不思議でした。なんでここ数日、時々めまいがしたり、たちくらみ起こしたのするのか。 不思議でした。熱がありました。原因これか。
こんばんわ、やはり自覚症状に乏しいようです。もえぎです。 そういやわたしは花粉症な自分に気付いたのも血液検査が初めてでした。 花粉飛散時期になんだか目がかゆいなあと思いつつも花粉症だとは思っておらず。 そんなんばっかりやわたし。
ま、まあそれはそれといたしましても。明日から一週間は忙しいやらのんびりやら。 少々用事がありまして、暫く実家に戻らねばならないのです。 帰省はとても嬉しいものです。一抹の不安やなんやかやを抱えながらも。 それに明日は、いきなり紺堂嬢とデェトです!(笑)わあいたのしみたのしみ。 しかも大阪までお迎えに来てくれるのですよ。滞在中にいっぱい遊べたらうきうきものです。 盗んでないバイシコー二人乗りでアスファルト蹴り上げたり思考回路の無い車で薔薇撒いたりAI未搭載の車でしかたないから自分でわかりましたマイケル言いながら二人きりの観覧車めざしてワタシコンナパニックに田舎燃やしに行くのです。 身内ネタというかなんというか(笑)
今日のお話はオリジというか単なる短文。 二年近く前に書いたものですが、どう見てもどろどろして感じ悪いですね。 でもなんとなく、清算の意味を込めて見直してみたりします。 当時の精神状態を反映しまくっています。けれど、あの頃は必死だった。 いまだにこの手に余る感情。扱いかねる。戸惑ってしまう。感情。 そのおもいはいまだにあってハートに火をつけたかの方はいまだにわたしをかき鳴らす。 わたしは醜く汚いけれど。いっしょうけんめいではありました。 だから今は。その音にひたされてねむりたい。
『ソドゴモ』
いまはむかし。ひとりの子がいました。 その子はある人にチョコレートを一粒、渡そうとしました。 なんの変哲も飾り気もないチョコレート。 けれど、どうしてもその子は渡さねばなりませんでした。 なぜならある人は、その子にチョコレートをくれたから。 とってもおいしい、そしてなにより素敵なチョコレート。 その子が今までたべたこともないくらい、すてきな。 なのにある人は見返りに何も求めることもありませんでした。 ですから、その子はどうしてもお礼がしたかったのです。 たとえどんなにみすぼらしくてもつまらなくてもそうだと知っていても。 その子はお返しがしたくてたまらなかったのです。 だってあんなにすばらしいチョコレートをくれたのですから。
そしてとうとう。その子は、チョコレートをさしだしました。 どんな言葉でつむげば良いのかもわからず、ただうつむくだけ。 顔をまっかにしてぐい、とだしたてのひらがふいに軽くなって。 視線をあげてみると、ある人は微笑みながら貧相なチョコレートを手にしていました。 それだけでその子ははちきれんばかりにうれしかったのに。なのに。 ある人は、とてもとてもやさしい声をだしてくれて。 ぽかんとしているその子のてのひらに、チョコレートをのせました。 しかもその上には、ちんまりとアーモンドさえのっかっていました。 薫り高く、めくるめく、至高のこげちゃいろ。 その子はまた、まっかになりました。ぶんぶかあたまを横にふりたいきぶんでした。 だって、だって。お礼がしたかったのに、お返しがしたかったのに。 これ以上あまいチョコレートをもらってしまったら意味がなくなってしまう。 更に、自分がさしだしたのはきれいでもすてきでもないチョコレートなのに。 あの素敵なチョコレートにアーモンドさえのっけってもらってしまって。 お礼をするまえにすでに、エッフェル塔よりもおっきなチョコレートをもらっていたのに。
見返りなんてもとめていませんでした。 けれど、ある人があんまりにもやさしい声で話しかけてくれたものですから。 その子はおもってしまったのです。愚かな子。 もう一度、わらってくれたらなあ、と。 莫迦な子。分不相応なものを望まなければ、こんなかなしいきもちにならなかったのに。 わるいこにはおしおき。
ほとり、とおちたひとしずくの海。 それは木の実にしたたりおちると、しおからい味を添えました。 アーモンドひとかけぶんの罰。
ぱきん、と噛み砕いたアーモンドのカケラ。
2005年02月21日(月) |
『幸多き森の迷い子』 |
あ゛ー。昨夜は『予定は未定』を地でいってしまいました駄目管理人。 いえアップする気はまんまんだったのですが寝やがったのですよこやつ。
こんばんわ、寒さに雪に六時起きに負けました。もえぎです。 うー、せっかく殆ど書けていた話ですのに。日記に載せるの遅れました。 昨日はあれですよ。寒くて寒くて午前六時起きで大阪行ったのです。 治験のために。採血のために。十時間以上絶食状態のまま京都から大阪へ。 で、検査済んだらそのまま十二時間以上絶食状態のまま大阪から京都へとんぼがえり。 朝ごはん兼昼ごはんを口にしたのは結局コンビニの隅っこでした。 時間が中途半端でことごとく行きたいカフェが閉まっていたのですよ……。 ややさめざめと泣けそうでした。そしてそこから更に六時間くらいちょっとなんやかんや。 帰る頃には白い月が美しく時折ちらほら雪さえも。そして戻った部屋は室温十度で。 電気代かかるの嫌で暖房つけずにこたつと晩ごはんで暖を取り。 ―…こんな状態でしたから。おなかいっぱい、あったかくなったら。 寝ちゃったわけです。つくづくアホです。 目が覚めて十二時過ぎてて一番驚いたのは自分でした。 ともあれ遅くなってごめんよ紺堂嬢。今夜の話はきみのためにー例の同盟のー(笑)
しかし内容がやや尻切れトンボな感じで納得出来ていません。また直していこう……。 紺堂嬢から言われていた、サーガエピ2、カラフルチルドレン669と498のお話です。 彼女が自分のサイトを評していわく、 『U.R.T.V.サイト数あれど赤白黒をメインに扱ってないんはうちくらいやろな』 は名言だと思います。 わたしはそんな彼女が大好きです(笑)男らしい!男らしいー!ステキ紺堂嬢。 いつもお世話になりまくっているナイト属性(キャラミル研究所)な彼女からのリク。 やる気はまんまんでしたが、キャラがキャラだけになかなか話が思い浮かばず。 考え付いて書き始めたのは良いのですが、書きたかったのは序盤の場面で。 そこを書いたら燃え尽きたがごとく結局尻切れトンボな次第です。最悪だ。 すまんね紺堂嬢、今度きっちし直すから。それから正式にきみに捧げますから。 とりあへず今はこんな感じだと考えてやってください。 序盤は気合い入ってますから序盤は。ええそりゃあもう。 でもシナリオブック持ってないのでニグレドくんの口調が自信ありません。 うろおぼえな記憶を必死に呼び覚ましながら書いてました。 ルベドくんなら特に悩みもせず書けるのですけれどねえ。 おとなのみりきな代表理事でも難しいですし、ちっさくても難しいです669の彼。 ですから口調が多少嘘っぽくてもどうか寛容な心で目を瞑ってやってください。 それと、このお話は、一応次に続くカラフルチルドレンシリーズの布石です。 会議→演奏会→試食会ときて、次に開かれる会は?という。 なんかもうバレバレな気もしますがそれはそれ、これはこれです(謎)
