おひさまの日記
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郵便局にいた時、周りの人にけむたがられている人がいた。 まあ、みんながみんなのことを何かしら言ってるんだけど(こわっ)、 特に、みんなの反感を買っていたのは、 機嫌が悪くなると態度が変わって、周りに当たりがきつくなる人で、 おつぼねとも言われていた。
でも、なぜだろう、私は彼女が結構が好きだった。 好きと言っても、プライベートでも仲良くできるような好きじゃないけど、 同じ職場で一緒に仕事する上では、決して嫌いじゃなかった。 彼女の機嫌の悪い時の言動はイヤだったけど、なぜか憎めなかった。 それはよくないな、って感じる彼女の言動はたくさんあったけど、 それでも。
彼女があらわにしていたのは、いつも怒りだった。 仕事への怒り、会社への怒り、同僚や上司への怒り、お客様への怒り、 烈火のような激しい怒りだった。 彼女が放つ暴言はそりゃひどいもんで、悪口も強烈、聞くに耐えない。 聞いてるとどよよーんとしてくる。 彼女にひどいことをされたと怒っている人も結構いた。
そんな彼女を見て、ふと、怒っているときの自分を感じた。 理不尽な人の責め方、感情的で支離滅裂な言い分、ひどいもんだけど、 でも、彼女は本当は悲しいんじゃないだろうか、って。 怒りながら胸が張り裂けそうな痛み持ってるんじゃないだろうか、って。 それで彼女はなんだか憎めない存在だったんだろう。 困ったちゃんだけど、でも、そうよね、つらいよね、って。
そんなふうに好意的に見ている空気みたいなものが伝わったのか、 私はそんなにひどいことをされたことがなかった(少しはあったけど・笑)。 どちらかと言うと、親切にしてもらっていると感じた。 彼女の機嫌が悪い時の話しかけるコツみたいなのがわかって接していたので、 そんなに当たられることもなかったんだと思う。 むしろ、話しかけてきてくれるようになり、冗談を言い合えるようにもなった。 仕事で困っていると助けてくれた。
私がもうすぐ郵便局を去ろうという頃、 彼女が話しかけてきた。
「えみやさん、残念ね。 気持ちよく接してくれていい雰囲気作ってくれたよね。 本当は私が辞めればいいんだよ。 だって、私、必要とされてないんだもの」
「そんなことないですよ」
そう私が言うと、彼女は悲しそうな顔をして笑った。 私は泣きそうになった。 彼女を抱きしめたかった。 まさかそれはしなかったけど。 怒りをまき散らし、陰で猛烈に悲しくなる自分を感じていた。
数日後、私は郵便局を去った。
今日、ふと、彼女を思い出した。 ある瞬間、ちょっとしたことで悲しくなった時だった。
そんな時思い出した彼女。 私は今でも覚えてる、あの言葉。
「だって、私、必要とされてないんだもの」
その言葉に彼女の奥にある痛い痛いがみんな詰まっていた。 今日の私は彼女のその痛みにリンクしたのだろう。 だから、彼女を思い出したんだと思う。
ある時、暴れる彼女を見ていて思ったっけ。
「おおお〜、やってる、やってる。 うらやましいな。 あんなに感情的になれて、言いたいこと言えて。 私だったらどんなに頭に来てても、 後のこと考えたり、こわかったりして、何も言えないな」
って。 そんなふうに思ってるのが不思議でおかしかった。
私は聖人君子じゃないし、当然好き嫌いもある。 最後まで受け付けないほど嫌いなヤツもいたよ。
でも、彼女には認めて受け入れた自分を見たんだろう。 そりゃあひどいけど、でも、仕方ないね、 そうしてしまう痛みがあるね、って、受け入れられた自分の姿を。 善し悪しは別として、そうした自分がいることを。
決してほめられたもんじゃない彼女に好意を持てたことがうれしい。 彼女の奥にあるであろうものを感じられたことも。
ベランダで煙草を吸いながら、彼女が元気だといいと思った。
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