土手っ腹に穴の空いた女の見舞いに行く。
見舞ってどうなるもんでもないないだろうが・・・
(コツ、コツ・・・)
「一応、ノックしてやったぞ」
中に入る。
もちろん、主から返事を望むべくもなく。
お出迎えは、翔架。
わしには牙を剥けない。
だってわしは幽霊だからなぁ・・・
「なんだよ・・・寝てるのかよ・・・。
せっかくお前の好きな花やらなんやらを持ってきたってのに・・・。
あ、どうだったんだ?
ラヴラヴ生活ってのは。」
『うーるーさーいー(´¬`)』と言われるのを想像しながら。
返事を期待しないで話し続ける。
「お前に頼まれた肖像画、もう少しかかるそうだ。
・・・見られるかわからんけど、出来たら届けてくれるそうだ。
『遺影』にならなきゃいいけどな。」
わしが黙ると、翔架の唸り声しかしない部屋。
普通ならここで引きつり笑いの一つもくれるはずだが、今日はない。
「さて、返事はないけど帰るとするか。
前に話した事があったかどうかわからんが、お前は過去に生きる女だった。
明るい未来とか、そっちに目がいったらダメだったんだろうかね?
きっと・・・わしは過去を振り返り始めたら、消えるだろう・・・
まぁ、そんな事はその時になってみないとわからんけどな」
そう言い残して、翔架を撫でて(といっても触れはしないけど)部屋を出た。
主は、目を閉じたまま、笑ったような顔をしていた。
それはきっと、わしの目の錯覚だろうが。
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