『幸多き森の迷い子』(サーガエピ2。カラフルチルドレン669と498)
やわらかな芝の上に腰かけて、珍しく一人でそこにいて。手元の本に目を落として。 いまどき稀少な『紙』で作られたものを読み耽っていると。ふと。感じる視線。ひとつ。
作られた子供たちの作られた庭園。作られた灯りが照らす作られた光の下で。ふいに何やら見られているような感覚をおぼえて、文字に向けていた眼差しを引き剥がし、顔を上げた黒髪の少年は、咄嗟にどうしたものかと考え込んでしまった。 確かに視線は感じたけれど、これほどまでに至近距離だとは思わなかった。相手の顔は、それこそ彼の目と鼻の先にあって。澄み切った紺碧の瞳に映りこむ、自分のきょとんとした表情を確認することさえ出来るくらいだった。少しでも身を起こそうものなら、鼻と鼻が触れ合ってしまうくらい、すぐ側に相手はいた。 草に足を投げ出して、片膝だけを立ててそれを台にして、彼は本を読んでいたのだけれども。予期せぬ来訪者は作られた緑のじゅうたんに両膝をつき、あまつさえ両の手までついて。よつんばいみたいな格好になってまで、彼の真正面にきて、寄り添っていた。 力いっぱい前のめりな体勢で瞬きもせず一心に見つめてくる曇りのない眼に、漸く言葉をいくらか見つけたニグレドは、幾つかをそっと選び取った。 「……何してるんだい、498」 「…………」 問うても、普段から口数の少ない―と言うか、言葉の使い方を心得ていない少女は、ただ無言のまま彼をじっと凝視するだけだった。しかしいくらなんでも、延々この体勢は疲れるしお互い話しづらいので、ニグレドが少しどいてくれるよう促すと、498はそろそろとそれに応じた。 芝草に腰を下ろし。それぞれのよく似て違う顔を向かい合わせることが出来るようになると、彼はぺたりと座り込んだまま喋ろうとはしない彼女に、一言一言区切るような口調で訊ねる。
「どうしたの、498。今日はシトリンと一緒じゃないんだね」 「……ニグレドこそ、今日は、ルベドもアルベドも、いない」 「うん。僕だけ先に検査終わったんだ。それに、ちょっと用事もあったし」 いつもの、憂いみたいなものを宿した伏し目がちの瞳を、少しのぞきこむようにして。ただでさえ言葉少ななのだから、怖がらせたりしないようにと心がけながら、やんわりと問いかける。 「君は、どうしたの?」 すると498は、おそるおそる顔を上げると、上目遣いから真正面に射抜く眼差しを投げかけてきた。それは彼がちょっと驚くくらい、強い意志に裏付けられたもので。紺碧の瞳に、きらりと走る、凛とした糸を見たように思った。彼女は逡巡を振り払うことは出来ないままであっても、ゆっくり、唇を動かし始める。 「……ご本を、読んでいたの」 「本?」 予想外の言葉に、ついおうむがえしにしてしまって。慌てて彼は口を押さえた。相手を威圧するようになりはしなかったかと思ったが、498は怯える様子もなく、ただニグレドの問いにこくりと首を縦に振る。これからは無理やり先を促すまいと彼が教訓を人知れず反芻していると、彼女は迷い子のようにたどたどしく、けれどゆっくり確実に、言葉を紡いだ。
「……わたしたちの、ね。サクラ・ミズラヒの現実面からのアプローチに用いるツールとして、ご本を読むことになって。その練習にって、シトリンとわたしで、ご本を読んでいたの」 498の途切れ途切れで、ところどころ不鮮明な発言から、ニグレドはざっと状況を分析し始めた。U.R.T.V.の女性体は、男性体に比べて安定が難しい。このインスティテュート内で自由に動きまわれるほど安定しているのは、ナンバー668シトリンと、彼女ナンバー498くらいのもので。ニグレドたち変異体がサクラの病の治癒のため、精神面からアプローチをかけるのと平行して、彼女たちは現実世界から完治の糸口を探っていた。 だから読書というのもその行為の一環なのだろうと理解すると、彼はふっと手元の本に目をやった。彼が先程、この本と共に与えられた『用事』を思い出して。 「それで。わたし、読んでいて……でも、どうしても分からなくて。シトリンに訊いたら、それはニグレドよって、言われて。だからニグレドを見に来たの。ニグレドを見たら、分かるかと思って」 ためらいがちな言葉の羅列は、結局それでも分からなかったのだと、言外に語っているように彼には思われた。余りに断片的な内容に、流石のニグレドも推察が難しくなってきてしまい、それが知らず知らず表情にも出てしまっていたのか。498は面持ちを悲愴の色に染め、細い喉から声を絞り出すようにしてなおも続ける。 「……『森』は、分かったの。お墓のある、あそこだから。『夜』も、分かったの。天井が暗くなることだから。それなら、わたし、知ってるけれど。―…『夜の森』が、分からなくって」 いやいやするようにかぶりを振ると、膝の上に置かれた小さなこぶしがきゅう、ときつく握り締められる。表情に乏しい顔は、今にも泣き出しそうに歪められていたけれど、ぬるい雫がころころと零れることはなかった。彼女はそのような行為も、その意味も、方法すらも知らなかったから。ただただ、顔を苦しげに歪めるだけだった。 「……森も、夜も、怖いものではないけれど。『夜の森』は怖いらしくって。白い石が光るのを頼りに歩く、『夜の森』だどんなものだか、どんな怖さなのか。いくら考えても、わたし、分からなかった」 やっとおぼろげながら掴みかけてきた概要から、ニグレドにも緩やかな理解が伴ってきた。おそらく彼女が言っているのは、古い物語にある、貧しい両親が口減らしのため子供を森に捨ててくるという話だろう。そして子供が機転をきかせて、月明かりにぼんやりと照らされた白い石を目印に家まで帰る、というくだりで彼女は詰まったと思われる。子供が怯えながら、頼りない小石をよすがに歩く、夜の森のおそろしさが理解出来なくて。 目の前で、分からないと繰り返し、正体不明なものにわけも分からず怯えている少女をあたためる言葉が、すぐには出てこなくって。そんな自分に少しの苛立ちと腹立ちを感じながらも、それでも彼は手の平からひらひらと擦り抜けてゆく気まぐれな蝶のような気持ちを捕らえて形にすることは出来なかった。ただ、498の次の声を待つしかなかった。そして彼女はおぼつかなげにまろびでてくるがごとく言う。 「それで、シトリンに、訊いてみたの。シトリンは、わたしよりもずっとずっと、難しいご本を読んでいたから。『夜の森』って、なあに、どんなの、って。そしたら」 彼には、その時のシトリンの表情が目に浮かぶようだった。ちょっと強気で、きついところはあるけれど、決して意地悪なんかではないナンバー668。不器用な498を叱りながらも支えてやっている彼女が、つん、とその形の良い鼻を上向かせながら、細い眉をぴくつかせながら、498に言う光景を。 言われた側である少女が、シトリンの台詞を再現した。 「『それはニグレドの色よ』って」
