こしおれ文々(吉田ぶんしょう)

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2003年12月15日(月) (未決定)特別編③ ジャムおじさんとメロンパンナちゃん/後編

前回のあらすじ。

まじめな性格でひたむきに仕事をするメロンパンナちゃんに、
次第に全社パン(全社員)は信頼を持つようになった
しかしそれはメロンパンナちゃんの
2年前の【ある誓い】を果たすための演出だった
【ある誓い】とは何か?
2年前に何があったのか!?

ある日、ジャムおじさんは会議終了後、
メロンパンナだけを残るよう指示した。

『賞味期限が過ぎてないか検査するからそこに座りなさい。』
そして肩を揉みながら、次第に全身をくまなく触り始めた。
セクハラだった。

天然キャラのメロンパンナを、ついに我がモノにしようとしたのだ。
『うーん 少し堅くなってきたなあ
 新しい首を作らねばならんなぁ』
と、乳房に手をかけたとき、
うつむいたままのメロンパンナが口を開いた
『こうやって母のことも試食したんですか?』
ジャムおじさんの動きが止まった

手を払い、メロンパンナは立ち上がってにらんだ。
メロン『私の顔、見覚えありませんか?・・・お父さん』

ジャム『な、何を言い出すんだ』

メロン『20年前、あなたは他に女がいたにもかかわらず、
    私の母をもてあそんだ。
    そして母はあなたの子どもを身ごもった
    しかし、それをあなたに告げた途端、
    あなたは母の元を去った』

ジャム『お前は・・・あの女の・・・
    まさか、子どもはおろしたはずだ』

メロン『母はおろさなかった そして私が生まれた
    きっっとあなたが迎えにくると信じて。
    でもあなたは来なかった
    女手一つで私を育てた母は、
    体をこわし、2年前に亡くなりました。
    死ぬ間際まで【お父さんを許してあげて】と言ってました』

ジャム『あいつには慰謝料に小麦粉を・・・』
メロン『母がほしかったのは粉じゃない。
    母は最後まであなたを愛してた・・・。
    母の葬儀の日、私は復讐を誓ったの』

ジャム『私を殺す気か!?』
メロン『あなたを殺したところで、いまさら母は戻ってこない
    この店を乗っ取って、私のモノにするの
    しょぼくれた店でパンを売る時代は終わったの。
    私はこの店で多角化経営するの』

ジャム『そんなうまくいくはずないだろ』

メロン『うまくいくわよ
    まずは新宿・高島屋のデパ地下に殴り込みよ』

ジャム『簡単に店を乗っ取れると思っているのか?』

メロン『できるわよ この裏帳簿さえあればね』

ジャム『まさか・・どこからそれを?!バタ子か!?』

メロン『直接もらった訳じゃないわ 私が自分でみつけたの
    最近はバタ子さん、私のこと信頼してるから。
    在庫管理とか言ったら、すぐにパソコン貸してくれるわ
    さあ、これを警察に渡されたくなかったえら、
    私の言うこと聞くことね』

ジャム『うぅぅ・・・』

メロン『さあ、選択肢は2つよ 店を渡すか、刑務所に入るか』

謎のパン『待ちなさい』

メロン『せ・先輩!!』

頬の赤い謎のパンが、マントなびかせ会議室へ入ってきた

謎のパン『もうやめなさい 
     そんな男のために自分の手を汚す事なんてない』

メロン『だって先輩、私はあの日誓ったの
    復讐しなきゃ私は今日まで何のために生きてきたのか』

謎のパン『バカ野郎』

謎の男はメロンの頬に、一発ア○パンチをお見舞いした

謎の男『パンを売ればいいさ それしかないんだ
    お母さんだって、復讐なんか望んでない。』

メロンパンナは殴られた瞬間、複数の☆が飛んだ気がした。
目から大粒の涙があふれ、大声で泣いた。

謎の男は裏帳簿を奪い取ると、
一言つぶやき会議室から出ていった

『あずきだって、将来お汁粉の汁にされるか、
 パンの中に入れられるかわからない。
 人生なんてそんものさ。
 頼れる人なんてない。

 そう、【愛】と【勇気】だけが友達さ』
 
~完~


2003年12月14日(日) (未決定)特別編③ ジャムおじさんとメロンパンナちゃん/前編

『パンはパンでも食べられないパンはフライパン。
 それでは、売れ行きの悪いパンはなーんだ?
 お前のことだよ!!食パンマンよー!!もっと働けよ!!』

そんなジャムおじさんが、そろそろセクハラしかねないくらい
可愛がる存在、それがメロンパンナである。

18世紀、甘いモノが大好きなパン屋の主人が
店が忙しく、なかなか食事をとる時間がなかったため、
売り物のフランスパンを焼くとき、1つだけ自分用に
たっぷりの砂糖を塗ったのが発祥であり、
それを見た奥さんが
『そんな甘いパンばかり食べてたら、
 今にメロンみたいに 丸くなるわよ』
と言ったのが、その名の由来である。

メロンパンナの性格は、いたってのんびり屋さん。
ただし、『天然ボケ』と言われると突然怒りだし、
体温が上昇、彼女の頭皮の砂糖が溶け始めるため、
彼女の前では禁句であった。

お局様のバタ子さんとは仲が悪い。

メロンパンナの入社前は、唯一の女性社員として
男性パンにチヤホヤされたが、いまではメロンパンナに人気が集中、
気に入らない存在だった。
「えっと・・・ウグイスじゃないし・・・
 そうそう、メロンパンナちゃん」
といった具合に、わざと名前を憶えてないフリして
嫌味を言ったものだった。


彼女の売れ行きは上々だ。
発売以来、【菓子パン】としての売り方が功を奏し、
OLの3時のおやつとして徐々に広まりつつある。

入社したとき、ジャムおじさんは

『お前をこの店の4番松井にするつもりはない。
 お前は2番ショート川井、6番セカンド仁志だ
 野球は4番だけじゃ勝てないのだ』と熱く語ったが、

野球を知らない彼女が、もちろん理解できる訳がなく、
それでも野球の話をしなければと思った彼女は、

『サミー・ソーサのコルクバットにはびっくりでしたね』
と言ってみた。

決して仕事を覚えるスピードは早くはない。

パンだけにパサパサして牛乳がないと、
『飲み込み』は良くないが、コツコツとがんばる姿は、
社員はもちろん、客からの評判は良かった。
あのバタ子さんでさえ、彼女のひたむきな姿に
次第に心を開いていった。


・・・それが、彼女の演技とは気付かずに。

すべては計算だった。
仕事で失敗したとき、『いけなーい』と
舌を出しながら自分の頭をコツンとする仕草
(パンのため、実際は【パサ】としか音は出ない)は、

この会社になじみ、
全社パン(全社員)の信頼を得るための演出だったのだ・・・

あの日の、2年前の誓いを果たすための。


管理人:吉田むらさき

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