おひさまの日記
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2010年09月17日(金) Life is beautiful

仕事の打ち合わせから帰ると、
どんより曇った朝とはうってかわって、
おひさまが元気な青い空になっていた。

朝、慌ただしくして庭の花や木に水をやるのを忘れていたのを、
乾いた土の色を見て思い出した。
セッションルーム兼emaの事務所の中には、
観葉植物とプチトマトが密林ジャングルを作っている。
密林ジャングルもカラカラだった。

庭に水をまき、ホースを引きずりながら事務所の中に入ると、
一夏で大きな茂みとなったくプチトマトの葉っぱがくたんとしていた。
くたんとしながら、最後の力を振り絞るように、
あちこちに赤い小さなトマトをつけていた。

わぁ…

もうトマトの季節も終わり。なる実も小さい。
けれど、元気よく真っ赤。
こんなにたくさん赤くなるまで気づかなかったんだな。
毎日水をやってるのに。
それだけプチトマトに心を配ってなかったんだと思った。
義務で水をやっていたんだなぁ…と気づいた。
ごめんね、喉乾いちゃったね、そうトマトの木に言いながら水をかけた。

せっかく実を付けてくれてるんだ、
明日のアンナの運動会のお弁当には、この子達を入れよう、そう思った。
手元に入れ物がなかったので、
誰も見てやしない、スカートを前にひっぱってくるんとめくり、
そこにトマトを摘んで入れていった。

摘んでも摘んでもまだある。
あっちにもこっちにも。
夢中になって摘んだ。
ずっしりと重くなってスカートが沈む。
いつまでも赤いプチトマトを探して摘んだ。
プランターはふたつあり、
枝は天井に届くほどに伸びて重みでしだれているので、
とにかくたくさんのトマトがあちこちにあるのだ。

トマトを摘みながら、奥底から湧き上がってくる穏やかであたたかいキモチ。
ああ、幸せだなぁ、そう思った。
なんて幸せなんだろう、って。
トマトを摘んでるだけなのにね、今この瞬間すべてがここにあると感じた。
私は完全に満たされていた。
うれしくてやさしくてあったかくて幸せで泣きそうだった。
不思議な感覚。
言葉にならない感覚。
なぜそんな気持ちになったのかなんて説明できやしない。

植物を育てるのが大の苦手の私、
でも、どうしてもプチトマトを栽培したくて、
庭師でもあるabuにおねだりして買ってもらったプチトマト。
プランターに植えるのも、肥料をあげるのも、添え木をしてやるのも、
みんなabuだった。
私は慣れない手つきで水をやるだけ。
でも、すくすぐ育つトマトが、
そして、そのトマトを家族で食べるのが本当にうれしかった。

慌ただしさに流されて、そんな大切な気持ち、すっかり忘れていた。

こんなに実をつけてくれてありがとう、そうトマトの木に言った。
明日アンナのお弁当に持っていくよ、残りはみんなで食べるよ、って。

摘んだトマトを洗って口に入れた。
夏の終わりの味がした。
甘くてちょっとすっぱい。
おいしい。
命の味。

涙が流れた。

心を向けるだけで、自分の周りにはこんなにも愛を与えてくれるものがあることに気づく。
口をきけない植物も、動物も、そして、物でさえも。

私はなんて完全なまぁるい世界に生きているんだろう。

そして、親も、家族もみんなみんな愛を与えてくれている。
形として与えられてきたものはいびつだったかもしれない。
仕打ちと呼びたいようなものだったかもしれない。
けれど、その奥に目を向ける時、そこには愛がある。
それがわかるようになったのは、
それがわからずに悲しみと寂しさと苦しみと怒りと憎しみにまみれていた時期があったから。
決して許すもんかとこぶしを握りしめていた時期があったから。
そして、そういう時期はあって然りの時間であり、
私にとって尊いものだった。

私が生まれ落ちてから今この瞬間まで、
どの体験が欠けても、どの瞬間が欠けても、今の私はいないに違いない。
今の私になるためにすべてが必要だった。

人生はなんて美しいんだろう。

きっと、トマト達は、最後の力を振り絞って実をつけながら、
心を向けた私につながって、
大切なことを言葉なく語りかけてきたに違いない。
だから涙が止まらないんだろう。

キッチンの椅子に座って、えっ、えっ、としゃくり上げながら食べるトマトは、
今まで食べたトマトの中でいちばんおいしかった。

いつもこうして神様からの素晴らしい贈り物を受け取っている。

ありがとう、ありがとう、ありがとう。
私は生きています。
人生は本当に美しい。


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