彼が宿す色は、通常体の子らとは大きく異なる。変異体である証拠でもあるその彩りは、この作られた庭園においても、一際目をひく鮮やかさだった。 深い深い、緑樹の瞳に。漆黒の髪。 それを、『夜の森』だと形容したシトリンと、それをすとんと受け入れてしまって、どんなものだか確認にやってきた498の二人に、思わず夜の森たる彼は口角を上げてしまった。
「その本は、もしかすると君にはまだ、早いのかもしれないよ」 「そうなの……?」 困り果てた顔をしていた少女に彼がかけた言葉は、さっきいくら考えても捕獲できなかった蝶の羽。なのに今はすんなり自然に流れ出てくる。そっと支えてやるような口調と笑みでそう伝えると、498はおそるおそるといった風情で彼を見つめてきた。 だからニグレドは、もう迷うこともなく、すらすら言葉を発した。ちょうどさっき、彼が思い出した本と共にやってきた『用事』のことを絡めながら。さらりと次々、蝶々をあちこち、捕まえて。 「うん。まだ、その本の内容に、君の精神的発育がついていっていないんだと思う。僕らの成長は個体差があるし、君とシトリンならうんと違って当然だよ。だからこれから、ゆっくり自分に合う本を探していけば良いんだ。サクラ・ミズラヒの平癒経過に合わせるみたいにしたら、もっと良いと思う。任務もこなせるし、君も自分の本を探せるし。そうしていたらそのうち、『夜の森』も分かるようになるよ」 「……そうなの」 「うん。それにね」 一息でたくさん説明した彼は、どうやらじわじわと納得はし始めているのだけれど、まだ完全な理解へは至っていない498へ向けて、そっと手のものを差し出した。百聞は一見だけれど、一見も百聞だから、実際に見せて伝えたほうが確かに伝わりやすいものもある。 紺碧の瞳がきょん、と丸くなった前にあるのは。一冊の本。先程までニグレドが読み耽っていた。 「ご本……?」 こんなところにもあるだなんて、と、ぽかんとした声と顔をする498に、669たる彼は更に補足説明を開始する。少年の口の端に浮かんだ笑みは、もう彼女の前から消えることはなかった。
「ミズラヒ博士に渡されたんだ。『用事がある』って、さっき言ったのは、これに関係することなんだよ」 「……ニグレドも、ご本、読むの?」 「うん。どうやら僕らも、君たちの任務に関わることになりそうだね。ミズラヒ博士が言うには、ユーリエフ博士と相談した結果、インスティテュート内に図書室を設けたいそうなんだ」 「図書室……」 「ミズラヒ博士は娘のために、たっくさん『紙』で出来た本を持っているんだって。子供にはそれが一番良いんだそうだよ。それで、ユーリエフ博士もいっぱい本を持っているから、どうせならそれらを持ち寄って、僕らが皆、読みに行けるような場所を作ろうって考えた結果なんだって」 「ふうん……」 「環境が整ったぶん、君たちは任務が遂行しやすくなるし、それをサポートするのに、僕らも介入しやすくなる。僕らがいると、あの子の病状はとても快方に向かうそうだから、良い相互作用を生むんじゃないかって」 「……あなたたちのしてた楽器鳴らすのや、こないだのクッキーみたいなことね」 「うん。それで、ミズラヒ博士に頼まれたんだ。僕に図書室の管理をして欲しいって」 いつの間にやら二人の間では、とんとん拍子に会話が進む。まあそれは、余り公平なキャッチボールとはいかなかったが、498の言語発達を考えた場合、仕方のないことと言えるだろう。それに彼女にしては、これでも相当に多弁に饒舌な状態なのだから。 大部分をニグレドが補うようにしながら、二人のやり取りはずんずん進む。ゆっくりおっとり訊ねてくる498に、ゆったり構えてじっくり説明をする669。実に緩やかな速度で続けられる会話は、せっかちなルベドやシトリンあたりが側にいようものなら、今にもいらいらして文句を言い始めそうなものである。それでもこれが、この場では、最も相応しいと考えられた。
まだまだ上手くつかいあぐねている言葉を、なんとか用いながら、慣れない相槌を打って。盛んにこくこくと頷く、そして真っ直ぐに見つめてくる紺碧の瞳に、緑樹の瞳は何処までもやんわりと着実に話を進めてゆく。 変異体三人の中でもし図書委員を選ぶなら、ルベドは自分の読書欲にかかりきりになるだろうし、アルベドは読書に没頭して相手してくれない左の心臓に泣き出してしまうだろうから、とてもとても任せられないだろうこと。けれどニグレドならば、周囲の状況を判断して、的確に整理整頓を行えるだろうと判断された上で任命されたこと。リーダーシップという点では素晴らしい資質を発揮するルベドも、こういう管理行為は不得手だということ。図書委員とは言ってもそんな硬いものではなく、ただきちんと本をきれいにしたり、図書室で騒ぐ子に注意をしたり、その程度だということ。U.R.T.V.として教育を受けてきた彼には、委員だのなんだのというのは単なるおままごと遊びのように思えることなのだけれど、この提案をしてきたミズラヒ博士自身が、至極楽しそうな表情をしていたので、まあ良いかと考えたこと。あんなに優しく嬉しそうな表情はとても珍しいということ。それを見て、なんだか、つい自分まで軽くうきうきしてしまったこと。 それこそ。たくさん。たくさん。彼は話したし、彼女は飽きもせずに聞いていた。そんな時間が流れるままに。彼女はニグレドの言葉に、ゆっくりと、紺碧を細めて唇をあまい弓にたわめた。
短い拙い一瞬のやり取りに。ほんの一瞬ひらめいて光より僅かな時間現れた、微笑みとはまだ呼べない、微笑の欠片みたいな透明な笑顔に、彼はひととき息を呑んだ。今まで、そんな澄み切ったものを見たことがなかったから。驚きに目を見開いたけれど、彼はそれを言葉にはしなかった。伝えることはなかった。なんとなく勿体なくって、後でやってきた兄たちにさえ内緒にして、彼一人でなんとなくしあわせな感覚を楽しんでいたのはここだけの秘密。 誰にも教えない。誰も知らない。森の闇が奥に抱いた、ふかいふかい蒼海のひみつ。
