水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。
2002年02月28日(木) |
2002年2月のまとめ |
2月最後の日なので、今日はまとめです。 listを見ると、いろいろ読みましたねー。2月も。 せつないお話からはじまって、ほんわかミステリへ。
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浅田次郎著『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)
『秘密の手紙箱・女性ミステリー作家傑作選3』(光文社文庫) (新津きよみ、仁木悦子、乃南アサ、藤木靖子、皆川博子、宮部みゆき、 山崎洋子、山村美紗、若竹七海)
『大密室』(新潮文庫) (有栖川有栖、恩田陸、北森鴻、倉知淳、西澤保彦、貫井徳郎、法月綸太郎、 山口雅也、)
加納朋子著『魔法飛行』(創元推理文庫)
加納朋子著『ななつのこ』(創元推理文庫)
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ベスト1は、『魔法飛行』と『ななつのこ』!!
金メダルがふたつになりました〜☆
明日は加納朋子著『掌の中の小鳥』を読む予定です。
エンピツMy登録をしてくださった方々、ありがとうございます。 毎日更新していきますので(たぶん・・)どうぞよろしく♪
じゃ、また明日!
2002年02月27日(水) |
加納朋子著『ななつのこ』 2〜7 |
一気にラストまで読んでしまいました。
身近にあったちょっとした事件を手紙にして佐伯綾乃に送る駒子と、手紙に 書いてある事実だけから、その事件の実像を解き明かしてくれる返信。 短編ひとつずつに、綾乃が書いた物語と駒子が出会った謎の事件が織り重なって 不思議な厚みを見せてくれました。
瀬尾さんとの出会い、返信の秘密など六話までのできごとが、最後の第七話で 結びあいます。花びらが集まって、一輪のきれいな花になりました。
お話を簡単に紹介しましょう。
第二話『モヤイの鼠』 友達のたまちゃんと渋谷の画廊へ個展を見に行った駒子。 後でもう一度見に行くと、変わっていることが!?
第三話『一枚の写真』 駒子のアルバムから無くなっていた一枚の写真が届きます。 差出人は、小学校時代のクラスメイトでした。今頃、なぜ?
第四話『バス・ストップで』 バス停でバスを待つ駒子は、奇妙なおばあさんを見かけます。 おばあさんがしていたことは?
第五話『一万二千年後のヴェガ』 デパートの屋上にあったビニール製の恐竜が盗まれ、発見された場所が 幼稚園の庭。誰が、どうやって?
第六話『白いタンポポ』 小学校のサマーキャンプにボランティアとして参加した駒子は、真雪ちゃんと 出会います。タンポポの絵を白く塗る真雪ちゃんとは?
第七話『ななつのこ』 真雪ちゃんが姿を消した。どこへ? そして、すべてがここにつながるのです。
特に良かったのは『一万二千年後のヴェガ』でした。
駒子が綾乃への手紙に書いたように、謎はいつも近くにあり、ただそれに 気づくことを忘れているのかもしれません。 綾乃の返信にあるように、ものを見る方向をいつのまにか決めてしまっている のかもしれません。
開かないドアは、[押す]じゃなくて、[引く]なのかもしれません。 行き止まりは、案外、横に出口があるのかもしれません。 なんだか、とりとめのない感想になってしまいました。
わたしの好きな詩人、八木重吉の詩に、こんな素敵な詩があります。
『もくもくと 雲のやうに ふるえていたい』
なぜ?と思うのは、こころをふるわせようとしていること。 そのなぜに、答えてくれる人がいるのは、幸せだと思います。
加納朋子著『ななつのこ』(創元推理文庫)
ありがとう。
2002年02月26日(火) |
加納朋子著『ななつのこ』 1 |
『魔法飛行』は『ななつのこ』の続きだと、本にあったので、いっしょに買って いました。それなら、『ななつのこ』から読めば良かったんですが、タイトルに 惹かれて『魔法飛行』を先に読んでしまったんです。順番が逆になったけど、 今夜からは『ななつのこ』です。これも連作短編。 瀬尾さんとは、どこで出会うのでしょう。楽しみ楽しみ♪
七つの短編の最初は『スイカジュースの涙』です。 入江駒子は、表紙に一目惚れして買った短編集『ななつのこ』を読み、著者の 佐伯綾乃に直接語りかけたいという欲求に駆られ、ファンレターを書きます。 本の感想に身近に起きた「スイカジュース事件」のことを書き添えて。 勢いでだしたファンレターに、この事件の謎を解く返事がくるとは!
表紙イラストに一目惚れは、わかります〜♪ わたしも、よくあります(タイトルに一目惚れも多いです)。 駒子が買った『ななつのこ』の表紙についての説明は、加納朋子著『ななつのこ』 の表紙イラストに近いものがあります。郷愁を誘う素敵なイラストです。 『魔法飛行』の表紙イラストも同じく菊地健氏でした。←お名前、覚えました!
駒子が読む『すいかお化け』、これは佐伯綾乃が書いた『ななつのこ』の中の お話なのですが、ホロリとします。 『ななつのこ』を読みながら、綾乃の『ななつのこ』も読むわけで、少し、 人に紹介するにはややこしいですねー。
第一話『スイカジュースの涙』は34ページ。ドキドキしながら読んだ15分。 綾乃の推理は鋭く、語りかけに思いやりを感じます。
ファンレター、書いてみようかな〜♪ 書いたこと、ありますか?
