水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
パソコンを修理に出しましたので二週間ほど休みます。 メールの返信が遅くなります。 ごめんなさい。
水野はるか
書店では、日本語をテーマにした本が売れてるそうですね。(by 朝日新聞) で、売上げを支えているのが中高年とか・・やっぱり。日本語本コーナーに 若いコはあまり見ないですもん。。日本語のこまやかな部分って、歳を取るほど 胸に染み渡るようで、歳を取るほど、紅葉がきれいに見えてくるのに合い通じる ものがあるように感じます。
繊細で豊かな日本語の表現にふれる。これが、まさに読書の醍醐味で、描かれ ている世界にすすっーと引き寄せられ、そして、そこに満開の桜があったとき、日 本語の深みにうっとりと目を細めたりします。
『夜桜』・・夫と別れ、息子を事故で亡くした綾子の家に、一晩だけ泊めてほし いと言って来た青年のお話。桜の描写の素晴らしさは言葉にできません。綾 子の深い喪失感に青年が投げ掛けたものは……胸を熱くしました。
「せつない話第2集・山田詠美編」(光文社文庫)第七話は、じーーーん。。
せつなさ:☆☆☆☆☆☆☆
桜で思い出すのは、浅田次郎『うたかた』(「見知らぬ妻へ」収録・光文社文庫・ 2002.01.30記)。美しい日本語で読む桜は、心の中ではいつも満開・・。
2002年10月25日(金) |
中上健次『残りの花』 |
古い家の取り壊し工事で発見された男の骨――荒れくれ者の十吉と盲目の 美しい女が住む家には、十吉の留守中に女に逢いに来る男が……はふぅ。。
うーん、またまた色っぽい文章です。ドックドク!谷崎潤一郎にリンクします。 むせかえるような匂いを感じて、せつなさどころじゃありません。。 目が不自由でも、相手が違えばわかるんじゃないかと思いますが・・。 わかっていたのでしょうか!わかってたんですよね、うーむ。。
「せつない話第2集・山田詠美編」(光文社文庫)第六話は、息苦しい・・。
せつなさ:☆☆
先週から、「TOEICの英単語 こうすれば速く覚えられる!」(池田和弘・日本 実業出版社・1300円税別)を読んでいるんですが、日本語の文章に英単語を 混ぜる形で、なかなか楽しめます。英単語の本をお探しの方、お試しあれ♪
2002年10月24日(木) |
田中小実昌『夏の日のシェード』 |
日本を離れ、アメリカの西海岸、カナダとの国境に近い町で暮らしはじめた ミヤと「ぼく」。のんびり屋のミヤとせっかちな「ぼく」は、お互いの性格を わかっていながら、腹を立てたり、自己嫌悪に落ちたり……。
なぜ、ふたりはこの町へ来たの? なぜ、外国へ?
素朴な疑問を抱いたまま読んでいたら、ラスト近くに「ぼく」が答えてくれま した。「ミヤと外国にいこうとおもったとき、当然のようにこの町にくること にしたのに」・・そっかー、わかるような気がします。 誰かを好きになろうと思ったとき、当然のようにキミだった、と言われたよう。
ミヤをどうしようもないほど愛しいと思う「ぼく」に、なつかしい思い出を反芻 するような、せつなさを感じずにはいられません。
「せつない話第2集・山田詠美編」(光文社文庫)第五話は、胸きゅん。
せつなさ:☆☆☆☆☆ この町は、シアトル。でしょ?
2002年10月21日(月) |
田辺聖子『雪の降るまで』 |
恋は読むものじゃなくて、するものだよ。そんな声が聞こえてきそうな小説です。 昼は服地問屋で経理事務をやっている平凡な女事務員、以和子(いわこ、46歳、 独身)の夜は、、愉悦の波におぼれそうなほど充実した夜・・。つきあう相手は ひそかに自分からより好みして、今の相手は51歳の大庭(おおば)。←妻あり!
田辺聖子って、こんな色っぽい小説を書く方だったんですねー! すごく官能的・・きゃん。。 先月読んだ『恋の棺』でも、森瑤子ワールドに近いものを感じましたが・・。 うーむ、読まず嫌いだったかもしれません(気のいいおばちゃん風だし)。
乾いた人にぜひぜひ読んでほしいです。恋がしたくなります、きっと。 逢うたびに完結して、つづきを感じさせない女と、自分にも他人にも余裕がある 男。成熟した大人の恋のお話は、ふたりの会話に深い味わいが・・。 「せつない話第2集・山田詠美編」(光文社文庫)第四話は、しっとり。。
せつなさ:☆☆☆☆☆☆ 極上の日本酒に酔った感じ・・かな。笑 ごちそーさま。
柵に沿った線路すれすれに建っている安アパートで暮らす充子(みつこ)と 歳の離れた愛人関係にあった「私」の日々は── く、暗いですぅーーー!
