんな所かは知りませんが、あの世でも一緒にいた いなんて、思わない方がいいみたいです。終わりがないということは、苦痛でし かないようで……。出会った頃の気持ちを忘れ、軌道を外れていく想いは、愛で はなく憎しみに姿を変えていきます。ふたりだけの甘美な世界が地獄に変わるな んて悲しいです。
『38階の黄泉の国』─ 死者の世界を彷徨う男と女。訳あって結婚できなかった ふたりが死後の世界でいっしょになったとき、永遠に出口がない場所で憎しみあ っていきます。・・こ、怖い・・。
アンソロジーの良さは、いろんな作家の作品を次々に読んでいけることで、普段は 読まない作家が登場すると、ドキドキします。これがきっかけでファンになること もありますから。 「短編復活」(集英社文庫)の第六話は、椎名誠。恥ずかしながら初めまして・・ でした。笑
猫?舐める?祭?うーん、ヌメヌメした、おどろおどろしいタイトルです。 中は、・・異世界のお話。「私」が子どもの頃、毎年秋の終わりにひらかれた祭に は、遺伝子急速改造で作られた生き物が並び、闇の臓器マーケットがあり……。
・・椎名誠って、なんとなく爽やか冒険小説のイメージだったんですが・・。 うーん、こういう世界も描くんですね〜。うーん、、、(←両手を腰に) んー、感想を書きづらいです。ラストで明かされる「私」の正体に、あまり驚けな かったし、、こういう未来なのか過去なのか、たぶん未来だと思うけど、わからな い時点で引いちゃってしまうんです。いえ、異世界に未来も過去もないのかも。 異世界好きな方には興味深いかもしれません。
ただ、語り口が優しいんです。他の作品を読んでみたくなりました。 できたら、爽やかな世界に連れてって〜。
今日は、少々へこんでおります。 理由は・・近所の本屋さんが、、、お店を閉めちゃったんですっ!! うーむ、書店不況はうすうす感じてましたが、たまに行っていた本屋さんが なくなるのは、ホントに寂しいものです。ガラス越しに覗いた店内は、すでに 片付けが終わり、あるべき本がなくなった棚だけが無意味な空間に置き去りに されたようにありました。
去年も、閉めた本屋さんが2軒。今は、ドラッグストアーと雑貨やさんになって ますが・・。本屋さん好きなわたしでも、最近、ネットで本を買う回数が増えた なぁと思いながら、トボトボ帰ってきました。
北方謙三『岩』──ひとりの女のために命懸で波の彼方の岩をめざして泳ぐ男 と、その男に挑んだ男のお話。クールな文体とは裏腹に心情は重く、バランス 具合がいい感じです。小説を書くために生まれてきた方のような・・北方謙三。
書く人がいて、読む人がいる。街の本屋さん、がんばって! って、言うより本を読もぉぉぅうよぉぉ〜!!!!
2002年12月01日(日) |
伊集院静『蛍ぶくろ』 |
先週から「短編復活」(集英社文庫)を読んでおります。 今日は四番目のお話、『蛍ぶくろ』。蛍ぶくろは、つりがね草とも言い、下を 向いて咲く小指の大きさほどの可憐な花です。昔の子どもたちは捕まえた蛍を この花の中に入れて、その光を楽しんだのだとか・・ロマンチックですね。
タイトルが奥ゆかしいので、どんな女性が登場するのかと思ったら、な、なんと ホームレスの老婆でした。帰る家がない女の思い出の中で、最もいとおしい記 憶のひとつになっているのは、蛍ぶくろを見つけた幼い頃のこと──なんだか、 せつないです。蛍ぶくろの中で甘い香りに包まれて眠る蛍のように、誰かに包ま れる夢を見る女の想いは、ホームレスという境遇ゆえ、より哀れで・・。
この老婆が、自分に近づく靴音だけで、どんな人間なのか推理するところは鋭い なぁと感心しました。これは、伊集院静の鋭さでしょう。 最後のページは、柔らかな花びらそのもののようです。
蛍ぶくろ、見たことありますか?
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