2002年02月25日(月) |
加納朋子著『魔法飛行』 4 |
読み終えましたー『魔法飛行』! 良かったです。最後のお話で、今までの謎がハッキリしました。
三番目の手紙に胸騒ぎを覚えた駒子は、瀬尾さんを訪ね、いっしょに手紙 の主を捜します。今まで駒子が不思議に思っていたことが、思いがけない 形で次々にその姿を見せていきます。
四番目のお話のタイトルは『ハロー、エンデバー』。 ご存知の通り、スペースシャトルのエンデバーです。駒子とエンデバーと 瀬尾さんが、どんなふうに結びつくのか、ぜひ読んで欲しいと思います。
ラストがきれいです。 ハッピーエンドとは少し趣きが違います。でも、ハッピーエンド。 ミステリとは少し体感温度が違います。でも、ジャンルはミステリ。 オトナではないけれど、子どもでもない駒子。 駒子を少し離れたところから優しく見守る瀬尾さん。
すっと胸にしみいるものは、加納ミステリならではと思います。 今夜読んだ最後のお話は88ページ。ほんわり温かくなった45分。 読んで良かったです。
解説は有栖川有栖氏。 加納ミステリのロジックを巧く捉えています。 解説で感動したのは久しぶりです。泣きたくなるような解説です。 褒め称えるわけでなく、そう、有栖川ロジックの解説なんです〜♪
☆加納朋子著『魔法飛行』は、ショーティーさんに教えていただきました。 ショーティーさん、ありがとうございました。
2002年02月24日(日) |
加納朋子著『魔法飛行』 3 |
子どもの頃の冬は、今より寒かったように思います。 地球温暖化は確実に進んでいるんですね。なんだか心配です。 子どもの頃、と言っても5歳くらいの頃、寒い日には「かいじゅう〜〜〜」なんて 言いながら、ハァーーーって、白い息をはくのが面白かったですー♪
息の中の水蒸気が、外気の温度が低いとそれが水に変わって、湯気のように白く 見えるから、なんて理由はわからなくても、子ども心に、息の白さで寒さを 確認してました。(あん、なつかしー。うふっ。) 身近な魔法みたいなものでしたね。 笑
『魔法飛行』の第三話は、タイトルにもなっている『魔法飛行』と誰かから届い た最後の手紙です。
駒子の女子短大の学園祭の日のお話。 受付をする駒子と野枝のところに、野枝の幼なじみの卓見くんが現れます。 そして、遊びにきていた小学生たちと駒子、野枝に不思議な実験を見せてくれる のです。
幼なじみって、いいですよねー。野枝と卓見くんを見ていると、幼なじみが いないことが、ちょっと寂しかったりします。もし、タイムマシーンがあったら、 迷わず子ども時代に戻って、幼なじみをつくりたいです。卓見くんのような、 ボイジャーと宇宙人の話が好きな幼なじみ。 笑
この第三話は74ページ。卓見くんの魔法に子ども時代を思った40分。 瀬尾さんの言う魔法の飛行には、ぐっときます・・。 誰かから届いた最後の手紙は、不吉な感じですね〜。 うーん、この手紙、なぜ、名前がないのでしょうか。
明日は、最後のお話『ハロー、エンデバー』です。 今までの差出人不明の手紙が何を意味するのか、謎はすべて解けるでしょうか。 じゃ、また明日!
2002年02月23日(土) |
加納朋子著『魔法飛行』 2 |
暖かい一日でした。もう春ですねー。 TVニュースで、熱気球の大会があったことを知りました。 色とりどりの熱気球が、すみれ色の空にふわりふわりと浮かぶ様子は、テレビで 見てもきれいなのに、近くで見たらもっときれいだったでしょうね。
熱気球の原理は知っていても、空高く昇ったものが再び地上(それも目的地)に 迷うことなく降りることができるのは不思議です。 そういえば、普段の生活の中にも、不思議なことはたくさんあります。 (熱気球は、普段じゃないけど! 笑)
不思議なこと。 朝からテレビで「今日の運勢チェック」をやるのは、なぜ? なぜなのですかぁ〜? そんなに日本人は、運勢を知りたいのですかぁー? 占いタイムに、ニュースのひとつふたつ、十分読めるじゃないですかぁ〜! その上、番組ごとにラッキーな星座が違うじゃん! 謎は深まるばかりです。
おっと、すみませぬ。 今夜は、『魔法飛行』の二つ目のお話について書くんでした。 なぜ、占いの話になったんでしょう・・? 謎だ!な訳ありません。 いやはや、そうそう、熱気球に気を取られちゃって・・。
今夜のお話は『クロスロード』、そして、誰かから届いた二番目の手紙です。 交差点で車に轢かれ亡くなった子どもの幽霊がでるというウワサを聞いて、 駒子はたまたま出会った少年とその交差点へ行ってみます。交差点の高架の柱 には、亡くなった子どもの父が描いた子どもの絵がありました。 謎は、この絵のことなのですが、瀬尾さんの推理が、見事ですー!
昨日、初めて読んでから、もうすっかり瀬尾さんのファンになってます。 きっと、あなたもファンになるでしょう。 そして、駒子がいい感じです。どんな、と聞かれると、困るなぁ・・。 もぉ、いい感じ!
『クロス・ロード』は、66ページ。ゆっくり読んで33分。 絵を描いたお父さんの気持ちを思うと、、涙。。。 二番目の手紙は、ちょっと深刻な状況のようです。 誰からかわからない手紙、って怖いですよ。たとえ、ラブレターでも。でしょ?