2005年02月19日(土) |
『瑠璃色輝石にはちみつミルク』 |
少しずつ、なんやかし、書いていこうと思うのですよ。毎日。 でもだからっていきなりこの内容はどうなんでしょう自分。
こんばんわ、いきなり指輪話でしかも超ネタバレ(笑)もえぎです。 前々から書きたいなあと思っていた指輪戦争後イシリアン大公ご夫妻です。 でもこの話は、一番はじめに書いたものではないのです。 もう一つ、最初に書いた指輪話があるのですけれど、そっちを置いてこっちを先に仕上げ。 だってそっちの話は出だしだけでもう七千字越えちゃったもんですから(笑) この話のがうんと短く済むなあと思いましたので。 それでも予想外に長くなりましたが。おかしいなあ。 内容薄いので二千字くらいか思いましたが。 書きかけのも、そのうち仕上げたいのです。 夕星の王妃さまを書くのがたまんなく楽しいのです(笑)
で、内容ですが。 相当悪ノリしております。ちょっとやりすぎたかなあとやや反省。 ちょうど原作を読み返した後だったので、瀬田さん口調がうつってしまって。 ついついですます口調で書き出してしまいました。でもまあ、たまにはこんなのも。 しかしそれにしても程度ものでしょうか。やはりやりすぎ……? どうせだから、うんと時代がかった口調にしちゃえーとなりまして。 でもこれはこれで楽しかったです。そしてファラミアならあれくらいは言うと思います。 原作であんな発言してる人ですから!(笑) あそこだけ明らかに全体と雰囲気が違っていて、最初ひどく驚いたものです。 『あ、あれ?あれ?』となりましたが、読んでいてとても幸せになった箇所。 映画ではものの見事にカットされ涙に暮れましたがそこらは戴冠式でほんのりカバー。 まさか追加映像もあんだけだとは思いませんでしたけれどね……(泣)
ネタバレというかなんというか。名前だけですがロシリエル姫出すぎな気もします。 それもこれもわたしがひたすらドル・アムロスひいきだからです。 フィンドゥイラス姫の亡くなられた理由にたいそうひきつけられたのです。海の姫君。 あと、イムラヒルおじさま素敵ですし(笑)エルフの血の濃い一族ですし。 もし中つ国に住むならホビット庄も捨てがたいですがわたしはドル・アムロスが良いです。 エオメルにいやん(にいやん呼ばわりかローハン王)と姫ラブラブだと夢見ます。 しかし気になるのはロシリエル姫の髪の色だったりします。 イムラヒルおじさまは金髪ですし、けれど普通ゴンドール人は黒髪ですし。 エルフの血が濃くでたら金髪なのでしょうね。でも姫は黒髪がいいなあ。 そしたらエオメルにいやんの金髪と姫の黒髪で並ぶと映えてとても綺麗です。 因みにわたしはファラミアを黒髪で書いています。エオウィンと並ぶとやっぱり映えます。 別にわたしがただ単に黒髪好きだからとかじゃないですからね!
―…話がそれました。 そんなこんなで、薄い内容の割りに三日かかってしまいました。 明日も何かアップ出来そうではありますね。九割書けました。 『毎日一本仕上げる』のではなく『毎日少しでも良いので書き続けて仕上げる』のが目標。 重いノルマに押しつぶされて呼吸も出来なくなるのはやめたほうが良いと思うので。 明日も色々おでかけで大変ですが。がんばります。 あ、紺堂嬢。明日アップ予定のは、きみに捧げる例のブツですよー。
『瑠璃色輝石にはちみつミルク』(指輪物語。イシリアン大公ご夫妻)
ゆたかにかぐわしい、緑の香気に抱かれた。 世にも美しい森の館で、世にも美しいお妃さまは、世にも美しい殿御に仰いました。
「殿、わたくしはドル・アムロスに行きとうございますわ」 その日の政務を終え、やれやれと思いながら自室に戻り、優しい妻が上着を脱がせてくれながら微笑みと共に放った言葉に、イシリアンの大公殿は目をぱちくりとしてしまいました。しかし彼はすぐに、最愛のひとへいつもの柔和な笑みを浮かべると、さも楽しげな表情で向き直りました。 すると、真正面からみつめられている彼の妻さえも、くすくすとおもしろげに微笑んでいるではありませんか。彼女は知っていたからです。普段、まるで上古の賢者のように聡明で、理知深く、穏やかなこの方が、子供のように素直に感情を顔に出すのは、彼女の前だけであるということを。それが彼女には誇らかで、少しこそばゆくもしあわせなよろこびでありました。 「それは何故でしょうね、エオウィン?」 至極真面目な口調ですが、彼の口の端からは、今にも微笑が音を伴って零れ落ちてきそうでした。ファラミアが妻に向ける眼差しは果てなくやわらかく、慈しみといとおしさに満ち溢れていました。 「これは私の推測なのですが、あなたは我が従妹ロシリエルよりかの海の都の話をお聞きになったのではありませんか?そして彼女の伝える、頬を撫でる潮風とまだ見ぬ白い鴎の物語に興味を抱かれたのではないでしょうか」 「殿は我らが王と同じ、古い血を持つその眼で、全てを見通してしまわれるのですね!」 エオウィンの小作りなかんばせをのぞき込むようにして、僅かに首を傾げたまま問い掛けてくる夫に、彼女は快活な笑い声を立てました。それから薄い色をした瞳を、悪戯っぽく煌かせます。 「けれども殿。半分は確かに的を射ておりますが、残る半分ははずしておしまいになられました」 「やれやれ、私の弓も随分なまってしまったようだ。それとも、勇猛なる白き姫君の剣には、私の矢など、はじかれて当然のことなのやもしれませんが」 やや優位に立ったと思われたエオウィンを、あっという間にひらりとかわしてしまいます。真剣にからかうようなその口調に、若い妻は頬を染めてまあ殿ったらひどいことを仰るのね!と抗議してくるのですけれども。そんな彼女の素直な反応が、ファラミアには可愛らしく愛しく思えてならないのでした。ですから彼はすぐさま微苦笑しながらきちんと謝罪の言葉を述べますと、話の続きを求めます。すると彼女もそれに応じて、くるりと機嫌を元に戻すと、先程の答えの真意を話し始めます。 その間にふたりは大きなソファへ場所を移し、寄り添いあうように腰を下ろしました。
