こしおれ文々(吉田ぶんしょう)
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2004年12月07日(火) |
お伽話【流れ星を食べる怪物】 第五話 |
第五話
願いを叶えるはずの流れ星は 黒い怪物を懲らしめることで 消えることはなくなったが、 消えずにそのまま村へ直撃、村は荒れ果てた。
肩を落とす村人たちの前に、 白髪の老人がふたたび現れた。
村長『神様、流れ星が落ちてきて村は壊滅してしまいました。 願いを叶えてくれるはずでは!?』
老人『・・・。』
村人一同『神様ー!!』
『ふぅ〜』老人は一つ息を吐いて村人たちに向かって言った。
老人『私、一言でも自分が神だって言った?』
村人一同『??』
確かに、第一話目から読み直しても、 会話以外では一度も白髪の老人を【神様】と呼んでいなかった。
村長『いや、でもわしらの願い叶えてくれると・・・。 その風貌はまさしく神様ですじゃ』
老人『そもそも神が人間の姿をしていると思いこんでいること自体、 人間がこの世で一番偉いと勘違いしている証拠なんだよ』
老人の言葉に唖然としている村人たちに、 老人は続けて言い放った。
いいことを教えてやろう。 元来、流れ星とはお前らが考えるような 願いを叶えるといった都合の良いものじではない。
【私たち】が好きなときに この世の動植物を殺して楽しむ遊びの【道具】にしか過ぎないのだ。
ただし、流れ星を落としてもそう易々とは殺せない。 なぜなら、落ちる前に流れ星を食べてしまい、 この世の動植物を守る番人がいるからだ。
お前らの言葉で言うとこの【神様】って奴がな。
もうわかっただろう?
お前らが好き放題痛めつけたあの黒い怪物が、 この世の神様って奴さ。
まったく人間ってのはバカな生き物だ。 あっさり騙されて自分たちで神様を殺してやがる。
【この遊び】もこれで最後だな
あと二つ三つ流れ星を落とせば、 この世の動植物は全て死んでしまうだろう。
恐竜がいた頃はもっと長く続いたもんだがな。 今度はどんな動植物が繁栄するか、楽しみに待つとしよう。
老人が空に手をかかげると、 その先にある星が動き出した。
それは次第に大きな音を立て、 光の尾を空に残しながら村人たちに向かって落ちてくる。
村人たちには為すすべもなく、 誰もが死んでしまうと覚悟した瞬間、 目の前に大きな影が現れた。
2004年12月05日(日) |
お伽話【流れ星を食べる怪物】 第四話 |
第四話
怪物を懲らしめ、 意気揚々と村に帰った村長始め若い衆。
邪魔者は消え、 今日こそ流れ星に3回願い、 雨を降らし、この大飢饉から村人が救われると 信じていました。
そして太陽が沈み、夜は更けていきました。
村人たちはいつものように夜空を眺め、 流れ星が来るのを待っていました。
村人S『早く流れ星来ねーべか』
村人たちが空を眺めていると、 キラリと光る大きな星が現れました。 その星は遠くの空から 村人たちに近づくように流れ始めました。
村人T『流れ星だ☆神様の言ったとおり消えないさ!!』
村人たちは一斉に願い始めました。
『村に雨を降らして豊かな土地にしてください。』
『村に雨を降らして豊かな土地にしてください。』
『村に雨を降らして豊かな土地にしてください。』
老人の言ったとおり、 流れ星は消えることなく、 村人たちは3回願うことが出来ました。
それでもなお、流れ星は輝きながら 村人たちに近づくように流れています。 まるで村に向かって落ちてきているかのように。
(これって危なくねえんだべか?)
と、村人全てが思った瞬間、 『ズッゴゴゴー』という大きな音を立てながら、 流れ星は村に向かって落ちてきました。
村長『流れ星がわしらに向かって落ちてきたー!! みんな逃げるんじゃー!!』
村長が叫び、村人たちは一斉に逃げ始めましたが、 逃げる間もなく、流れ星は大きな音を立てて 村を直撃しました。
『ドッカーン!!』 流れ星が落ちた衝撃で、 大きな地震が起き、 たくさんの家が壊れ、 逃げ遅れた村人が生き埋めになりました。
やっとの思いで生き延びた村長始め村人たちは、 何もかもなくなってしまった村に肩を落とし、 涙を流しました。
村長『なぜじゃ わしらは神様の言うとおりにしたのに・・・。』
すると、突然空が黄金色に輝き、 一筋の光が村人たちに伸びてきました。
その光をつたって またあの白髪の老人が、村人たちのもとへ降りてきます。
村人U『神様が来れたぞ!!』
村人たちは老人の元へ駆け寄り、村長を先頭にひざまずきました。
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