2002年02月22日(金) |
加納朋子著『魔法飛行』 1 |
どこか心惹かれるタイトルです〜☆ 四つの短編集なのですが、三通の誰かからの手紙が、お話のあとについています。 連作短編のようです。
主人公は入江駒子。「わたしも物語を書いてみようかな」と瀬尾さんに言った ところ、「じゃあ書いてごらんよ」と励まされ、駒子は手紙で近況報告をする ような気持ちで、物語を書き始めました。日常の中の奇妙な出来事をつらつら 綴る駒子。そして、その奇妙な謎を、瀬尾さんは、明快に紐解いていきます。
今日読んだのは、最初のお話、『秋、りん・りん・りん』 これは、駒子の大学に現れたある女性の話です。 出席カードに、いくつもの名前を書く女性を駒子は不思議に思います。 駒子は、彼女が着ている茜色のシャツから、「茜さん」と内心呼んでいましたが、 この茜さん、駒子に関心を持っているようです。彼女は、一体、何者なのか。
文章が活き活きしていて、読んでいて気持ち良かったです。 駒子の友人たちの無邪気、天真爛漫ぶりが、いいですねー。好きですよ〜。
瀬尾さんの手紙もわたし好みです。知的で、優しくて、謎解きもスマート。 駒子が書く物語についての感想も、ほんわりと暖かくて・・ふはぁ〜♪ あぁ〜〜ん、ベタほめですね〜。(瀬尾さんに・・はあと♪) この本を買って良かったと思う一瞬です〜♪ あ、これは、創元推理文庫です。表紙は少女と回転木馬のイラストです。 このイラスト、素敵です☆
加納朋子著『魔法飛行』の第一話、『秋、りん・りん・りん』は67ページ。 駒子と瀬尾さんに会いたくなった35分。 茜さん、と名づけた駒子のセンス、この本全般を期待させます。 りん・りん・りん、の意味は、ドキッとしたあと、つらいものがありました。
明日は、第二話。 じゃ、またね。
2002年02月21日(木) |
山口雅也著『人形の館の館』 |
いよいよ、『大密室』最後のお話です。 これは、面白かったですーー!!
マニアの世界ですね〜。じゃなくて、マニアというと、正統派?マニアの方には 異論があるでしょう。(これって、問題発言?)オタクの世界かな? マニアとオタクは、どう違うのか、と聞かれたら、何と答えますか? マニアはスーツで、オタクはトレーナー、?・・うーん、偏見かもしれないです。
ま、それはおいといて、・・!!わかりました!!
倒錯世界です!
かつて大学時代の友人で、推理作家になったヒュー・グランドを、15年ぶりに 自分の館に招いたニコラス・ブランストン。ニコラスは、ドールハウスの蒐集で ヨーロッパ随一となっていました。ニコラスが集めたドールハウスの数々は 素晴らしく、中には、探偵小説にでてくる殺人現場を元にしたものもありました。 彼が、ヒューを招いた理由は・・。
ラストの4ページで、うひゃーー!!状態でした。 どんな状態かは、読んでみてください。
あまり余計なことを書くと、楽しみが半減しそうなので、このくらいに。 (決して、手抜きではありません。)← 言うほどあやしい。笑
山口雅也著『人形の館の館』は『大密室』(新潮文庫)に収録。 59ページ。ぐいぐい引きずり込まれた30分。 ドールハウスの数々を、実際、見てみたいです〜♪
エッセイ『しんぎんする背中の影に』からは、密室のお題をもらった時の困惑が、 伝わります。そうですよね。書き尽くされているような気もしますもん。
でも、こうして、新しい密室が生まれました。
『大密室』を読み終えて・・『ある映画の記憶』と『ミハスの落日』、そして 今日読んだ『人形の館の館』は、特に印象的でした。
千街晶之氏の密室論も、ずっしりきます。
明日からは、加納朋子著『魔法飛行』を読みます。 じゃ、また明日!
2002年02月20日(水) |
法月綸太郎著『使用中』 |
中堅推理作家の新谷と若手編集者の桐原が、喫茶店で打ち合わせするところから 始まります。「密室」をテーマにした短編を書いて欲しいという依頼、まさに、 今回の『大密室』を思わせます。そして、事件は密室で起きます。
ちょ、ちょ、ちょっとーぉ、こういう密室、使ってほしくないんですよねー。 女性読者は、引きますぅ〜。 それに、このラストは、あんまりですよー。 ここまで、もってきておいて!
目が止まったのは、犯人の動機です。 第三者から見たら短絡的のように著者は見ていますが、十分動機になるかもしれ ません。犯人の気持、わかりますねー。擁護はしないけど。
面白かったのは、書き出しのところ。 作家と編集者のやりとりは、ふだんの著者の様子を窺うようで、笑えます。
法月綸太郎(のりづき りんたろう)著『使用中』は『大密室』(新潮文庫)に 収録。44ページ。そわそわした20分。 書き出しでつかまれて、ラストで放り出された感じ。
エッセイ『密室 クイーンの場合』は、読み応えがありました。 エラリー・クイーンを愛しているのが、よくわかります。
2002年02月19日(火) |
貫井徳郎著『ミハスの落日』 |
舞台は、スペインの小さな村、ミハス。 ジュアンがここへやって来たのは、大会社の会長、オルガスから、会ってほしい と望まれてのことでした。白亜の邸宅で、オルガスがジュアンに話すのは、今は 亡きジュアンの母、アリーザへの詫びだと言うのですが・・。
密室のあり方が、この短編集の中では異質です。 密室ミステリというより、テーマは他に光を放っているようです。
なにげなく言った言葉が、その人に告げた最後の言葉になるかもしれません。 言いたくても言えなかったり、言うつもりでいた言葉と反対のことを言ってしま ったり、言わなくてもいいことを言ったり、まったく、人間は、後悔するように できているのかな、と思うことがあります。
オルガスがアリーザに言った言葉は、若さゆえと思うにはあまりにつらく、彼女 を思うと涙がこぼれそうです。
そして、オルガスの話す「神」の概念は興味深く、二度三度と、読んで欲しい お話です。トリックは、少し物足りませんが・・。
貫井徳郎著『ミハスの落日』は『大密室』(新潮文庫)に収録。 54ページ。いろいろ考えさせられた28分。 冒頭を読んだときは、これほど深みのあるお話とは思いませんでした。 (単なる遺産相続のお話かと・・ 苦笑)
エッセイ『密室は遠きにありて思うもの』では、国内外の6作品が紹介されてい ます。 !この作品がオススメなのねー、読んでみようかなぁ〜♪←い、いつ読むのぉ?
本を買うと、すぐに読むので、積んどく本はありませんが、読んでみよう本が頭 の中にぎっしり並んでいます。飽和状態なのですが・・読みたいですぅーー!
