世界お遍路 千夜一夜旅日記

2002年01月10日(木) 第16夜 ルクソールのあやしい人々 1 


 3泊4日いたルクソールでは実にいろいろなお人とふれあいました。あやしい人、いまだにナゾの人、オモロイ人・・二回にわたってそんな話を書きましょう。

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その一  王家の谷のヤク売り人

 王家の谷。セティ1世のお墓の前でのこと。
「ヘイ、ジャパニーズ? 」
 灰色のガラペーヤを着た若いエジプト人が山から降りてきました。
「そこは開いてないよ、もっときれいなところにいこう」
 よけいなお世話ジャ、と無視していると彼は近づいていて、
「日本人? 中国人? それともアメリカ人??」
「アメリカン? あなたはわたしがアメリカ人に見えるの?」
「わかってるさ、アンタは日本人だよ、エジプト人は日本人が大好きさ」
「あなたに、わたしは用がありません」
「これ要らない?」
 彼はガラペーヤの袖の下から黒いスマートなネコの神様の置物<多分アラバスターというんだ>を取り出しました。「80エジプシャンポンドでどう? この辺からでたんだ」
 ウソばっかり。「いくらだったら、買う?」「要らない」
「ジャ、これは」今度は懐から、やはり置物・・アタマに冠のようなものがある神様を取り出しました。「要らない」「ジャ、これは?」今度は左の袖の下から新聞紙に来るんだレリーフのようなものが出てきました。いったいガラペーヤのなか、どうなってんだあ?

「エジプト人は好き?」「きらいよ、ウソつくし、うるさし。ヌビアンが好き」
「ジャ、オレはヌビアンだ」とニタついた後で「ドラッグは要らない?」
ハアアーーー。いらんわい。「アンタ、ドラッグ、やるの?」わたしは訊いて見ました。
「やるよ、酒も飲む、なんでもやるさ」
「ほんと???アンタ、モスレムでしょ、お酒は禁止でしょ」
「ああ、モスレムだ、でもやるさ」
「アンタ、明日、アッラーの神様の罰があたって死ぬわ、きっと」
 男はげらげら笑いました。
「ホントに何も要らない?」「要らない、わたしの国では、ドラッグは罪になる」「エジプトもそうだよ」「バイ、バイ」
 男は「OK、バイバイ」と笑いながら離れ行きました。
 王家の谷でこんな商売?があることにもびっくりだけど、乗る人・買う人、いるんだろうなあ。ちなみにエジプトのアヘンの生産高は世界のビッグ5に入っています。
 でも、アイツ、NO!といわれることを楽しんでいたよね。なんか、天真爛漫系で日本のヤク売人<会ったことないけど>とはちがうねえ、きっと。

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 その二 貴族の墓<谷>近くの不法占拠の町の道案内人
 
 貴族の墓は団体ツアー客の来ない、まあ、穴場です。ブドウの壁画で有名なセンネフェルのお墓に行こうと駐車場で車を降りたとたん、若い男ががとびでてきました。 
「この辺に貴族の墓は2000はある、行きたいところがどこだ、案内する」
「案内は要らない」
「道がわからないと、あなたはいけない、自分は近道を知っている」
 そういいながら男はわたしの先に立って歩きます。いらんのじゃ。やがて鶏がウロウロする汚い人気のない露地にはいったとたん「道案内料、5ドル」「NO」
「自分は学校に行っているんだけれど、お金がなくて困っている」ー声の調子をかえて、肩を落として泣き落としできました。これ、エジプト人、けっこう得意みたいです。アスワンでも同じ手口でTシャツを売りつける男がいましたから。
「1ドル」「それだと、片道だ、3ドル」「NO」「OK、じゃ片道の案内をする」
 交渉成立です。そして歩くこと数分、ついちゃいました。
 1ドルを渡すと男は「ありがとう」も言わすに消えました。
 帰り道、なんと駐車場から一本道でした。アイツが飛び出てきた方へ思わずついて行ってしまったからわからなかったのです。あの飛び出すタイミングがアイツの勝負!!なんだろうネエ、と感心したことでした。
 センネフェルのお墓はきれいでした・・がねえ。ったく、やられたね。

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 その三

 露天の店のオッさん

 夕方昼寝から覚めると、町にご飯を食べに出かけます。
 3日間同じ道を行ったり着たり・・時には2回とか3回も行ったりきたり・・・。同じところに同じオッさんが店を出しています。通るたびにあちこちの店から声がかかります。
店を見ていけ、お茶飲んでけ、と。
 みんな気がいい感じで、無視もいけないと思ったので「ノウサンキュウ」とか「ご飯を食べに」「疲れているから」「土産は要らない」とか、いろいろと理由を並べてお断りしながらホテルまで帰ります。
 そんな露天の洋服売りの店でのこと。
「今日、オレの妻と子もいるから寄って話していけ、お茶を飲んで行け」
 ふっと見ると、そばの椅子にスカーフをかぶった女性がわたしを見て微笑んでいます。
おしめをつけたようなかわいい女の子もいます。
 まあ、女の人がいるんだったら今日は座ってみるか・・と彼女に笑いかけて握手をしてから勧められた椅子に腰を下ろしました。
「やっと寄ってくれたな、この三日間ずっと声をかけていたんだ」
 どうも。
 後は例の定番質問。やがて「妻」が立ち上がりました。彼女は英語が分からない、ということで何も話していませんが、終始物静かな笑みを浮かべていました。
「マッサラーム」
「マッサラーム」。彼女は子どもを連れて帰りました。
 その後です。男曰く「 あれは実はオレの妻じゃない」
 はあ??
「そばに女がいるとアンタが寄ると思ったから、友達の妻がきたから頼んでいてもらったのさ」
なんとまあ・・。
 別に言う必要もないのに話すところがまたワカランというか。
 彼、自分は学校は2年しか行っていないからあまり字は書けない、8歳の時からは働いていた、英語は仕事のなかで覚えた、といっていました。
 それから、あのハトシェプストのテロ事件の後、観光客が来なくて困ったでしょ、といったら、「いや、個人の旅人はきていたよ」と涼しい顔。
 さらには「タリバンはバカだ、大仏を壊したらお金が入らなくなる。平和になって、あの大仏が残っていたら、大勢の観光客が来る、金儲けができるのに」
 いや、逞しいご意見です、ホントにその通りではあるよねえ。
 ヒトサマの妻まで使って引き留めて何が目的さ、といいたくなりますが、彼はホントにわたしと立ち止まらせたかったみたいです。そして話がしたかったみたいです。
 変なヤツ、とういうかひまなお人というか。
 でもわたし、もし、また、ルクソールに行ったらあのオッさんの露天店に行ってみるだろうなあ。
 なかなか楽しい時間でしたからねえ。オッさん、陽気なんだよね。


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 縦原稿に直しを入れて送付。
 Mさんと明日昼ご飯を食べる約束、ハワイ・マウイに行く相談。わたしはクジラが見たいんだい。早速インターネットで安いチケットまたはツアーを探す。

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