「ロシリエル様と、色んなことをお話しておりましたのよ。姫がこれより赴かれるマークの地の気候や、慣習など。他にも沢山のことをお教えさしあげておりました」 「ええ。ロシリエルも大層喜んでいました。あなたが馬の司の国の様々な事柄を丁寧に教授してくれるので、むやみに恐れおののくこともなく心安らかに、エオメル殿のもとへ行くことが出来ると」 そう言うと彼は、年の離れた従妹の姿をふいに思い浮かべました。ファラミアの叔父であるイムラヒル大公の姫君、白鳥の都のロシリエル。彼女は近く同盟国ローハンに嫁すことになっていました。お相手は勿論、エオウィンの兄たる若きマーク王エオメルです。しかし隣国とはいえ、ゴンドールと大きく習俗の異なるローハンへ花嫁としてゆくのですから、彼女の不安たるやいかなものでしょう。 そこでエレスサール王は、ドル・アムロス大公やイシリアン大公夫妻の心配を解消するため、ロシリエルを暫しファラミアの館に逗留させることにしたのです。親しい従兄の治める土地で、かつてローハンの盾持つ乙女と呼ばれたイシリアン大公妃より、多くのことを学べるようにと。 予見の眼を持つ王の思い遣りは、予想以上の効果を生みました。二人の姫君は、お互い年の近いこともあり、すぐに意気投合したのです。ロシリエルはローハンのことを深く学びたいという意欲に溢れていましたし、エオウィンは兄を支えることになる未来の義姉に愛する故郷を知って欲しくてたまりませんでした。二人の貴婦人の華やかな笑い声に満ちた館は、花盛りの森もかくやという、豊穣のあまやかさに大気がかすむほどでした。 こちらに来るまでは顔を強張らせ、体中を緊張させていたロシリエルも、今ではすっかり朗らかに微笑むようになりました。その表情と心境の変化を思い出し、ファラミアは薄い笑みを浮かべました。 「あなたの言葉が、随分と心強かったようです。ロシリエルも自信を得た様子で、私も叔父上もすっかり安堵しました」 「お役に立てれば幸いですわ」 婉然と微笑むエオウィンが、その裏にちまりと水晶の秘密めいたものを含んでいるのを、ファラミアはさらりと見抜いてしまいました。曇りない透視力はかつて彼を苦しめもしましたが、今はそれすら楽しむゆとりが生まれていました。何せ相手は最愛のひと。 傍らに座るエオウィンが生き生きと語りだすのを、彼はやんわりと受け止めます。
「それでですね、殿。わたくしがかつて暮らした草原の国について話しましたら、御礼にと、姫はドル・アムロスのことを話してくださいましたのよ」 「それが私の射た半分ですね」 「ええ。わたくしの知らない、見たことのない、不思議な不思議なお話です」 「それに惹かれなすったのでは?」 「勿論それもございますわ。けれどわたくしがかの海の都へ惹かれるのには、もう一つ理由があるのです」 「もう一つ……?」 「はい」 意味深げな口調で続ける妻に、つい彼はまた目をぱちくりとしてしまいました。それに彼女はまたもくすくすと笑みを零します。だってこの不器用に優しい殿御がこんな顔をするだなんて。あの拭い切れない憂いのヴェールを常にかぶったようなけぶる灰色の瞳が、少年のように澄み、熱っぽくさえなるのなんて、妻の前だけなのですから。 彼女は衣擦れの音もあでやかに、ファラミアへ向き直ると、おおいなるものを全て抱きこもうとする微笑をもって、目を細めました。そのかいなが持つものは最早盾ではなく、悲しみも痛みも喜びもありとあらゆるものを内包していました。 エオウィンは、何処かに傷を帯びたような蒼い微笑を深めました。 「かの地は殿の母上様の都でもございます」
見開かれた灰降る瞳ににうつるのは。同じ金の髪。彼の生涯に、最初のかなしみを灯した人と同じ。けれどもファラミアが、その胸を錆びた針で衝かれるような痛みを思い出す前に、目の前にきらりと煌いたものは。 すらりとしなやかに強い、細身の鋼のように凛とした。優婉にして強靭な微笑。 それを感じて、かれは、ああ、と思いました。ぎこちなく浮かんだ笑みが泣き笑いのようだということにも、まるで小さな子供のように見えるということも、彼は知りませんでした。 知って、それでも受け止めるのは彼女だけ。
「わたくしは殿の母上様に御目文字かないませんでした。父上様も同じです。ですから今、わたくしに出来ることは、かつてのお二人のお話を伺うことくらいなのです」 不器用ではあったけれど、静かな愛情に満ちた夫婦でした。ただ少し生真面目が過ぎて、ただ少し心優しすぎて、ただ少し東の闇に近過ぎただけだったのです。 「殿の母上様は殿を愛されました。そしてそれとはまた異なる愛を持って、かの大海を愛されたと」 蒼海に臨むその都が翻すは鳥、空よりなお濃き紺碧に舞う白鳥の都の姫君。彼の母は、そのような人でした。ですから美しく荘厳ではあるけれど、冷たい石で出来た白き王城は、母にとって非常に寂寞とした気持ちを抱かせるものだったのでしょう。 「ゆえにわたくしは、海を見とうございます。かつてわたくしの殿を愛してくださった、また殿が愛された方が、それほどまでに愛された海というものを、わたくしも知りたいのでございます」 海を愛し、海を求め、海に焦がれて亡くなったひと―― 「そして殿を愛したその方のことを、少しでも知りたいと願うのです」 幼子を残し去らなければならなかった若い母親。けれども彼女の遺したそのおもいを確かに引き継ぎ、長く苦しみ続けた執政家の次男をありったけのおもいを込めて愛する存在が現れたということ。 知りたいのです。そして伝えたいのです。大洋よりなお遥けき彼方におわすであろう御方に。
ファラミアは、妻から聞こえてくる裏表のない声と、自身の声がないまぜになるのを感じました。それは何故だか、彼になにやら泣きたくなるような気持ちを喚起させるものでした。権謀術数に冥い憎悪、そんなものなど欠片もない、ただ真っ直ぐ透明に貫いてくるエオウィンの声。それはまるで彼女が手ずからファラミアにそそぐ、雪解けにさざめく光のせせらぎのようでした。 彼は一瞬、ふ、と。額を妻の細い肩に押し付けるようにして、うつむきました。すると彼女は言葉を発することもなく、さらりと滑る長い袖の音だけを囁かせて、ファラミアの黒髪に指を添えました。まるで幼子を守ろうとする、母のような微笑がそこにはありました。 とくり、とくりという心音に心安らかにさせ。ゆっくりと上げられた彼の顔には、見紛いようのない微笑が刷かれていました。何かとてつもない壁を一つ、飲み込んだように深遠なものでした。痛みと悲しみだけでなく、喜びも共にいだいた彼は、最初のように穏やかに問いました。 「成る程。だからあなたは、ドル・アムロスへ赴きたいと?」 「はい、殿」 「海を見るために」 「殿のお時間が取れましたら」 「おかしいですね、エオウィン。あなたも私も、常に海を目にしているのに」 「え?」 今度はエオウィンが目をぱちくりとする番でした。思いがけない返答に、ざっと色んなことがらへ考えを巡らせます。このイシリアンの森の只中で、いかにして遠い海を目にすることが出来ようかと。館内の絵画にも、そのような構図や主題のものはありませんでしたし、海に所縁のある物に心当たりもありませんでした。 一体どういう意味なのかしらと、頭に疑問符を載せそうになったとき、彼女は気付きました。彼女の殿が、悪戯っ子のようなしたり顔で、くすくすと微笑を零していることに。 「我が奥方」 仰々しい言葉はすっかりみせかけ。微細な笑みの欠片は次から次へと零れてきます。彼は、妻の頬へ流れてくる見事な金髪をゆっくりかき上げてやりながら、そっと白皙の肌に触れました。そしてこの世のひみつを解き明かしたかのごとき口調で、彼女に、喜びの熱を帯びた溜め息のように囁きました。 「あなたのその瞳こそが、海そのものであるというのに!」
