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2008年10月16日(木)     歪んだカコ

心の奥に引っかかっていて、ずっと忘れられない人がいる。
その人との想い出は、けして楽しかったことばかりではない。辛かったことのほうが、少し多いかな。
人間って不思議だ。いい人じゃないってわかっていても、惹かれてしまうときは惹かれてしまう。彼もその一人。


「彼に対するニコの今の気持ちは、『愛』じゃなくて『情』なんじゃないの?」
と友人に言われた。そうかもしれない、と思った。私に対する彼の気持ちが最後までわからなかったから、今もこうして彼のことが知りたくて、心の奥に引っかかっているのかもしれません。


◇◇◇


彼は既婚者でした。なんとなく付き合いだして、なんとなく別れた。いや、何かを約束していたわけじゃないから、『別れた』というより、『なし崩しに終わった』という表現の方がしっくりくるかな。
私のほうが彼に近づこうとすると、彼は私から距離をとりたがる。
距離をとって付きあっている分には、彼と私の関係は表面上うまくいっている。しかしそれでは必ずどこかに歪みが生じてくる。悩みだすと止まらなくなってしまう。私はその気持ちを何度も彼にぶつけた。でも納得のいく回答を得ることは出来なかったし、口で言っていることと行動が違っていて、もう彼を信じることができなくなっていた。
それでも、時々彼は私の心の中に土足で入ってきた。
責任なんてとれないくせに。家庭を捨てる気なんて全くないくせに。
『お前はすぐ逃げる』
って彼に言われたけれど、じゃあ、私が逃げなかったら?困るのはあなたのほうじゃないの?家庭を捨てて私と結婚できる?それとも私の面倒を一生見ることができる?できないよね?
私は彼が逃げるのがわかっていたから、先回りして私の方が逃げていた。


『ニコが俺のことを好きだったなんて全然知らなかったよ』
最後に彼に言われた言葉。ちゃんと言葉にして伝えたのに・・その言葉を忘れちゃったの?それとも、私の態度がそう見えなかった?


『ニコちゃんには中途半端なことをしたと思っているよ。自分は三十過ぎていたのに、臆病で、何もできなかった』
『今思い出すと、どうしてあんなことを言ったのかなって思う』


『本当にすべてが中途半端だったよね。でも、そのときはそれがあなたの正直な気持ちだったんだと思う。既婚者のあなたと私の間にお金が介在して、セフレだったら楽しくお付き合いができたのに』
私は彼にそう言い返した。終わりはメチャクチャだった。


『今付きあっている人は誰もいないよ。ニコちゃんみたいな素敵な子、他にいないよ』
・・遅すぎる。もう嬉しくなんかないよ。
彼の言うことすべてが信用できなくて、言葉を素直に受け取ることができなくなって・・私のほかに素敵な子なんて見つかるわけないでしょ?、って、冗談を返す気にもならなかったよ。
わかったことは・・彼が中途半端な人間だってことだけ。
私のことが好きだったのか、体だけが目的だったのか、わからない。
とっくにゲームオーバーしていた。
もう彼に会うことはないけれど。こういうお付き合いは二度としたくないです。



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