「せつなさ」をキーワードにした「せつない話第2集・山田詠美編」(光文社文 庫)の三つ目のお話ですから、ハッピーな展開なんて期待しませんが、それにし ても、暗い輪郭を始めに作って、そこから出ないように出ないように身を縮めた ような感じです。充子の生い立ち、母親のこと、ある日踏切で起きた出来事など、 悲しみを誘う破片に埋め尽くされていながら、香るせつなさはわずかです。 いえ、わたしがせつなさに麻痺してるのかも・・先月からせつない小説に浸りっ ぱなしですから・・。
せつない小説は、大きく二つに分けられます。 明るい光が降り注ぎながらも感じるのはせつなさという小説と、どうしようも なく暗い世界の中でせつなさしか見えない小説。前者の代表作家は山田詠美、 後者の方は水上勉、でしょうか。全く個人的な意見ですけど。
せつなさ:☆☆☆ 心象風景の中に踏切があるとき、遮断機が上がっていたら、うれしいですね。
有島武郎の『一房の葡萄』に続いて、旧かなづかいの文章が奏でるせつせつと した調べに酔いかけました。酔いかけた、というのは、うーん、どうもよく このお話がわからなかったのです。せつなさより、もどかしさが残りました。
ガス燈の仄明りの下で密会する瑞子(みづこ)と森。かつて恋人同士だったよう ですが、瑞子は今や人妻・・そこに、瑞子の夫が通りかかります。作品では、 「良人」と書いて「をつと」とルビがふってあります。嗚呼、深みを感じます。 旧かなづかいで読む会話文のはかなげな雰囲気が何とも言えません。嗚呼、、。 瑞子の夫は、ふたりに気づいたのかどうなのか、わからないままお話は進み、 とんでもないラストになだれ込みます・・うーん、よくわかりません。
ただ、おお!と感動したセリフがひとつ。 別れを切り出す瑞子に森は、「まるで○○○○○をしているようなものだ」と 言うんですが・・こ、これ名言ですねー!いつかどこかで使いたいので、覚えて おこうと思いました。(謎・笑)「○○○○○」は読むときのお楽しみに!
せつなさ:☆☆
2002年10月14日(月) |
有島武郎『一房の葡萄』 |
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)に続いて手にしたのは、「せつない 話第2集・山田詠美編」(光文社文庫)です。まだまだ、せつなさに浸っていた い今日この頃・・というか、せつな好きなんですねー。せつなさに酔っている時 の気持ちと身体の状態がどうしようもなく好き・・な、水野です。ハイ。。
そこで、この『一房の葡萄』、トップを飾るに相応しいせつなさです。 随分前に読んだことがあったので、なつかしさも手伝ってトプンと入りました。 ただ、以前に読んだときは子供だったせいか、感じるせつなさが少し変わったよう な気がします。
教科書にあった?ような有名な作品ですから、ご存知の方も多いと思います。 級友の西洋人の絵の具を盗んだ少年と優しい女先生のやりとりは、何度でも読み 返したくなります。そして、絵の具を盗まれた級友の翌日の行動に、ほっとした り、うるうるしたり。窓から白い手をのばして、一房の葡萄をもぎ取る先生…… 胸がいっぱいになりました。旧かなづかいならではの、味わい深い世界です。
時間のスピードはゆるゆると緩み、読書の時間までも豊かなものになりました。
せつなさ:☆☆☆☆☆☆
2002年10月12日(土) |
ジェームズ・ボールドウィン『サニーのブルース』 |
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)の最後のお話になりました。 山田詠美が選んだ作品ですから、きっと純愛もの・・と思ったら、な、なんと、 兄弟愛がテーマでした!うーん、さすが詠美さま、ついていきますーー!笑
せつない、って、男女の間だけじゃないんですよね。 家族愛、兄弟愛がつれてくるせつなさは、誤魔化しようがなくて、逃げることも できず、やっかいなものなのに関わらずにはいられず、まったく困ったものです。 先月末に読んだ山口瞳の『庭の砂場』も兄弟愛のせつなさでした。
『サニーのブルース』・・じーんとくるせつなさですね・・。 いつからか、少しずつ離れていった兄と弟。兄が埋めようのない大きな溝に気づ いたのは、弟サニーがヘロインの密売と常用で逮捕されたときでした。高校教師 の兄がサニーに約束したかったことは──。
サニーがピアノを弾くシーンが印象的です。音楽は祈り、そのもの。
訳は北山克彦。
せつなさ:☆☆☆☆☆☆☆☆ 高純度なせつなさに浸りながら14編の短編集を終えました。
2002年10月10日(木) |
テネシー・ウィリアムズ『欲望と黒人マッサージ師』 |
ホラーですぅーーー! このラスト、こ、怖い・・。
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)13番目のお話は、黒人マッサージ師 のもとに通うようになった白人サラリーマンの奇妙な人生。 どこが奇妙かって、、ぜひぜひ読んでみて下さい。
短いストーリーなのに、ドクンと読み応えがあります。 欲望や人間の未完部分について、テネシー・ウィリアムズ流の解釈も面白いです。 未完成でもいいじゃない・・と、つぶやきたくなったり。 償い・・つぐない・・何を償ったらいいのかな・・と、思いを巡らしてみたり。 訳は志村正雄。
せつなさ:☆☆☆☆☆(成分はホラー)
「欲望」と「希望」って、一字違いなのにすごい開きを感じませんか?