んー。なんとかせねばなりませぬ。 あれっ?・・この6作品を「すべて読んだら、間違いなく業を背負います」・・ はぁ、、背負うのねー重い十字架を〜、、って読んでから言いましょう。
じゃ、また明日!
追記:清水一行著『愛・軽井沢』では、スペインで秋川と景子が出会います。 わたしの心に残るベスト1小説です。この話は、また別の機会に。
2002年02月18日(月) |
西澤保彦著『怪獣は密室に踊る』 |
奇想天外な設定が強烈でした。 何しろ、怪獣です! この短編集は、8人の作家が「密室」をテーマに競作したのですから、同じ設定 にならないように、いろいろ考えたとは思いますが、まさか、怪獣とは!
おれの悪友、京介から、マンションの自室に監禁されているという連絡が、これ また悪友の正太郎のケータイ電話に入ります。おれと正太郎は、京介を救出しよ うとケータイ電話で連絡をとりながら、彼のマンションに向かいます。 この監禁事件に、怪獣はどんなふうに関わるかは、読んでみてください。 笑
まさか、こんなことあるわけないでしょう・・と思いながらも、もしかしたら、 と思わせる楽しいお話です。 遊び心を感じるテンポと、会話が面白いですねー。 プロフィールを見ると、分身・時空移動・未来予知などの奇想を駆使した作品を たくさん書いていらっしゃるようです。
西澤保彦著『怪獣は密室に踊る』は『大密室』(新潮文庫)に収録。 73ページ。クスリと笑って34分。 監禁されたら、まわりの状況をよく見ましょう。
エッセイ『密室ジャンル独立計画の陰謀(笑)』に、さりがなく自作の宣伝が! すべて会話だけのエッセイです。会話文が巧いですー。
ぜんぜん関係ないけど、『踊る大捜査線』をまたテレビでやってほしいですぅ!
もひとつ、関係ないけど、コナンくん、そろそろ元の姿に戻してあげて!
2002年02月17日(日) |
倉知淳著『揃いすぎ』 |
これも、シリーズ物のようです。「猫丸先輩」、聞いたことはありましたが、 読んだのは初めてでした。ミステリは、シリーズが多いですよね。 知っている探偵の活躍は、安心してすんなり推理に入っていけるからでしょう。
猫丸先輩はライターです。雑誌編集員の八木沢に、自分から接待を希望します。 ちょうど、出版社にやって来た、売れないライター椿も交えて三人で中華料理店 で食事をするのですが、椿が自分の体験を元にした謎解き問題を出します。 この問題が、本編になるのです。
うーん、密室と言えば密室です。 タイトルの『揃いすぎ』は、こんな意味だったんですね。 よく考えましたね。などと、あっさりなのは、謎解き問題より、猫丸先輩が気に なって、肝心の本編はうわの空状態に近かったんです。(ゴメンなさい)
猫丸先輩、面白いんですもん。 中華料理店の朱色のターンテーブルを回して遊ぶなんてっ! 天真爛漫な探偵って、好きです♪
倉知淳著『揃いすぎ』は『大密室』(新潮文庫)に収録。54ページ。 中華料理が食べたくなった27分。 謎より猫丸先輩が強かったです。
エッセイ『密室をテーマに何か書きなさいと要請されてちょっと困惑してしまっ たという内容の雑文』は、軽快に読めました。(タイトル、長すぎ!)
≪倉知さん、エッセイ、面白いですー!もっと、読みたいですぅ〜。≫
((本文以上におまけのエッセイの方が面白かったです。))← 小さなつぶやき
エッセイ集はあるのかな?探してみよ〜っと♪
2002年02月16日(土) |
北森鴻著『不帰屋(かえらずや)』 |
民俗学を取り入れたミステリ、蓮丈那智(れんじょう なち)シリーズです。 那智は民俗学の学者で、助手の内藤三國(みくに)と、ある調査に行きます。 依頼したのは、社会学者の宮崎菊恵。東北にある彼女の生家の離屋を調べて、 不浄の間であったことを証明してほしいということでした。そして、事件は雪 降る夜、離屋で起きます。
雪の密室。 ミステリーマニアでなくても、その様式美には、心惹かれますね〜。 始まる始まる期待感で一杯に!これぞ、密室!
民俗学ミステリだけあって、「女の家」「雪僧侶」など、神事や信仰のお話も でてきて、なかなか興味深く読み進められました。
北森鴻(こう)著『不帰屋(かえらずや)』は『大密室』(新潮文庫)に収録。 57ページ。民俗学のレクチャーを受けながらの30分。 那智先生、沈黙の使い方がお上手です。
エッセイ『密室からの脱出』では、著者から出題があります。 回答を150字以内で説明して、正解者には、北森鴻の新刊を下さるというのです が、こ、これ、、、どこに送ればいいのですか?新潮社付けでいいんですか? 北森さんっ!?
2002年02月15日(金) |
恩田陸著『ある映画の記憶』 |
な、なんと、これも密室なのですねー!うなりましたーー!! 密室がテーマなので、いわゆる密室、つまり・・ほら、土蔵みたいな、扉にかんぬ きが掛かって、窓は天井近くに明り取りの小さな窓がひとつ、みたいな密室を勝手 にイメージしていたので、びっくり!驚愕の色を隠せなかったって感じです。笑
叔父のお葬式の帰り道、「私」は記憶に何度となく甦る映画のワンシーンの 話を母にします。幼い頃に見たその映画の記憶は、ある夏の日、入り江のはずれの 岩の上で溺死した叔母の死の謎を解くきっかけになるのでした。
密室じゃないけど、密室なんです!! うーん、説明がもどかしいですー!読んでみてほしいです。こんな密室があるなら 世の中、どこにでも密室はあるんですね。屋根も壁もなくても、密室なんです!
