甘い煙
頭出し|巻戻し|早送り
軽く気になる人ができた。ほんのりね、ほんのーり。 私は最近背の大きくない人が好きなようだ。近づいた時に、顔とか体のパーツの距離が近いから好きなんじゃないかと分析している。大きい人は、遠いでしょう。見上げるのも嫌いじゃないけれど、別に好きでもない。
さて、ほんのり気になる人は、職場の人だ。 私がここで働き始めて3年を越えたけれど、いつから一緒に働いているのかは、わからない。隣の部署の人だから。 名前も歳も知らない。この目に見えるもの以外は、なんにもわからない。 普段はスーツだけど、たまに私服を着て出勤していて、うん、好感のもてるカジュアルなかんじ。 きっかけは、あいさつ。挨拶。 私は結構誰にでもあいさつする方で、職場のフロアで擦れ違った人には8割方挨拶をする。あとの2割は会釈。 大体私から声を発することが多い。 でもある日、擦れ違いざまに彼から挨拶をされて、驚いて。彼はむしろ、挨拶に積極的じゃない方だったから。悪気があってのことじゃなくて、自分に向けられていることに気づかないかんじ。それほど普段の関わりがないから気持ちはわかる。 次は、出勤時に会ったこと×2。あと、休憩時間にロッカーで一緒になって、その後給湯室前で顔を合わせたタイミング。 極めつけは今日。休憩中に書店で本を読んでいたら、彼が横を通り抜けて行った。そのあとコンビニに寄って、エスカレーターに乗って、やたらゆっくり歩いている。 このままだとエレベーターで二人きりかもなぁ、どうしようかなとドキドキしていたら、同僚のお姉さんが目の前にいたので、エレベーターは3人になった。 ・・・・・あー、なんかここに書くとすっごくなんてことないただの事象に感じられちゃうな。 彼も私を気にしてるような気がするなんて言いにくくなるなんでもなさだ。 でもいいの、勘違いでも。楽しいから。 今までと違って、私には別れる気がしない彼がいる。だからそこは揺らがないのだ。 それはちょっと残念なことでもあるけど、揺らがないのは根付いちゃった意思だからどうしようもない。 揺らぎたいけどねぇ。恋の天秤。あぁぁ。でも揺らがない。 揺らがないってわかってると、こういうのはちょっと面倒くさくもあって、その感覚が新しい。いいもんでもないけど。 しかしこれってオフィスラブ風味だね。興味深い響きだ。オフィスラブ。
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