薄い色味。淡い彩。 しかし彼女の瞳が宿すのは、ほのかに輝く水縹。 紺青に水をそそいだかのようなそれは、海という言葉に付随する、彼の苦く痛い記憶を、色と共に薄めて甘くしみこませてゆくようでした。
「いつもあなたは私に、言葉の持つ新たな意味を教えてくれるのだね」 そう言い、妻をすっぽりと腕の中に包み込んでしまうと、彼を見上げてくる海の瞳がまた側に見えました。もう驚きに縁取られてはいない、親しげなおかしみに煌く、楽しい蒼がそこにはありました。 かなしみの記憶を振り払い、捨て去るのではなく。またそれに囚われるのでもなく。歩み続ける日々の中、新たな意味を誰かと見つけ出してゆけば良いのだと。 彼は余りにも多くのものを失い、余りにも悲哀と親しくなりすぎました。けれど今、彼の前には、ありとあらゆる冷たい記憶を見る間にぬくく染め上げて、温めてくれる妻がいました。彼女がそんなことを出来るのは、彼女もまた多くのものを失ったからですが、それでもエオウィンは揺るぎない親愛の温もりを失うことはなかったからです。だからこそ二人は寄り添いあうことが出来るのでした。 凍えるものにはあまいぬくもり。そっとあげるものでしょう?夜の帳の裾を引いて。
暫し後。果てなく続く砂と海、それらの織り成す目にも鮮やかな蒼白の景色。 そこでは歓声を上げて波と戯れ駆けてゆく、二人の幸福に満ちた男女の姿が見られたそうな。
2005年02月15日(火) |
『シークレットテイル』 |
久し振りに乗り物酔いをしました。いや、あれは果たして乗り物酔い…? バスも電車も飛行機も新幹線もブランコも人も酔いますが船は平気という謎。
こんばんわ、はじめて知恩寺の手作り市行ってきました。もえぎです。 いままでタイミングが掴めず行けなかったのですが。念願叶いました。 長らくの願いであったため、叶ったぶん、とても楽しかったです! 東寺の弘法さんの市とはまた雰囲気が違っていて。 でも。とても素敵です。ええ、とびきりに素敵だったのですよ。 誰も彼もが何かを作ろうとしている生き生きとした呼気に満たされていました。 作ることを楽しみ、作ることをよろこび、作ることを分かちあっていて。 作るものも様々。紅茶、コーヒー、お菓子にパンは当たり前。 おつけもの、においぶくろ、パッチワーク、伝統工芸、編み物織物。 かばん、ぞうり、ブックカバー、キモノ、キムチ、マグネット。 スパイス、カレー、お豆のスープ、音楽、ことば、マッサージ。それに絵。 それこそなにもかも形あるものもないものも全て。 にこにこしながらその手がうみだすもの。
わたしにもそれはできない?
お菓子屋さんのおねえさんはハートの描かれた角砂糖をおまけしてくれた。 アイリッシュ・レースを編むおねえさんはアイルランド話で盛り上がってくれた。 雑貨を縫うおねえさんはブックカバーを内緒でべんきょうしてくれた。 様々な言葉を紡ぐおねえさんは言葉の楽しさを幸福そうに語ってくれた。 きょうはすてきな戦利品が形あるものないものたくさん。 なんてここちよいのかと思った。
だのにどうして帰りしにああも気分が悪くなってしまったのか。 よろよろしながら倒れこむようにバスから降りて、よく部屋まで帰れたもの。 胃の中身を戻したりしないで本当に良かった。 耳朶が少し腫れていたように思いましたが、じんましんでありませんように。 少し眠って目覚めて夕方頃、多少ましになりました。 しとしと鼓膜を打つ音に雨粒を知りました。 僅かな吐き気をおぼえながらもうすぼんやりとおもいます。 わたしはただ逃避ではないささやかな旅路にからだをぬくめることの出来るファンタージエンには遠く及ばないちいさなせかいとそこに住みあそぶこどもたちを産みたいのだろうと。
書かないでいると血が濁るように思う。 呼吸がおもたくなるような気がする。 だから毎日、何かを、重々しいノルマではなく、書こうとおもいます。 にちぇよりうんと低レベルな嘔吐感を胸に。 途方も無く怖くて痛くて悲しくて辛いことをしなくてはならない。
『シークレットテイル』(ポプ10カード四人組のうち残り二人)
何処ともしれない、森の中。またも赤い頭巾の娘さん。 けれどふわふわ巻き毛は黒髪で。何かをさがしているようで。 かぶりをめぐらすたびごとに、ふわりふわりとやわく揺れ。 ひょこりと彼女に気付いたものは、驚き顔の狼少年。
「どうしたの、あかずきんちゃん」 「まあ、狼くん」 「道にでも迷った?なら送ってくけど」 「ううん、違うの」 「じゃあ落し物?白い貝殻の小さなイヤリングとか」 「ううん、道も物も、何も失くしてはいないの」 「なら、何をそんなに探して」 「狼くんを探していたのよ」 「僕を?」 思いがけない言葉に、少し吊り目がちな瞳をぱちくりとした狼少年に、やっとさがしものを見つけた赤頭巾ちゃんは、りんごの花のように顔をほころばせた。にっこりと微笑む娘さんはまるで、赤い頭巾のスノーホワイトのようで。 「観覧車にも、レストランにも行ったでしょう」 「うん。僕の銀色自転車で」 「そしたら今度は、狼くんのお部屋を見せてもらうことになったでしょう」 「ああ。約束したね」 「だから今日は、お伺いしようと思って、たくさんお菓子をこしらえてきたのよ」 「それはもちろんチョコレート?」 「ええ。もちろんチョコレート」 「少し狭い部屋でも構わない?」 「ええ。ちっとも構わない」 「それじゃあ空でも見上げながら行こうか」
いつもの銀色自転車はないけれど、そのぶん、手を繋いで歩いてゆくことは出来る。照れ隠しなのかなんなのか、空のかなたを見やりながら、ああでも相部屋だからなあ部屋に相棒がいなけりゃいいんだけどそうでなきゃ何言ってくるかわかんないよあいつなんて憎まれ口をぶっきらぼうに叩いてみせるけれど。二人の顔が季節はずれのいちごみたいな色なのは、夕暮れの所為ではなくて。どちらもどちらもその気持ちはおたがいさま。 ひみつのせかい。ひみつのおはなし。あれもこれも、ふたりだけのひみつひみつ。 さあだからゆきましょう。ふたりのひみつでかんぺきなせかい。
2005年02月12日(土) |
冬のりんごにくちづけるように |
曲を聴く。おもいだす。たのしくていとしくてくるしくてうれしくてならない。 今宵は夜通し再プレイなんてしちゃいましょうか?
