ライフ・ストーリー

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2003年06月28日(土) オペラ座とゲーテハウス

 昨日は一日ミュンヘンへ行っていた。ドイツでも南の端にあたる街。陽射しが強くそれはそれは暑かった。

きょうはフランクフルトへ移動。ホテルも移る。

エルランゲンのホテルの朝食は充実していて捨てがたい。パンだけでも何種類もあったし、ハム、チーズは食べきれないほど種類が豊富だった。毎日グリルのメニューが変わり、フランケン地方の料理が楽しめた。飲み物もイングリッシュティーからトルココーヒーまでなんでも揃い、デザートはフルーツからケーキまである。いままで宿泊したドイツのホテルのなかでも1、2を争う充実した朝食を出すホテルだった。

昨日ミュンヘンから戻ったら、部屋のベッドがウォーターベッドに変わっていて、コンシェルジュが「あなたはこのベッドの初めてのゲスト」だと楽しそうに言った。確かにウォーターベッドの寝心地は涼しくて快適。そのベッドにきょうは彼が寝るそうだ。いい夜を。

エルランゲンは、初めて駅に降りたときに田舎なのだろうと勝手に思い込んでいたが、エルランゲン市街は隣の駅に当たるらしい。バンベルクへ行くときに通った。けっこう大きな街だった。

そのエルランゲンを離れてフランクフルトへ。
きょうのフランクフルトは日本の気候のように蒸し暑い。市街のホテルにチェックインする。部屋は5階にあり、エルランゲンのホテルほどではないが、けっこう広くてバスタブもある。ただし、ここにはビデはなく、洗面台はひとつだ。部屋の目の前がホテルの中庭になっていて木立に囲まれているため、ここでもまた美しい鳥の声が聞こえる。なんという鳥だろうか。よく徹る声だ。

歩いて街中へ出て、30日の夜の歌劇『椿姫』のチケットをとるためにフランクフルト・オペラ座へ向かう。運のいいことにまだいい席が残っていた。2階の前方だ。ここは新しいオペラ座。パリのオペラ座を手本に造られた華麗なルネサンス様式の旧オペラ座とは、少し離れた所に建てられた現代的な造りのオペラ座だ。旧オペラ座では現在オペラは開演されていない。

きょうはこの街のカーニバルらしい。トラム(路面電車)は一部の区間しか運行しておらず、歩行者のために空けられた道は人であふれている。賑やかな街を散策する。土曜日は店や博物館が早く閉まってしまうので、Domや黄色いゲーテハウスは外から眺めるだけになった。ここはゲーテが『詩と真実』に書いた家。今は入れない屋根裏や地下室は、彼が子供のころにいろいろな儀式を行った場所だ。ちょっと覗いて、当時のゲーテの姿をそこに重ねてみたかった。

歩きまわってお腹が空いたので、いまやドイツ名物になったケバブを買って食べる。肉と野菜のボリュームがすごくて、すぐにお腹がいっぱいになった。

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2003年06月26日(木) バンベルクの騎士と天使の足

 ヨーロッパの6月は1年のなかでいちばんいい季節。

梅雨はなく、いろんな花々が咲き、赤や青のベリーが実をつけ、各地でカーニバルが行われるさわやかな季節。

本来ならそうなのだろうけれど、今年のドイツは違っているらしい。到着した日に連絡を入れて、きょう会うことになったバンベルクに住む友人のシュトラウス夫人はそう言っていた。

今年は異常気象で5月から気温が上がり、もう6週間も雨が降らないカラカラ天気がつづいているのだそう。おかげで夫人宅のさくらんぼの樹は、夫妻がクロアチアにバカンスに出かけている間に、果実は赤をとおり越してまっ黒になってしまった。「去年はパーフェクトだったのに…」と残念そうだ。

広くて手入れの行きとどいたシュトラウス家のガーデンのさくらんぼの樹の下に長椅子をおいて、わたしは昼寝をさせてもらった。そのあと緑茶と夕食をご馳走になる。お礼にお土産に持ってきていた簡易ゆかたと巾着、それに扇子を渡した。