映画の記憶が甦る描写は、ぐぃぃーーっと引き込まれました。
恩田陸著『ある映画の記憶』は『大密室』(新潮文庫)に収録。 33ページ。書き出しからラストまで、おおお!!の15分。
エッセイ『密室、この様式美の極み』で、この映画について語ってくれています。 なるほど〜。 なんだか、すごーく、読んで良かったーと達成感と充実感があります。 やん、わたしがこの作品を書いたわけじゃないのにぃ〜。 ≪大満足≫ 笑
2002年02月14日(木) |
有栖川有栖著『壺中庵(こちゅうあん)殺人事件』 |
!!これは、読み応えがありそうな短編集です。『大密室』(新潮文庫)!! 8人の作家が、密室をテーマに競作しています。その上、各人の密室についての エッセイつき。顔ぶれがすごいですねー。 有栖川有栖、恩田陸、北森鴻、倉知淳、西澤保彦、貫井徳郎、法月綸太郎、 山口雅也、・・わぉ〜♪ そして、本の最後には、ミステリー評論家の千街晶之 (せんがい あきゆき)氏の密室論が!
最初は、有栖川有栖著『壺中庵殺人事件』。 地下室で自殺したかに見えた男。頭にすっぽりと壺を被っていたのは・・。 密室での偽装縊死(いし)の真相に、臨床犯罪学者の火村英生先生、柳井警部、 助手で推理作家の有栖川有栖が挑みます。
この火村先生、キザですねー! セリフにアハッ!笑
トリックが解き明かされていくところは、わかり易いのですが、犯人が壺を被せ た理由がなんともやりきれませんでした。
有栖川有栖著『壺中庵殺人事件』は『大密室』(新潮文庫)に収録。 29ページ。すらすら読めた12分。有栖川作品は、読みやすいですー。 ただ、この作品、後味がほの暗いです。
エッセイ『密室のある風景』は、楽しかったですよ♪
先月、1月7日〜15日に、『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)を読みました。 短編8作品、ショートショート4作品、どれも面白かったです。 特に『夜汽車は走る』は秀逸だと思います。
2002年02月13日(水) |
若竹七海著『暗闇の猫はみんな黒猫』 |
短編集『秘密の手紙箱』の最後の作品です。 今まで読んだものは、なんとなく古めかしく、いかにも手紙箱という感じでした。 手紙箱というと本当に秘密めいていて、このタイトルは、巧いなぁーと感心します。
若竹さんは、大学時代、ミステリクラブにいらしたそうで、お話のすすめ方が、 洗練されている印象を受けました。相当、ミステリを読まれたのではないでしょ うか。←だから、ミステリクラブだったんですってばぁ!笑
ミステリといっても、あっと驚くようなトリックがあるわけじゃありません。 密室も山荘も殺人もないけれど、これもミステリ。 三ヶ月前に起きた傷害事件。ぼくたちは、事件の関係者の証言を集めたビデオテ ープを作ります。そのテープを見た生活指導の先生がぼくに言ったことは・・。
ウワサをもとにした証言だけのテープで真犯人がわかるでしょうか。 それは、正義の行使なのか、主観から作られたフィクションなのか。 怖いのは、事件そのものより、野次馬的まわりの人々の心に潜む悪意なのかも しれません。
若竹七海著『暗闇の猫はみんな黒猫』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 39ページ。ずんずん考えさせられた18分。 証言って、一歩間違うと恐ろしいものになりますねー。(怖いよぉ〜)
『秘密の手紙箱』を読み終えて・・『灰色の手袋』と『うすい壁』は特に 良かったです。随分昔の作品ですが、この短編集に入っているのは納得です。 面白い作品は、時代を超えて、読者の心をつかむのですねー。
明日からは、話題の『大密室』(新潮文庫、最新刊)を読もうかなと思います。 ミステリ界をリードする8人が、密室のトリックに挑みます。 最初は、有栖川有栖著『壺中庵(こちゅうあん)殺人事件』 ロジカルな謎解きに期待しましょう。
今日も読んでくださって、ありがとうございました。じゃ、また明日!
2002年02月12日(火) |
山村美紗著『憎しみの回路』 |
トリックに情熱を注いで書かれたのが、ビシバシ伝わりました。 山村美紗さんが急逝して6年。新しモノ好きと、インタビューで答えていらした ことを思い出します。新しい製品には、新しいトリックのヒントが、たくさん 見えていたのでしょう。
もし、今、山村さんがご健在で、電器やさんを覗いたら、有り余るほどの機能を 満載した製品に感嘆の声を上げ、斬新なトリックで読者を喜ばすミステリをたく さん紡ぎ出してくださるのではないでしょうか。
『憎しみの回路』、いかにもミステリ、という良いタイトルですー。 見る方向を暗に教えてくれるようで、好きですよ〜。こういうタイトル!
婚約者を殺された朝子が、独りで犯人探しをします。手がかりは、彼が死ぬ間際 に受話器を握ったまま残したダイイングメッセージ、03の女。
ハイ、もうこれだけで、勘が鋭い人なら、この先がどうなるかわかりますよね。 プッシュホン電話が世に出たばかりの頃の作品です。 電話の説明が、不思議と新鮮に感じました! 山村美紗著『憎しみの回路』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 40ページ。プッシュホン電話のことはわかっていても、楽しめた20分。
電話は進歩しましたねー。ハンカチのようにケータイ電話を持つ時代です。 写メール、って使ったことあります?どうですか?
2002年02月11日(月) |
山崎洋子著『わたしが会った殺人鬼』 |
はぁ〜〜ぐったりしましたーーー。 作品の中に、「・・・・・・。」と「?」が多すぎて、読み疲れました。 女のひとの作品に多いような、「・・・・・・。」と「?」。 こんなに頻繁に登場するのは、初めてです。余韻を残したくて使うのではないか と思いますが、多すぎると逆効果ですねー。 と言うわたしも、よく使います。くせになっているような・・。←ほらネ 笑
『わたしが会った殺人鬼』、そのままのお話で、わたしが殺人鬼に会うのです。 作品では、わたし、じゃなくて、あたし、となっていたのがヘンに気になりまし た。なぜ、わたし、じゃないのですかぁ〜!!