こんばんわ、そしてそのまま夜明けまで。もえぎです。 そういやわたしにとってかなしいときの特効薬はゼノプレイ。 幾らか見たいイベントがありますし、とてもとても彼と彼女に会いたい。 ソラリス潜入からディスク2にかけてのイベントとか。 いや、ディスク2が見たい。あそこのふたりが見たい。 EDなら良いのですよ。ばっちしビデオ録画(標準)してありますので。 しかも、タムズ辺りまでなら全部三倍録画でおさめております(笑) 本当ならラストまでおさめるつもりだったのですけれど。 余りに神経質に几帳面に録りすぎて疲れてしまいました。 いや、流石にユグドラ艦橋クルーの各種台詞まで録ろうとするのは無理がありました。 でも彼らの台詞ひとつひとつ大好きなのですよ。
エレハイム。エレハイム。 彼女はほんとにとびきり可愛く綺麗に素敵に才媛で元気にワガママ器用不器用優しく数多くの表情を持ちつつ母であり娘であり愛と憎しみの狭間を揺れ相反する神の欠片でありながらただひとりのふたりのかたほうで左の片翼として聖と闇を抱きたったひとりきりの彼と対となるたったひとりきりの彼女なのですよ。 またちょっと、彼女に関しては何かしたくなってきました……。 だってどうにもこうにも果てなく魅力的すぎます。 ああ。やっぱり彼女に会いたいなあ。 電源入れて、しあわせの海のような赤い未知数によろこびながら沈みましょうか。 これで明日クリアしてたらどないしましょ(笑)
2005年02月11日(金) |
プレゼントひとつ手にお誕生日おめでとう |
おめでとう。おめでとう。ありがとう。 お祝いの品にもならないかもしれない。でもわたしからの、贈り物ひとつ。
お誕生日おめでとう。 あなたがいてくれて、あなたに会えて、ほんとうにうれしい。 いてくれて。巡り合ってくれて。ありがとう。 喉も枯れよと叫ぶのではなく、ただひそやかにそうおもいます。 七度目のお誕生日、おめでとうございます。ゼノギアス。
今日は一日あなたのことだけを考えていたかった。 けれど、どうしても出かけなければならなくなってしまって。 仕方がないので、朝のうちにケーキを焼いてしまおうと思ったのですよ。 もちろんお祝いのケーキ。 お誕生日に、あまいケーキがないだなんて、お誕生日とは言えません。 レシピはこりもせずにハニー・スポンジケーキ。 準備をしているうちに、ちくりと心臓が痛んだのは忘れるようにして。 半年以上前に放たれた二つ目の叙事詩。 そのお祝いにも、わたしは同じレシピを手に取りました。 お菓子は、作っているそのときの気持ちが反映されてしまうもの。 あの日わたしが焼いたケーキは、なんの味もしませんでした。 思い出さないようにしながら準備をしていると、ふと気付きました。 小麦粉とコーンスターチが足りないということ。 いつもなら、じゃあもういいやって、三角巾をほどいてお菓子作りを投げ出すはず。 今朝、わたしはいそいそと身支度を整えると、自転車に飛び乗りました。 つくらなくてはいけないものでしたから。自然と、そうしました。 お天気はよく。陽射しはぬくく。けれどもすぐに曇るとちいさなあられをばらまいて。 ともあれわたしは。朝のうち。ケーキを焼き上げました。 おそるおそる、小さく切り取って、口にしてみました。 かなしい味がしました。
こないだ久し振りにプレイしましたよ。ふと見たい場面があったので。 セーブデータあるかなあとメモカを見てみるとばっちりあって。 十五ブロックまるまるあなたで埋め尽くしているので当然とも言えますが。 流石わたし。お気に入りイベントの前で、きちんとデータを置いている。 もちろんだいすきなだいすきなあのふたりに由来するイベントばっかり。 シーンを見て。どきどきして。懐かしくて。愛しくて。くすくすうれしく笑い声を上げました。 エレハイム、あなたはやっぱりなんて可愛いのでしょう! 『けどなあ!』『なによ!』って。 ああ。こんなに針も砂も時間を刻み続けたというのに。 わたしはまだあなたがたがだいすきです。
赤い未知数をおもうたび、わたしはこころよいよろこびに満たされます。 ありとあらゆるものを与えありとあらゆるものを奪った。 醜いものも美しいものもすべてを包み隠さずみせてくださった。 わたしはいまだに、あれほどよろこびに満ちた日々を他に知りません。 けれどこのところ。新たな叙事詩をおもうたび、わたしは奇妙な感覚に陥ります。 体中の血液が急に熱を失って、色は褪め、透明な蒼になってゆく。 赤いものの代わりに、液体になったビニールが流れるよう。 意識も、感覚も、おもいも、さめてゆく。諦めを宿した笑みのまま。 その子はもうわたしを要らないみたいですから―― そうでなければ、わたしが間違っていたみたいですから。 わたしが愛し、いとおしんできたものは、洞窟の影だったようです。 振り返りイデアに双眸を灼こうとしない愚か者なわたしが悪いのです。
でも今は。それも忘れて。ただ赤い未知数たるあなたのお誕生日をよろこびます。 今日くらいは、ずっとずっとあの素敵にしあわせで残酷なよろこびの日々をおもいます。 新しい音楽も手に入れたのですが、今日は聴きません。 いそいそと包みをやぶって早く聴こうとは、今日は思えません。 今日、わたしが耳にする音楽は、七年前の音楽だけ。 あまりのよろこびに、あの頃わたしは半年以上、それ以外の音楽を聴こうとしなかった。
言い始めればきりがない。枚挙に暇がないとはこれのこと。 いくらでも、いくらでも、おもいだすことも語ることも出来てしまいます。 わたしは多分、あの日、二度目の生を受けたのでしょうね。 因みに今は三度目の生ですけれど。 あの頃から、わたしは少しでもましな人間になれたでしょうか。 すこうしばかりは語彙も増えて、新たな知らない世界を喜べるようになりました。 七年という月日を考えた場合には、それは余りにささいでくだらないでしょうけれど。 わたしにとっては、意味のないことではないと、おもえるのです。
拙い拙いプレゼントは、それらを凝縮してみたもの。 七年でわたしはこんな風になりましたよという。 最後らへんは突貫工事で、ちょっと不安なのですが(笑) こそこそちみちみ、なおしてゆこうと思います。 いっぺんにがあーっと読めたほうが良いかと思いまして、あとがき付けてません。 あとがき大好きっ子なわたしが書かなかったのですよ!あとがき書くの大好きですのに。 ここは我慢の子でした。こんなこと言ってるから成長してないのでしょうかわたし。