2002年10月08日(火) |
ヘンリー・ミラー『マドモアゼル・クロード』 |
Love is blind.─ 愛は盲目、なんて言葉がありました。 そそそ、そーなんです。あの女(男)は、特別な女(男)と思い始めたら、 もう恋に落ちているんです。そして、この恋は特別な恋。自分の恋は、ほかの 人の恋とは違う、なんて思うのは、立派な!?恋愛状態です。
そして、恋の魔法は絶大です。神経質なしぐさをこまやかなものに見せ、内向的 は思慮深く、お調子者は社交的に、おしゃべりな人は話題が豊富な人に、と、 自分に都合のいいように変換してくれるのです。
『マドモアゼル・クロード』、クロードという名の娼婦と彼女に恋した男のお話。 クロードは娼婦だけど天使なんだ、と男は語ります。彼女を大切に想う気持ちに 偽りは見えず、陽のあたる場所でふたりで暮らすことを考えるところが、なんと もせつなく・・。
大胆な性描写でかつて発禁になったヘンリー・ミラーの『北回帰線』を意識して 読むと、ややあっさり。後で、どっしり。訳は吉行淳之介。
せつなさ:☆☆☆☆
2002年10月06日(日) |
F・サガン『ジゴロ』 |
「ジゴロ」・・な、なんて懐かしい響き! 高校生の頃、サガンにハマッテおりまして、いろいろ読みました。 ジゴロは、作品にわりと良く登場する職業?で、サガン作品のキーワード、と認識 していた覚えがあります。
でも、この作品は読んでいませんでした。その名もズバリ『ジゴロ』、ドキドキし ながらページを捲ったのですが、うーん、なんだかピンとこないんですよ。年老い た女と若い男の話なんですが、老いていく自分を哀しむ女心って、藤堂志津子の 『やさしい言葉』(「贅沢な失恋」角川文庫)や皆川博子の『鏡の国への招待』 (「秘密の手紙箱」光文社文庫)の方がずっとわかりやすいです。
冷たい言い方かもしれませんが、人は皆老いていくし、気持ちは変わっていく んですよね・・。
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)に収録は納得。ほかの作家が選ぶ 「せつない話」も読んでみたいです。鈴木光司や瀬名秀明が選ぶ理系せつない話 など、面白いかもしれません。 せつなさというより、やるせなさ:☆☆☆ 訳は朝吹登水子。『悲しみよこんにちは』でサガンと出会ったときも、この方の 訳でした。高校生の頃をふっと思い出しました。
ロレンスの次がカミュとは!・・肩に力が入ります。 『不貞』って、どこか緊張するタイトルですねー。 内容は、果てしなく重く、暗く、つらく、苦しく、冷やかです。
商人の夫と共に異国に来た妻が、その孤独な心を開いた相手は夜の闇。 この妻の心の揺れが、ズシリときます。『菊の香り』のロレンスといい、 『不貞』のカミュといい、どうしてこんなふうに妻の気持ちがわかるのでしょう。
訳は窪田啓作。「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)十番目のお話は、 カミュ→『異邦人』→不条理→カミュ→ノーベル賞作家→カミュ→『不貞』。
せつなさ:☆☆☆☆☆
2002年10月02日(水) |
D・H・ロレンス『菊の香り』 |
ロレンスといったら、『チャタレイ夫人の恋人』があまりにも有名ですね。 有名すぎて、まだ読んでないことに今頃気づいたり・・。 実際は読んでないのに、なんとなく内容は知っている、そんな小説って多いです。 戴くメールにも、「本を読んだ気になります」というようなものがあって、 嬉しい反面、ちょっと……。ぜひぜひ、読んでみて下さい。
『菊の香り』、これはお薦めしたいです。 訳は河野一郎。美しい日本語にもうっとりします。 炭鉱で働く夫を持つ妻の、心の奥へ奥へと誘われて、夫婦って何だろうと 考えてみたくなりました。女心をここまで見つめるロレンスって・・!! ロレンス自身、英国中部の炭鉱町イーストウッドの生まれで、父親が炭鉱で 働いていたためでしょうか、坑夫一家の生活描写も繊細で素晴らしいです。
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)第九話は、ロレンスの偉大さを 改めて知ることに。
せつなさ:☆☆☆☆☆
若く美しい体を持つ黒人、パーシーと、その種の男性を「ベイビー」と 呼ぶマリア。 もう若くはないマリアが、パーシーと出会って知ったのは……。
うーん、詠美さまの世界ですねぇ〜。 言葉が生きております。特別な言葉ではないのに、こんな使い方をすることで、 文章のひとつひとつが輝きを放つようで・・クラクラ・・♪ 心地よいリズム感と情感に酔わせていただきました。
この余韻、いい感じですぅ・・♪
「せつない話・山田詠美編」(光文社文庫)第八話、「黒い絹」が意味する ものは・・甘くせつなく。
せつなさ:☆☆☆☆☆☆☆☆ マリアもパーシーも魅力的です。
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