あの日。
一年に一度、来る日。
昼までは普通の日だったような気がする。
ただ、いつもあるはずの夜の電話が無く、代わりに彼女の母親から電話があった。
昨日まで。
昨日まで「直ぐに帰るから」と言っていたはずなのに。
ガラス越しに見つめるしかない状況。
暫くして、消毒をして白衣を着せられ、傍に行くようにと主治医は言った。
「ねぇ・・・もう少し、一緒に居たかったな・・・」
触れられる距離に居るのに、その距離は永遠になった。
あの日。
あれからもう10年は経つ。
俺は10歳は歳を取った。
俺は、彼女の最期の願いを叶えることは出来ないで居る。
きっと、ずっと、出来ないで居る。
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