そもそも、あたし、というのが好きではないので、まぁ、これは、まったく好み の問題ですが、あたし、という文字を目にしたとたん、身構えます。 あたい、も苦手です。わたくし、は、平気です。私、と漢字もOK。
僕、俺、ボク、オレ、おいら、拙者(笑)、なら、どれも苦手ではありません。 キャラとかけ離れたものは、どうかと思いますが。 一番好ましいのは、わたしと僕、ですねー。
山崎洋子著『わたしが会った殺人鬼』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 21ページ。あたしの告白につきあって、ぐったりした8分。 少しキモチ悪いです。頭の中が混乱します。 独り暮らしOLの連続殺人事件の犯人はこんなところにいたんです。
≪注意・読むなら、体調がいいときに!≫
2002年02月10日(日) |
宮部みゆき著『弓子の後悔』 |
待ってましたっ!宮部さん!この方の活躍は今さら書くまでもないですねー。 みゆき、と言ったら「宮部みゆき」でしょう・・。
あ、「中島みゆき」さんもご活躍です!『地上の星』のロングヒット、すごい! 2年前の夏にCDが発売されて、いまだに30位内にランクインしてるんですから、 すごすぎ!いい歌ですー。大好きですよ。あの歌を聴くために「プロジェクトX」 を見るくらいなんですから。ホントホント。
それで、今日読んだのは、宮部みゆきさんの『弓子の後悔』です。 ありそーありそー、こんなこと。 弓子が高校のクラス会に行ったら、15年前、高校生のときに、弓子が振った男の 子が売れっ子のシナリオライターになっていたんです。その上、同級生と結婚し ていた・・ありますよー。こんなこと。ガラリと変身してる人がいるものです。 まぁ、売れっ子のシナリオライターは、なかなかいませんけど。笑 おとなしかった女の子が、会社を起していたり・・。えっ!彼女がっ!?って、 驚いたことがありました。
そこで、弓子は後悔するんです。振ったことを。振らなきゃ今頃は結婚して、 彼の奥さんになっていたのに・・って!それは、わがままだよ、弓子さんっ! 弓子はあの日に戻りたいと願うあまり・・。
過去には戻れないんですよね。過去あっての今だから・・。 それに、弓子の後悔は不純です。売れっ子シナリオライターの奥さんになりたい だけです。彼の人気が無くなったときも、奥さんでいられるのぉ? うーん、弓子の様子じゃ、はなはだ疑問。人の肩書き、欲しがっちゃダメダメ! 自分が売れっ子シナリオライターになりたい、なら、頑張ってほしいけど。
宮部みゆき著『弓子の後悔』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 35ページ。過去あっての今を確認した18分。 後半の展開には、ちょっと不満。。いきなり、あんなお店は、ないでしょう。。
この図書室で、2001年12月6日〜12日に宮部みゆきさんの短編集『人質カノン』 を読みました。中でも、『生者の特権』『濡れる心』が特に良かったです。
2002年02月09日(土) |
皆川博子著『鏡の国への招待』 |
丁重な文章です。と、いうのが第一印象。読み進んでいくと、しとしと感が ぬめぬめ感に変わって、まったりしてきました。
バレエ研究所の主宰者でバレリーナだった明子の死に、ふと疑問をもった助教の 私。疑惑の目は、明子の姉や明子の年下の夫に向けられますが・・。
この私の孤独感がせつせつと綴られて始まります。 寂しいですねー。若いときをバレエに捧げ、と言うより、主宰者の影となり働き づめで、恋をすることもなく、気がついたら明日は50歳の誕生日だなんて・・。 40代最後の夜、思い切った行動にでるものの、身体が対応できず・・・ えっと、、この辺のことは、ここでは書けないので、ぜひ読んでください。 すっごい寂しさを感じます。
そして、主人公の孤独感が後半を引き立てます。虚構でもいいから、誰かとつな がりたいという思いは、狂気をつれてくるようで憐れです。
注目したのは、「泪」「涸れる」「憐れむ」「独り」などの漢字の使い方でした。 どうしようもない寂寥感がわっと押し寄せたのは、こんな漢字にもあったのではな いでしょうか。涙、枯れる、哀れむ、一人、と比べてみてください。
皆川博子著『鏡の国への招待』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 45ページ。こんなに寂しい女のひとがいるなんて・・の24分。 明子の姉も寂しさの塊りのようで、可哀相すぎますー。。
2002年02月08日(金) |
藤木靖子著『うすい壁』 |
昔の女の人は奥ゆかしいんですねー。 この作品、初出誌が昭和36年の「宝石」なので、この作品にでてくる人妻、信子 は昭和30年代の奥さんなのでしょう。夫に愛人ができても耐え忍び、気づかぬ ふりです。
夫の浮気に悩んで、幼い子供と無理心中した姉の真相を妹の圭子が探っていくの ですが、姉の命を奪ったものは、思いもよらぬものでした。
奥ゆかしさは、死んだ信子だけでなく、この作品全般を覆っています。 読者の想像を掻き立てる表現は、信子の哀しみの色を濃くしていきます。 そして、妹、圭子の哀しみをも。
藤木靖子著『うすい壁』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 34ページ。ドキドキ・ドクンドクンの18分。お子ちゃまには刺激的。やん。 なんだか忘れられない小説になりそう・・。
藤木靖子さんは1933年生まれ。 '60年に『女と子供』が宝石賞に入選してデビュー。 推理短編、ジュニア小説を残して'90年に死去。 宝石賞は1960年〜64年にあった公募の短編推理小説賞で、現在はありません。
2002年02月07日(木) |
乃南アサ著『津軽に舞い翔(と)んだ女』 |
いまひとつピンとこなかったんですよね〜。はい。。 うーん、こ、これ、ミステリだと思って読むと、・・・肩透かし、という感じ。
占い師に、あなたの運命の人は北にいると言われて、ひとりで津軽に行く女が いつのまにか村のトラブルに巻き込まれていくんですが・・。
占い師の言うことを鵜呑みにして、舞い翔んでいく女がいるんでしょうか・・。 3ページ読んだところで、ほよよ?。 でも、乃南さんの作品だからと、そのうちそのうちと読んで、あれれ? 津軽の村で起きているトラブルに、なんで? それで、運命の人は、その人なの?
