2004年04月11日(日) 渋さ知らズオーケストラ クアトロ名古屋

渋谷2DAYS、そして広島、大阪と続いた渋さ知らズのクラブクアトロツアー、最終日は名古屋でした。

芳垣さん、内橋さん他、数名が登場して演奏が始まり、その曲に乗せた渡部さんのMCから始まります。内容は、このクアトロツアーの総括、とゆーか、珍事件。ライブ前の渡部さん赤褌消失事件〜赤褌買い物パニック、CS生放送で、慎重を期した筈の渡部さんのMCのあとにすかさず出た「不適切な発言をお詫びします」テロップ、広島でライブ中に寝てしまったキーボード奏者・・・などなど。私としては謎の「不適切」テロップがツボでした。
そんなMCのあいだあいだに、少しずつミュージシャンが登場してきて、音が段々と厚くなっていきます。その音と、そのたび起こる観客の歓声を聞きながら、私は幸せな気分が高まっていきました。
実はこれを書いている4/14現在、イラクで起こった日本人人質事件は未だ解決されていませんが、ちょうどこのライブのあった4/11が、拉致した側による「3日以内に自衛隊は撤退せよ。さもなくば人質を殺す」という声明のちょうど3日目に当たる日でした。このライブの日、もしも声明通りに遠いイラクの地でこの3人が殺されでもしていたら、とてもライブを楽しむ気にはなれないほど、ここ数日は緊迫した空気が日本を覆っていました。ところがこの日の朝、3人を解放するという声明が出たのです。私はその日、それ以降のニュースはライブが終わって家に帰るまで聞くことが出来なかったので、その後まだ難航しているとはライブのあった時点では知りませんでした。ただ、朝のニュースにようやく胸を撫で下ろし、そして渡部さんのMCを聞きながら、こうして笑いながらライブを楽しめる幸せを感じていたのです。

さて、1曲目は「ナーダム」でした。この曲は本当に音楽的幸せに満ちた曲だと思います。なんてゆーか、音の神様がそのまま形になったような曲、と言いますか。何度聴いても痺れるようなテーマ。そしてまた、この「ナーダム」は勿論、他の曲も、1曲ごとの構成がメリハリに富んでて非常に冴えてます。それぞれのソロをたっぷりととるので1曲が非常に長いのですが、それが何一つ冗長に感じられないのは、後ろの芳垣さんのドラムだったり内橋さんのギターだったり高岡さん鬼頭さんの低音管楽器隊だったりで、そしてそれらを操る不破さんの手腕なのですが、本当にこの怪しげなオーケストラのオーケストラたる醍醐味が存分に発揮されたライブだったと思うのです。
とにかく、この一曲目の「ナーダム」で既に私の涙腺はゆるんでしまいました。
2曲目が「Space in the place」だったでしょうか。他に新CD「渋星」から「Image」も演奏してました。「Image」はとっても気持ちよかったなぁ。
あと私が非常に感動したのが、室舘彩さんがボーカルをとった「At Last I Am Free」です。私は20年ほど前にロバート・ワイアットが歌うこの曲がものすごく大好きでした。そしてそこから約8年後ぐらいでしょうか、渋さ知らズの最初のCDが出た時にこの曲が収録されていたのに非常に驚いたのです。ただ正直言って、私は当時の渋さのバージョンでのこの曲はあまり好きではなかったのです。ロバート・ワイアットの歌う方に繊細さと、どこかいてもたってもいられないほどのしみじみとした寂寞感を感じてて、私はそれが好きだったのです。しかし、今回の渋さの演奏は胸が震えるものがあり、あんだかもうボロボロと泣けてしまったのです。でもまあ、難を言うとしたら、後半でアウトしていった彩さん、うーん、歌の力量としてはあと一つで・・・・。私は彩さんは、そのまままっすぐ歌ってるほうがいいと思うなあ。
それから、今回「大原」というタイトルが付いて、歌詞も付いていた大原裕さんの曲が非常に良かったです。最上川エミリーさんという人が歌っていました。この曲は、大原さん芳垣さん船戸博史さんの3人による「サイツ」というバンドの「タッタ」というアルバムに収録されているのを私はよく聴いてました。とっても明るい曲調なのですが、雲ひとつないぽっかりとした青空を見上げててふいに泣けてしまうような、そんな気分に近い曲なのです、私にとっては。もうこの曲のド頭を聞いた途端、ぐわぁー、やられたぁ〜って感じで、何がこんなに泣けるんだろうと思えるほど、私は泣けてしまったのです。不破さんは幻のトロンボーンを吹いています。私自身は大原裕さんを知ってはいません。たった1枚のCDで知っているだけです。それなのに、何故こんなに泣けるのか。音楽の力の凄さを痛感した1曲でした。

さて、クアトロというハコ。
例えば渋さは東京ではライブハウスで演奏することも多いのですが私はそれに行ったことはなく、今までは野外か、またはある程度広い会場でのライブに行っていました。それで、クアトロという狭くはなくても十分に広いとはいえないハコでのライブに不安を持っていました。しかしライブが始まって、これもまた非常にいいスペースだったと思いました。思い切り踊りたい人は前に行くけど、私はあまり他の観客を意識せずに楽しみたいので、一番後ろのカウンターの所にいました。人の熱狂に巻き込まれるのが私は苦手なのです。そんな風な住み分けが出来る構造がありがたかったです。そしてまた、それほど広いわけではないので、東洋組による舞踏も今までより間近に見ることが出来ました。東洋さんたちによる舞踏は本当に美しかったです。縦にと流れていくリズムを横に斜めにまたは捩れてと膨らませていくのに、東洋さんたちの体が作り上げるリズムは間違いなく一役買っているように思います。ペロさんのダンス、おしゃもじ隊の女の子、そして東洋さんの舞踏、それぞれが別のベクトルを持っていて、それによってまさに一つの形におさまらない宇宙を作っているように見えました。

とにかく今回の渋さ知らズは、私のそれほど多くない渋さ体験の中でも特筆するほどいいライブでした。


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