世界お遍路 千夜一夜旅日記

2007年04月07日(土) 長い長い夜

昨夜は、久しぶりに桂温泉にいって、元気を付けようと、ニンニクととショウガたっぷりの豚肉ときのこいため。あとビール。ヤレヤレの午後10時半に、弟より「 大変だ、オジがいなくなった」
オジとは、末弟のこと。
「えーーどうして、鍵かけてなかった?」
「ばあちゃんが、うたた寝していて、忘れたらしい」
「あんた、今どこ」
「車で、探している」
「私、ビールのんだよ」
このごろ、フッとそれこそ夢遊病的わけわからずに家からでていくので、必ず鍵をかけていたのだが・・・母が忘れるとはね・・・弟は、怒っている。
怒っても致し方なし。
速攻で「110番しよう」という判断をして、私は警察へ110番通報。
で、迎えに来た弟の車で、行きそうなところへ走る。
母と甥も車で探す。
義妹は電話番。
12時前、もう一度、警察に電話。
「それらしく不審者情報があったので、今確認に向かっています」
その方向は、意外なところだが、あり得る方向。
で、わたしたちも向かう。
確かに、パトカーはうろうろしていたが、だれかを確保した気配なし。
いったん、うちに帰って深夜1時過ぎに、また警察に電話。
見失ったとのこと。
しかし、着ていた洋服のことなどと、通報があった時間などを考え合わせると、もしかしたら、末弟かもしれぬと・・もしかしたら、通い始めたS園の方に行ったのかも。
そうするると国道、信濃川にかかる橋、バイパス、1つまちがえば命の危険がありそうなところばかりだ、歩道はあるけれど。
母は「自分が一番悪い」と。
今さらいってもはじまらん。
弟と、もう一度、国道の歩道を中心に車を走らす。
30分以上かけて歩道をみながらS園まで行くも見あたらず。
弟は、明日は「播種」(稲の種まき)で、アルバイトさんをたくさん頼んでいる。
「あんたはうちに帰って休むといい」
「馬鹿いえ、いないまんまで、しごとなんかできないな、朝になったら人を動員して探さないと」
私は何しろ、缶ビール1本。アルコールは抜けたので、自宅前で降ろしてもらって、じぶんの車でうろうろ。
予想としては、明るい方へ歩くだろう、山や田んぼ方向へいかんだろう・・と言うのが私と弟の予想。
町中だとすると、家の近所にいる可能性もあるのだ。
はっと気がついて、新聞屋さんへ。
朝、いちばん早く動き出すのは、配達の人たちだ。
町中の2件の新聞販売店に行ったら、配達の仕事ですでに動き出している。
体形・人相や服装・・などを話して見かけたら、とにかく110番通報して下さい。警察も捜してくれているので、とお願いして実家へ向かう。
3時。
母がいもしないうちのまわりを懐中電灯もってうろうろ。
もう一度、警察へ電話。
情報無し。
「とにかく、知的障害と発作で自分の命を自分で守れない子なんです、なんとか探して下さい」
「こちらも、パトロールの車にはすべてつたえていますが、捜索願を出されますか。そうすると、ガソリンスタンドやコンビニへfaxなども流せるので」
「はい、はい出します、これから行きます」
「写真を持ってきて下さい」
3時半過ぎに、警察署に向かう。
4時過ぎに、実にさまざまなことをきかれて、その場で再度、情報を流してくれた。
「朝8時くらいには、薬を飲まないと、たぶんものすごい発作がくるので、それまでになんとか見つけて下さい!!お願いします」
とりあえず出た。
空が白み始めている。
「川にはまったいたら、いまごろは生きていないな、これだけさがしていないんだから・・みんな自分が悪い」と母が言い出して、車を、自分が知っている川へ向けろという。
黙っていわれたとおりにした。
その川は、しかし母の記憶の時には、ガードレールがなかったらしいが、しっかりとあって、落ちてはいなかった。
彼を町の方へ連れ出すときにいつも車で走る道筋の川がガードレールがないので、その川を車を止めてはのぞき込んでみる。
いない。
「宮路様へいってくれや」
「行かないと思うよ、あそこは階段とか急だし。真っ暗だったろうし」
「そこで最後でいい・・あとはもうしかたない」
私黙って運転。
いない。
あきらめて宮路様の道を下り始めたときに、警察から電話。
「保護しました。無事です」
涙が吹き出た「生きていた、無事だった!!」
保護された場所はうちの近所だった。
やはり、明るい方だった・・しかし、何度も通って目を凝らしていた場所なんだけど・・・・。
家にいた弟が警察へ引き取りに。
夜のあけきった5時50分にかえってきた。
体が冷えきっていて、転んだらしく手に傷がある。
あつあつの砂糖湯をのませて、手の治療。
人心地着いてから、ご飯も一膳食べさせる。
あとは少し早いが薬を飲ませて、取り合えずは布団へ。
やれやれ、生きていたよかった。
母にいった。
「高くてもいい、GPSだ。今どこコールを申し込むよ、アイツに電波発信装置をつけよう。取り返しがつかないことが起きる前に」
弟たち夫婦共々満場一致。
新聞屋さんに電話して見つかったと伝えて、協力に感謝の旨を伝えた。
ほんとうにほんとうに長い夜でした。

・・・・

うちに帰って、1時間ばかり寝て、新津美術館へ「田島征彦・征三展」を見に。
新津にすむ高校時代の友人と10年ぶりくらいに会う約束をしていたので。
途中、弟が発見された場所を通る。
あ!
いつもお世話させていただいているお稲荷さんのそばじゃないの。
もしかして、お稲荷さんがここにひきとどめて下さったかしら?
お礼のお参りをしてえきへ。
絵を楽しみ、映画を見て、友人とのおしゃべりもさんざんして先ほど帰還。
何だか疲れ切ったけど・・・彼女との約束が果たせてよかった。


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