朝、エルランゲンからバンベルク中央駅まで汽車で移動して、シュトラウス夫妻宅を訪問する前に、懐かしいバンベルクの街を歩いてみた。2年前にも歩いた街。広場に立つ市、土産物のお店、ガラスの工芸店、宝石店、それにレーグニッツ川に架かる橋の上に建てられ、壁面に美しいフレスコ画が描かれている旧市庁舎の中を通り抜ける。ここはわたしのお気に入りの場所。何が楽しいかと言えば、フレスコ画から彫刻として立体的に川に飛び出している「天使の足」がなんとも愛嬌があって最高にかわいらしい。18世紀ロココ調の芸術。

大聖堂(Dom)で、13世紀初めに作られた中世の理想の騎士像である「バンベルガー・ライター(バンベルクの騎士)」の像を見上げていたら、日本人の団体と遇った。モノトーン好きのヨーロッパ人に比べて、日本の人々はカラフルな服装を身に着けているので、それなりに目立つ。2年前にわたしも見学した古い宮殿とミュージアムを見学してDomまで巡って来たのだろう。今回の旅では日本人にほとんど遇っていない。それだけ海外に出ている人が少ないようだ。

バンベルクはほんとうに美しい街だ。ニュルンベルクとならんで古城街道に位置する街には、レーグニッツ川と大きな運河マイン・ドナウ・カナルが流れていて、川遊覧が楽しめる。レーグニッツ川沿いにはオレンジの高屋根、白い壁に窓木枠が美しいたくさんの採光窓を持つ独特の家屋、それぞれの窓には花、バルコニーにも色とりどりの花が揺れるロマンチックな往時の漁師たちの家が並んでいる。ここは「小さなヴェニス」と呼ばれるドイツの世界遺産。

懐かしい場所を巡りながら、Dom広場の下のガラス工芸店で馬の絵のステンドグラスを買う。前回寄ったときは鳥のステンドグラスを買ったのだった。今度はみどりの草原に立つ鹿毛の精悍な馬。75ユーロ(1万円くらい)。


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2003年06月24日(火) 遥かなるエルランゲン

 長い空の旅を終えてフランクフルトに着いたのは朝早い時間だった。

帰国便のリコンファームをしておこうと窓口に行っても、まだ開いていない状態。仕方がないので、ICに乗って200kmほど離れたニュルンベルクへ。ニュルンベルクはオペラ『ニュルンベルクのマイスタージンガー』(ワーグナー)の舞台でもあり、実際にガラスや木工、皮革などの伝統工芸職人達が住むマイスター(職人)広場がある古い街。そこからローカル線に乗り換えて、きょう宿泊するホテルがあるエルランゲンという小さな街まで向かう。

実はエルランゲンは目的地ではなかった。目的地はそこからまた40kmほど北へ上がったバンベルクというマイン川が流れる美しい街なのだけれど、ちょうどカーニバル中でバンベルクのホテルはどこも満室でとれなかったのだ。一番近いホテルがある街がエルランゲンだった。

駅に降り立つと、なんとも淋しい1階建の古い駅舎の無人駅。
ドイツには何度か来ているけれど、こんなに淋しい駅で降りたのは初めての経験。周りにはこじんまりしたアパルトマンが数棟建っているだけで人影もない。鬱蒼とした緑の樹木が天に向かってのび、その樹のなかで鳥たちが夏を謳歌している。ほんとうにこんなところにホテルがあるのだろうか?

同じ駅で降りた数人は駅近くの坂道を登って消えていく。心細くなってネットからプリントしたホテルまでの地図を広げて見るが方角が分からない。自転車で通りかかった大学生らしいブロンドの女の子に道を尋ねて、やっと方角が理解できた。

先ほど同じ駅で降りた人達が登っていた、なだらかな坂道を登る。そして小さな橋を渡った。あの少女の言うとおりに。民家はあまり見えない。ドイツ車の大きなディーラーと工場が隣接されている建物がいくつかあり、ビールを飲ませてくれるオープン・バーが1軒あった。空は快晴。降り注ぐ夏の陽光の下、重い荷物を引いて石畳の歩道を10分ほど歩くとホテルが見つかった。

チェックインして部屋へ入る。三つ星にしては広くていい部屋だ。バスルームも広く、大きな白いバスタブ、それに洗面台が2つあった。部屋には上方を半分開けた大きな白い窓。レースのカーテンが揺れて、そこから涼しい風が入ってくる。ここでも鳥の声が聞こえている。

それにしても暑い。まずはシャワーを浴びたい。

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夏音 |MAILMy追加