タイトルには、舞い飛ぶにわざわざ「飛翔」の「翔」を充てているくらいなので 期待したのにぃ・・。。。ちょっと、予想と違いました。
乃南アサ著『津軽に舞い翔(と)んだ女』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に 収録。46ページ。運命の人を待った22分。 あなたは占いを信じますか?
乃南アサさんの本は、この図書室では、2001年12月13日〜17日に『家族趣味』、 引き続き18日〜24日に『悪魔の羽根』を読みました。どちらも短編集。 粒揃いで面白かったです。
水野の図書室は昨年、2001年11月19日にオープンしました。 読んだ本のことをつぶやいています。なんとか続けていけそうなので 立春を過ぎた2日前の2月5日(火)に、エンピツ投票ランキングに 登録しました。右下の[投票]をカチッと押してくださると ・・・明日もがんばれます。 ご来室、ありがとうございました。
2002年02月06日(水) |
仁木悦子著『灰色の手袋』 |
兄妹コンビの仁木悦子と雄太郎が探偵役をつとめています。 雄太郎兄さん、素敵ですねー。優しいですよ。 雄太郎は植物学の学生なんですが、クリーニング屋さんに妹のトッパー(ジャンパ ーのことですよね、たぶん)を受け取りに行ってあげるんです。 ところが、店員のまちがいで雄太郎が持ち帰ったのは違うトッパー。憤慨した悦子 がクリーニング屋さんに行って、事件の第一発見者に・・・。
殺人事件なのですが、この兄妹探偵のおかげで全体に明るく、ドロドロしたもの は不思議に感じられません。雄太郎の、事件の関係者の気持ちを傷つけないように という気遣いには、ハッとさせられました。トリックは、ああなるほど、という もので、推理より、この雄太郎・悦子コンビに一目ぼれです。笑
トッパー、傷痍軍人、など時代背景が古いのは、この作品、初出誌は1958年の 「宝石」、短編集『粘土の土』に収録されたものなのです。昭和でいうと33年!! 舞台は昔でも、面白いですーーー!!!
仁木悦子著『灰色の手袋』は『秘密の手紙箱』(光文社文庫)に収録。 52ページ。こんなに明るいミステリは珍しいと感じた27分。 雄太郎みたいなお兄さんがほしいです〜♪
仁木悦子さんは1928年生まれ。 '59年に『猫は知っていた』で江戸川乱歩賞を受賞。 '86年、腎不全のため死去。 4歳で脊椎カリエスに罹って就学することなく、寝たきりの生活の中で多くの童話や 推理小説を書いたと知ると、胸を打つものがあります。
2002年02月05日(火) |
新津きよみ著『傷自慢』 |
浅田次郎さんの短編集『見知らぬ妻へ』でせつないモードになったあと、何を 読もうかなーと考えるまでもなく、読みたくなったのはミステリ! ミステリ、ホラー、せつなさをぐるぐる回っているようです。
そこで選んだのが『秘密の手紙箱・女性ミステリー作家傑作選3』(光文社文庫) です。9人の女性作家による短編集なのですが、顔ぶれがすごいです。 新津きよみ、仁木悦子、乃南アサ、藤木靖子、皆川博子、宮部みゆき、山崎洋子、 山村美紗、若竹七海・・わーい!ゴージャスです〜♪
今、読み終えたのは、新津きよみ著『傷自慢』。 結婚したばかりの春樹と結花。結花は春樹の背中にある火傷の跡のことを、両親 を亡くして唯一の身内である叔母の麻子に聞きにきますが・・・。
怖いですー。女の嫉妬が行間から立ち昇ってくるようです。 血の絆に勝つとか負けるとか、結花の嫉妬は度を越えて病的でもあります。 新津さんの心理サスペンスはずっしりきますねー。ラストで明かされる意外な 事実に、もう一度読んでみると、ああ、なるほど・・伏線はあったわけです。
新津きよみ著『傷自慢』は『秘密の手紙箱(以下略)』(光文社文庫)に収録。 34ページ。少し気分が悪くなった15分。読後感がどんより。はぁ・・(ため息)。 夫の愛を試そうなんて・・してはいけないです・・。
新津きよみさんは1957年生まれ。 講談社フェイマススクールズの小説教室では宮部みゆきさんと同期。 ダンナさまは、推理作家の折原一さん。って、夫婦で推理作家・・どんな会話を?
2001年11月27日に新津きよみ著『同窓生』(角川ホラー文庫・書き下ろし長編) をこの図書室で読みました。存在を強く求めるあまり、記憶に棲む存在がでてく るお話です。怖いですよーー!