ともあれ。おめでとう。 あなたを形作った方々、そしてあなたの誕生日を今も喜ぶ方々に。 少しでもお祝いの気持ちを共有出来ますように、そして感謝出来ますようにと。 捧げたおはなし。一人でも良いので、楽しんでくださいますように。 お誕生日おめでとう。いてくれてありがとう。
今、あの色即是空の樹の下にかえれたならば、 いったいどんなお喋りが出来ることでしょうね。
>二日(今日が何日だか声を大にして言ってみなさいもえぎさん) ・15時の方 せっかくお言葉をくださいましたのに、返事がこんなに遅れてしまうだなんて…。 ひとえに管理人の怠慢です。申し訳ありませんでした。 『比翼の鳥』を。あの頼りない鳥を頼りにこちらにおいでくださったのですか? ありがとうございます…あのお話は、いまだに読み返せないものの一つです。 無駄にはりきりすぎました(笑)恥ずかしくて直視が出来ずにいます。 でも、あの思い入れと勢いにはもうなかなか太刀打ちできそうにありません。
またも妙な間をあけてしまってすみません。 そして案の定無理でごめんなさい。
もはや弁解する気力すら。もえぎです。 ううう、いちいち駄目管理人全開で申し訳ありません。 何もこうもちからいっぱい駄目であろうとしなくとも。 それでもこんなんになってしまうのですからつくづく駄目ですね。 しかも何よりもひれふして謝罪せねばならないのは拍手のお話でしょう。 結局更新することが出来ず(前後編なのに!) スランプだなんて詭弁にすぎません。 気分悪いとか凹み気味だとかなんてのも詭弁です。 ですからひらに。申し訳ありませんでした……!
そんなこんなで。内心しくしくしながら、お話の続きを。 先週、途中まで引っ張っといて結局更新できなかった外套さんと姉妹のお話。 それの後編を、こちらにのっけておきます……。 うわあんこのヘタレめー。
『遠距離ひみつごっつんこ・後編』(緋外套と三姉妹)
「行かれましたよ」 「…………」 外套者がぼそり、と小さく言葉を発すると同時に、おそるおそるといった風情で動く姿執務室にありけり。総帥の執務机の影に潜んでいた、さっきからこの部屋を探訪している娘たちに、非常によく似た娘。その体を必死に縮こめて、なんとか姉妹たちの追及の目から逃れようとしていた。 最早言うまでもない。ラインの三姉妹、次女であるヴォークリンデである。 「これで暫くは、御二方もここへ訪れはなさらないでしょう」 「…………」 やや安心したように、ふわり、と身を中空に浮かべる。しかしその眼差しは依然落ち着なくきょときょと辺りを見回しているし、体も緊張して強張ったままだ。 話は簡単。以前うんと非難を浴びた、単独での主訪問。なのにヴォークリンデはまたもその行動に出てしまって。執務室で、他の二人がしたような会話をしている最中に、フロースヒルデのやってくる気配がしたものだから、ヴォークリンデは咄嗟にその場に隠れてしまい、緋外套は思わずその場に匿ってしまったのだった。 どうも彼女はそれに対して、またも後ろめたさでも感じているのか、その表情は晴れない。 「……嘘を」 「二の姫?」 「嘘を、吐いてしまわれた…貴方に、吐かせてしまいました……」 「貴女の所為ではありません」 「緋の、衣殿」 「はい」 「御伺いしてもよろしいですか?」 「何か」 「貴方はなにゆえ、私にこうも良くしてくださるの?」
真摯に訊ねてくる電子の瞳は、それでも澄んでいた。その問いは、かねてから彼女がずっと不思議に思っていたことであったから。そして、どれだけ優れた彼女の電子頭脳をもってしても、解答を得ることの出来なかった難解な問いだった。 彼女を匿う利点などない。嘘まで吐いて誤魔化すほどの事柄でもない。だのに、この緋色の外套者は、いつもの無機質な口調で、それをやらかした。もしもこれがばれた場合、他の姉妹たちから憎まれるおそれがあるやもしれないというのに。そのようなリスクを負ってまで、彼はヴォークリンデを匿った。 前もそうだった。今回のように、主の姿が部屋になく、少しうなだれてしまった彼女を、緋外套は解り難くくるんでやるように、そっと声をかけてやったのだった。そんな風に、彼は往々にしてヴォークリンデをいたわるような行動に出るのだった。それが彼女には、不思議で不思議でならなかった。 後から言葉を付け加えることもなく、ただ幼子のように一心に見つめてくる乙女の眼差しに、外套者は仮面越しであるという理由だけでなく、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「――貴女は、自らが抱いていた数多の命を救えなかったと、御思いのようですが」 よく通る朗々とした声音が意味する所に、ヴォークリンデはびくりと肢体を硬直させた。姉妹の中で彼女のみが知る、喪失と絶望の冷たさを思い出したのだった。自分で自分を抱き締めるように腕を回し、更に体を小さく緊張させてしまいそうになった時、予想外のそよ風がふわりと彼女を包み込んだ。 「貴女が護り通した僅かな命に、感謝している者もいると言うことですよ――」 顔など見えない仮面の向こうで一瞬。ふ、と何かがやわらいだように、彼女は感じた。
「それに」 まだ、彼は続ける。心なしか、その口調が柔らかなものを帯びたように思われた。ぱちくりと目を見開いているヴォークリンデが、瞬きもしない前で、言ってみる。 「私は嘘など申し上げておりません」 「けれど、フロースヒルデの問いかけに…」 「確かに三の姫は問いを放たれた。しかし三の姫は『何人』と申された」 「はい。『何人たりとも訪ってはいまいか』と」 「失礼ながら、貴女がた姉妹は、厳密に申し上げれば『一隻二隻』と呼称するのが正しいかと」 「……あ」 「ゆえに。私は嘘など申し上げてはおりません」 言外に、貴女が気に病む必要はない―と含ませながら言い切る緋外套の思いを感じ取ることが出来て。けれど何処かしらいいわけじみた、子供っぽい言い方が、なんだかとても可笑しく思えてしまって。ヴォークリンデは遂に、整った相貌へ淡い笑みをうっすらと刷いた。 その微笑に、彼は仮面の向こうの藍色の瞳を細めた。 誰にも見えないそれは、とても久し振りに彼が浮かべた笑みのようなものだった。
後に、彼女らの主が帰還しても、二人のやり取りは誰にも内緒だった。
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