生まれ、ただここにあり、死ぬまで生きる。
本当の、ということを知りたいのならそれは、いつだって多分。 それぞれの心の中にしか、存在しないんだよ。
人は自分が他人に「どう読まれるか」もわからず、ただ。 そこにあり続けるしかない一冊の本。
表紙を引き裂いて重なり合うことは、誰にもできない。 どんなに愛しても。
ただ自分だけはそいつがくたばり天に行ってしまうまで。 いいや、行っても。
消えても。自分の魂が死に、消えてなくなるまで。
その本に書かれてたことを、死ぬまで。
この道行きの支えとする。
生きていけるんだよ。 孤独な日々を。
そういう本がこの世にあった。 こういう奇跡のひとくさりが。
絶望の淵から自分を救い。 この人生に価値をくれたと。
死ぬまで忘れずいられる一冊の本。
誰もが一冊の本。
消えてなくなる?
そうさ。死は唯一の開放で。
しかし死の向こうにはなんにもないから。 すぐに退屈してしまうんだよ。
どんなに狂おしい思いも全ては余興。
これ以上にもこれ以下にもならない今日の。自分の。 このひとくさりを。
このかまびすしい世界にそっと置いて行く。
日々苦しみ。 日々笑いながら唯一無二の存在となっていく。
人は一冊の本。
本当に愛され理解された者だけが。
永遠の命を手に入れる。
そのための、これは、旅。
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