2002年02月04日(月) |
浅田次郎著『見知らぬ妻へ』 |
いよいよ、この短編集の表題作です。
新宿、歌舞伎町で客引きをする花田は、ある中国人女性を日本に滞在させるため 偽装結婚を頼まれ、きちんと考えもせずに婚姻届をだしてしまいます。形だけの 結婚のはずが、彼女を愛しはじめたときに・・。
偽装結婚・・悲しい響きです。ふたりの結婚は寂寥感から始まっています。 「接吻は不幸の味がした」・・この一行がふたりの関係を象徴しています。 言葉さえ通じ合えないふたりが、ひとつの毛布にくるまって作るジグソーパズル は、ふたりのはかなくあやうい関係を暗示しているようで印象的です。
浅田次郎著『見知らぬ妻へ』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)の表題作。 43ページ。孤独なふたりを見つめた20分。 そして、孤独なのはふたりだけではないのです。
せつなさより・・これは・・悲しみ・・。
浅田次郎さんは1951年生まれ。 '95年に『地下鉄(メトロ)に乗って』で吉川英治文学新人賞受賞。 デビューは'91年『とられてたまるか』(学研) '97年に『鉄道員(ぽっぽや)』で直木賞受賞。
2002年02月03日(日) |
浅田次郎著『ファイナル・ラック』 |
いつも読み終えてすぐ、感じるままに気楽に書いているのですが、今日のお話は 率直なところ・・・楽しめないのです。← 少々口篭っています。ふぅ・・。
どんなお話かというと、競馬だけが趣味の男が競馬場に行くんですが、おけら街 道を歩きながら、いろんなことを考えるんです・・。競馬のことがよくわかる人 なら、おけら街道と聞いただけで、あ!中山競馬場の帰りだな!って、ピンとく るのかもしれませんし、馬の名前がスラスラと頭に浮かぶのかもしれません。
このお話を楽しめないのは、わたしが競馬のことをまったく知らないからで、 ルールのわからないスポーツ観戦につきあっているかのような居心地の悪さです。 決して、面白くないわけではないけれど、ムリしてるな〜って、感じるような。
ただ、読み終えて、こころに何かが残るんです。 競馬だけが趣味の男、野崎の妻は、ボーナスをそっくり競馬に使う夫を咎めたり しません。「自分のお金なんだから、いいじゃないの」って・・!!! ボーナス、いらないのぉ〜?奥さま、できすぎですぅーー!! 古い都営住宅での暮らし、お金が余っているわけではなさそう、・・なのに、 ボーナスを競馬に使う夫に微笑できるのは、なーぜーでーすーかー?
浅田さん、も、もしかして、夫の趣味に理解ある妻を書きたかったのですか? いやん、そんなことないでしょう。
浅田次郎著『ファイナル・ラック』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。 25ページ。うーん、よくわからないまま読んだ10分。 競馬が好きな方には、すごく面白いのかもしれません。
そもそも、本の感想ほど人それぞれなものはないような気がします。 食べ物なら、美味しいものはだいたい誰でも美味しいと感じるようですが、 面白い本が、誰にとっても面白いとは限らないようで、巷の評判に期待して読ん でみたもののがっかりした経験なら、心当たりがあるのではないでしょうか。
また、同じ本でも、読む時期によって、受けとめ方が全く変わることもあります。 高校生の頃読んだときには少しも面白くなかったのに、歳を重ねてみて、初めて わかる人情の機微のようなものもあります。逆に、若いときに読んでこそ感動 することも・・。いろいろですね〜。
えっ・・と、明日は、・・いよいよ表題作の『見知らぬ妻へ』です。 じゃ、また明日!
2002年02月02日(土) |
浅田次郎著『金の鎖』 |
世の中、広いようで狭いものです。中学生の頃読んだ小説に、偶然出会って 恋に落ちた二人が、実は幼い時に両親の離婚で生き別れた兄と妹だった・・と いうのがあって、その時は、こんなことあるわけないよぉ〜と思ったのですが、 その後、たまたま仲良くなったわたしの友人が、母の幼なじみのお嬢さんと わかったことがあったりして、世の中には、こんな偶然もあるんだなぁ〜と 思うようになりました。
あ、前置きが長くなってしまいましたが、今日のストーリーは、そんな偶然が もたらしてくれた秋の日の1ページです。まさか、と思うようなこと。でも、 それは、秋が深まって自ら枝から離れる色づいた葉のように目の前にくり広げ られていきます。
夜更けのドーナツショップ。千香子が見かけたのは20年前に別れた恋人、浩之 でした。あの日のままの姿で奥のテーブルにぽつんと座っている若者は・・・。
昨日の『迷惑な死体』とガラリと雰囲気が変わっています。 浅田さん、こんなおしゃれなストーリーも書かれるんですねー。。 「値段」には、プライス、とルビが!!昨日読んだ『迷惑な死体』にも、ルビ つきの言葉はありましたが、拳銃=チャカ、身柄引受=ガラウケ、手錠=ワッパ でしたから、『金の鎖』のおしゃれ度が際立って、千香子をよりエレガントに しています。
浅田次郎著『金の鎖』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。30ページ。 なんともいえないせつなさの12分。 10年後にもう一度読んでみたいです。
この作品、女のひとが書いたような印象を持ちました。作品の中の千香子が 書いているような、という意味です。 浅田さん、せつなさのツボをよくご存知ですね・・。
2002年02月01日(金) |
浅田次郎著『迷惑な死体』 |
うひゃーん、すごいタイトルです。せつないお話のタイトルとは思えません。 どう見てもホラーでしょう。と、タイトルに絡んでみたり・・。
ところが、読んでびっくり!このお話、こころが妙に温かくなるんです。 うーん、不思議!浅田マジック!職人技ですー。
その死体は、良治のアパートの万年床にあったのです。 良治は驚きます。← 誰もが、驚きますよねー。 帰ったら、知らない人が自分のふとんで死んでいるんですから。(いやん、ふとん はやめてよぉ〜の心境。)そして、こんな時に限って、恋人から電話がきたり、 人が訪ねてきたり、田舎のおかあさんが突然やってきたり・・良治、ピーンチ! というか、早く警察に連絡したら・・なのですが、そうもいかない事情があって、 もどかしいですー。
良治と恋人の会話が、泣かせます。良治とおかあさんの会話も泣かせます。 でも、涙はでないです。笑っちゃうところもたくさん!
浅田次郎著『迷惑な死体』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。 26ページ。笑いたいような泣きたいような11分。ラストはほのぼの。 こころ温まりました。と、終わりたいところなんですが、スッキリしないです。 ・・早く、何とかしてほしい・・。読んでみてください。
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